これで、このルートで部室への出入りを確認することができた。
私たちは人目につかないよう、裏門へと急いだ。
裏門は高校へ出入りする大人たちの出入り口となるので、常に開門してある。私たちは側から怪しまれないよう、ゆっくりと歩いて裏門を通過した。
運命の時間まで、あと二時間近くある。私たちは、これからどうするかを話し合った。
当時の私の行動は把握済みで、この時間は小学校の下校時刻だ。小学生の私は一度家にランドセルを置きに帰り、その後は里緒菜ちゃんと一緒に行動している。
「公園へ行くにしても、少し時間をずらそう。僕たちのことを不審がられたら元も子もないからな……」
「そうですね……。じゃあ、ちょっと現場を見に行きましょうか」
私たちは、数時間後に事故が起こる現場へと向かった。
まだこの時間は陽も高くて交通量も少なく、見通しのいい交差点だ。どうしてここで事故が起こったのか……
私は道路脇に目をやった。私たちの生きる七年後の世界には、ここにお地蔵さまが建立されているけれど、まだそれがない。
この時点でまだ事故は起こっていないだなんて、なんとも不思議な気分だ。
私は、スマホを取り出すと、その場所を撮影した。
七年後も、この景色と同じでありますように……
先輩は、そんな私のことをじっと見つめている。
スマホをポケットにしまおうと、足元へと視線を向けた。いつの間にか足元に、パワーストーンのストラップが転がっていた。きっとスマホを取り出した時、一緒に転げ落ちたのだろう。
「香織ちゃん、ストラップ落としてる。ここでは、僕たちは『存在してはいけない人間』だから、持ち物についても同じ考えでいたほうがいい。持ち物にも気を付けて」
先輩の言葉に、私はハッとした。
そうだ。七年前のあの時、信号が青だった交差点を渡る途中、足元に転がっていた落とし物を拾おうと足を止めたんだった。そして、信号を無視して突っ込んできた車に跳ねられたのだ。その私を庇って、先輩が……
もしかして、これが、その落とし物だったとしたら……
私はストラップを拾うと、制服のジャケットにあるポケットへと入れた。この制服のジャケットには、フラップと呼ばれるポケットの蓋がついており、よっぽどのことがない限りそこから物が落ちる心配はない。
「すみません、ありがとうございます。もしかしたら、私、大変なことをしでかすところだったかも知れない……」
私の声色は、自分でもわかるくらい硬かった。
先輩は、きっと私が過去へ戻ってきて緊張していると思ったのだろう。後半の言葉には何も触れず、私の手をつなぐとこの場を離れた。
結局、行くところがなかった私たちは、当時の私が遊んでいる公園へと向かった。
公園には、小学生の私と里緒奈ちゃんの他にも、いろいろな世代の人が数名いる。
幼児連れのお母さんと見られる人は、子どもと一緒にいろいろな遊具で遊んでいるし、小学生低学年と思われる男の子たちは、公園内で鬼ごっこをして走り回っている。
小学生の私と里緒奈ちゃんは、公園内に植樹されている落ち葉を撮影していた。そういえば、あの頃の写真フォルダには、たくさんの落ち葉が撮影されていたな……
写真部に入って、カメラの機能を教わった今、当時の写真を見るとありきたりな構図の写真だったなと思う。けれど、当時の私たちは「最高傑作だ!」と自画自賛している。
今はまだ、下手に接触しないほうがいい。
私たちは、空いたベンチに腰を下ろして二人の様子を見守っていた。
私たちは人目につかないよう、裏門へと急いだ。
裏門は高校へ出入りする大人たちの出入り口となるので、常に開門してある。私たちは側から怪しまれないよう、ゆっくりと歩いて裏門を通過した。
運命の時間まで、あと二時間近くある。私たちは、これからどうするかを話し合った。
当時の私の行動は把握済みで、この時間は小学校の下校時刻だ。小学生の私は一度家にランドセルを置きに帰り、その後は里緒菜ちゃんと一緒に行動している。
「公園へ行くにしても、少し時間をずらそう。僕たちのことを不審がられたら元も子もないからな……」
「そうですね……。じゃあ、ちょっと現場を見に行きましょうか」
私たちは、数時間後に事故が起こる現場へと向かった。
まだこの時間は陽も高くて交通量も少なく、見通しのいい交差点だ。どうしてここで事故が起こったのか……
私は道路脇に目をやった。私たちの生きる七年後の世界には、ここにお地蔵さまが建立されているけれど、まだそれがない。
この時点でまだ事故は起こっていないだなんて、なんとも不思議な気分だ。
私は、スマホを取り出すと、その場所を撮影した。
七年後も、この景色と同じでありますように……
先輩は、そんな私のことをじっと見つめている。
スマホをポケットにしまおうと、足元へと視線を向けた。いつの間にか足元に、パワーストーンのストラップが転がっていた。きっとスマホを取り出した時、一緒に転げ落ちたのだろう。
「香織ちゃん、ストラップ落としてる。ここでは、僕たちは『存在してはいけない人間』だから、持ち物についても同じ考えでいたほうがいい。持ち物にも気を付けて」
先輩の言葉に、私はハッとした。
そうだ。七年前のあの時、信号が青だった交差点を渡る途中、足元に転がっていた落とし物を拾おうと足を止めたんだった。そして、信号を無視して突っ込んできた車に跳ねられたのだ。その私を庇って、先輩が……
もしかして、これが、その落とし物だったとしたら……
私はストラップを拾うと、制服のジャケットにあるポケットへと入れた。この制服のジャケットには、フラップと呼ばれるポケットの蓋がついており、よっぽどのことがない限りそこから物が落ちる心配はない。
「すみません、ありがとうございます。もしかしたら、私、大変なことをしでかすところだったかも知れない……」
私の声色は、自分でもわかるくらい硬かった。
先輩は、きっと私が過去へ戻ってきて緊張していると思ったのだろう。後半の言葉には何も触れず、私の手をつなぐとこの場を離れた。
結局、行くところがなかった私たちは、当時の私が遊んでいる公園へと向かった。
公園には、小学生の私と里緒奈ちゃんの他にも、いろいろな世代の人が数名いる。
幼児連れのお母さんと見られる人は、子どもと一緒にいろいろな遊具で遊んでいるし、小学生低学年と思われる男の子たちは、公園内で鬼ごっこをして走り回っている。
小学生の私と里緒奈ちゃんは、公園内に植樹されている落ち葉を撮影していた。そういえば、あの頃の写真フォルダには、たくさんの落ち葉が撮影されていたな……
写真部に入って、カメラの機能を教わった今、当時の写真を見るとありきたりな構図の写真だったなと思う。けれど、当時の私たちは「最高傑作だ!」と自画自賛している。
今はまだ、下手に接触しないほうがいい。
私たちは、空いたベンチに腰を下ろして二人の様子を見守っていた。