そっから展開が一気に加速した。一年生のカメラ部員たちが、先輩から
「良い被写体を撮影してこい」
と言われていたところ、偶然僕を見つけたらしい。
メンバーの中にはコスプレ撮影が趣味で入部した人もいて……こんな偶然ある?って感じだけど、僕が
「ハロウィンイケメンコンテストに出たい」
と話すと、彼らは快く引き受けてくれた。
「トオルさん、メイクが映えますね!」
「ありがとう……」
やっぱりメイクは必要なのか。でも彼らがしてくれたメイクは、普段でも使える方法だと教えてくれた。
あっという間に、どこから用意したのかもわからないけど、僕は狼男に変身していた。
頭に耳をつけ、胸元から下は狼のボディで、スーツを着用。規定でトップは隠さなきゃいけないけど、尻尾までつけてもらった。
まだお腹が引っ込んでないから、もっと鍛えなきゃダメだけど、撮影中にお腹を引っ込めると、先輩が言った。
「筋肉がついたようにアートメイクもできるよ」
気づけば、写真部の全員が総出で僕を撮影してくれ、何百枚も撮影された。そして、その写真がコンテストの作品として出されることになった。
「あ、写真はまだアヤトさんに見せてないな。『しばらく来れないから陰ながら応援してる』って言ってたけど……」
日に日に僕が変わっていく姿を、いじめっ子たちも見ていたせいか、いじめは次第に収まってきた。
エイジは相変わらず睨んでくるけど。
そして、エントリーが完了し、ホームページに僕の写真が掲載され、投票が始まった。
「ああ……なんでこんなにカッコよく撮ってくれたんだろう。別人みたいだ」
写真部のみんな、そしてアヤトさんには本当に感謝している。
だが、その時、写真部の一人が不穏な話を持ち出した。
「ちょっと嫌な話を聞いたんだけど、このコンテストの主催者にエイジの父親がいて、もう結果は出来レースだってさ……」
その指差す写真は、まさにエイジだった。
その通り、結果はエイジの写真が1位になった。写真部のみんなは悔しがっていたし、僕も少し悔しかった。でも、3位に入賞できたし、賞金は10万円。僕としては満足していた。
その賞金を、写真部のみんなと、わずかではあるけど家族、そしてアヤトさんにも分けることにした。
「エイジはカリスマ性のある人だ。……主催者の息子というのもあるかもだけど、そういうのも運の一つなんだ。僕はまだまだ。来年も頑張ります」
と、みんなに頭を下げた。すると、写真部の部室は
「なんて謙虚な人なんだ……」
「よしっ! あれこれ言う暇はない! 来年は絶対負けない!」
と盛り上がり、一緒に悔しさを乗り越えていく雰囲気ができた。
さらに、写真部の中には僕のクラスメイトも何人かいて、彼らと自然に仲良くなった。
「今まで見過ごしてごめん」
と謝られたけど、
「もう過ぎたことだから」
と僕は軽く笑って返した。なんだか、いじめられていた時の孤独感が少しずつ消えていくのを感じた。
エイジはというと、相変わらず取り巻きとつるんでいる。でも、僕や他のクラスメイトに絡むことはなくなった。不思議な変化だ。
そんなある日、僕がふと振り返ると、エイジがいつものように睨んでこっちにやって来た。彼は1位を取ったのに、なんだか嬉しそうじゃない。その表情には、何か違う感情が隠れている気がした。
「良い被写体を撮影してこい」
と言われていたところ、偶然僕を見つけたらしい。
メンバーの中にはコスプレ撮影が趣味で入部した人もいて……こんな偶然ある?って感じだけど、僕が
「ハロウィンイケメンコンテストに出たい」
と話すと、彼らは快く引き受けてくれた。
「トオルさん、メイクが映えますね!」
「ありがとう……」
やっぱりメイクは必要なのか。でも彼らがしてくれたメイクは、普段でも使える方法だと教えてくれた。
あっという間に、どこから用意したのかもわからないけど、僕は狼男に変身していた。
頭に耳をつけ、胸元から下は狼のボディで、スーツを着用。規定でトップは隠さなきゃいけないけど、尻尾までつけてもらった。
まだお腹が引っ込んでないから、もっと鍛えなきゃダメだけど、撮影中にお腹を引っ込めると、先輩が言った。
「筋肉がついたようにアートメイクもできるよ」
気づけば、写真部の全員が総出で僕を撮影してくれ、何百枚も撮影された。そして、その写真がコンテストの作品として出されることになった。
「あ、写真はまだアヤトさんに見せてないな。『しばらく来れないから陰ながら応援してる』って言ってたけど……」
日に日に僕が変わっていく姿を、いじめっ子たちも見ていたせいか、いじめは次第に収まってきた。
エイジは相変わらず睨んでくるけど。
そして、エントリーが完了し、ホームページに僕の写真が掲載され、投票が始まった。
「ああ……なんでこんなにカッコよく撮ってくれたんだろう。別人みたいだ」
写真部のみんな、そしてアヤトさんには本当に感謝している。
だが、その時、写真部の一人が不穏な話を持ち出した。
「ちょっと嫌な話を聞いたんだけど、このコンテストの主催者にエイジの父親がいて、もう結果は出来レースだってさ……」
その指差す写真は、まさにエイジだった。
その通り、結果はエイジの写真が1位になった。写真部のみんなは悔しがっていたし、僕も少し悔しかった。でも、3位に入賞できたし、賞金は10万円。僕としては満足していた。
その賞金を、写真部のみんなと、わずかではあるけど家族、そしてアヤトさんにも分けることにした。
「エイジはカリスマ性のある人だ。……主催者の息子というのもあるかもだけど、そういうのも運の一つなんだ。僕はまだまだ。来年も頑張ります」
と、みんなに頭を下げた。すると、写真部の部室は
「なんて謙虚な人なんだ……」
「よしっ! あれこれ言う暇はない! 来年は絶対負けない!」
と盛り上がり、一緒に悔しさを乗り越えていく雰囲気ができた。
さらに、写真部の中には僕のクラスメイトも何人かいて、彼らと自然に仲良くなった。
「今まで見過ごしてごめん」
と謝られたけど、
「もう過ぎたことだから」
と僕は軽く笑って返した。なんだか、いじめられていた時の孤独感が少しずつ消えていくのを感じた。
エイジはというと、相変わらず取り巻きとつるんでいる。でも、僕や他のクラスメイトに絡むことはなくなった。不思議な変化だ。
そんなある日、僕がふと振り返ると、エイジがいつものように睨んでこっちにやって来た。彼は1位を取ったのに、なんだか嬉しそうじゃない。その表情には、何か違う感情が隠れている気がした。