「リープする年はさっきも話したらように去年でいい? それとリープした時に僕らがたどり着くのは、この教室で間違いない?」
先輩の質問に、落合先生は頷いた。
「ああ。俺の経験上、カメラのシャッターを切った場所にリープするみたいだ。この教室、去年も空室だったから、教室から外に出なければ目撃されることはない。去年の目撃情報も、これが実証されたら消えるはずだ。だからリープしても教室の外には出るなよ? それとこれは実験だから、すぐに戻ってくること」
「りょーかい。じゃあ香織ちゃん、カメラ持って」
先輩はそう言うと私の後ろ側に回り、私に左手でカメラを持たせたかと思うと私の左手を自分の左手で包み込む。そうして私の右手をカメラの右側へと這わせ、先輩はその上から手を添えて、シャッターを押した。
一瞬めまいのような感覚に襲われたけれど、気が付けば、目の前にいたはずの落合先生の姿が見当たらない。
そして、さっきまで涼しかったはずの教室はエアコンもついておらず、蒸し風呂状態だった。
「先輩……?」
「ああ、いるよ。無事にリープできたみたいだ」
背後から聞こえる先輩の声に、私は安堵の溜め息を吐く。
よかった、これで十一月に私も一緒に過去へ行ける。
「本当に、ここって一年前の教室なのかな」
先輩の言葉に、私はぎょっとした。
「そうだと思いますよ。ついさっきまで目の前にいた落合先生がいないし、教室はエアコン点いてないから蒸し風呂状態だし」
先輩は「そう」と返事すると、教室の窓を開けようとした。ここは現在使用されていない予備の教室だ。外から施錠されているので、外に出るとしたら窓を開けて中庭に出るしかない。さっき聞いたように、勝手に教室を出たら騒ぎが起こるかもしれない。ここへ来たのは、それの検証も兼ねているのだ。
「先輩、教室から出ないようにって約束でしたよ。とりあえず、一年後の元いた世界に戻りましょう」
先輩は外の様子が気になるようだったけれど、私の言葉に渋々頷くと、先ほどと同じようにしてカメラのシャッターボタンを押した。
再びめまいのような感覚を覚えたけれど、次に気が付くと、目の前には落合先生が立っていた。私たちはエアコンの効いた教室にいる。そして、私たちの私物である通学鞄も目に付いた。
無事に、こちらの世界に戻ってこれたようだ。
「お、思ったよりも早く戻ってきたな、無事で何より。それよりも、人に見られてないだろうな?」
落合先生の言葉に、先輩が返事する。
「ああ、窓を開けて教室の外に出ようとしたら、香織ちゃんに止められた」
そう言って、先輩は私に視線を送る。
「きちんと先生の言いつけを守りましたよ。二十五日、みんなからドッペルゲンガーの記憶がなくなっているといいですね」
私の言葉に、二人とも「全くだ」と答えた。これで、一年前の過去が変わればいい。そう思っている時だった。
「俺、いつもはリープする側だったから気にしたことがなかったんだけど、唐突に姿が消えるんだな。リープするから消えるのはわかっていたことだけど、やっぱりびっくりするな……。リープする時は、絶対人目につかない場所を選ぶこと。いいな?」
タイムリープの先輩からの貴重なアドバイスだ。私たちは無言で頷いた。
「これで過去が変わるなら、九月二十五日も、爽真は過去へ行かないほうがいい。もし行くとしても、その制服はだめだ。七年前にその制服は存在しないんだから、違う服を着ていくこと」
先生の意見に、私はハッとした。
たしかにそうだ。この制服は、三年前から採用されたもので、七年前には存在しない。もし今月、過去へ行ったとしてこの格好だと、里緒菜ちゃんのスマホに先輩の姿が収められてしまう。
先輩の質問に、落合先生は頷いた。
「ああ。俺の経験上、カメラのシャッターを切った場所にリープするみたいだ。この教室、去年も空室だったから、教室から外に出なければ目撃されることはない。去年の目撃情報も、これが実証されたら消えるはずだ。だからリープしても教室の外には出るなよ? それとこれは実験だから、すぐに戻ってくること」
「りょーかい。じゃあ香織ちゃん、カメラ持って」
先輩はそう言うと私の後ろ側に回り、私に左手でカメラを持たせたかと思うと私の左手を自分の左手で包み込む。そうして私の右手をカメラの右側へと這わせ、先輩はその上から手を添えて、シャッターを押した。
一瞬めまいのような感覚に襲われたけれど、気が付けば、目の前にいたはずの落合先生の姿が見当たらない。
そして、さっきまで涼しかったはずの教室はエアコンもついておらず、蒸し風呂状態だった。
「先輩……?」
「ああ、いるよ。無事にリープできたみたいだ」
背後から聞こえる先輩の声に、私は安堵の溜め息を吐く。
よかった、これで十一月に私も一緒に過去へ行ける。
「本当に、ここって一年前の教室なのかな」
先輩の言葉に、私はぎょっとした。
「そうだと思いますよ。ついさっきまで目の前にいた落合先生がいないし、教室はエアコン点いてないから蒸し風呂状態だし」
先輩は「そう」と返事すると、教室の窓を開けようとした。ここは現在使用されていない予備の教室だ。外から施錠されているので、外に出るとしたら窓を開けて中庭に出るしかない。さっき聞いたように、勝手に教室を出たら騒ぎが起こるかもしれない。ここへ来たのは、それの検証も兼ねているのだ。
「先輩、教室から出ないようにって約束でしたよ。とりあえず、一年後の元いた世界に戻りましょう」
先輩は外の様子が気になるようだったけれど、私の言葉に渋々頷くと、先ほどと同じようにしてカメラのシャッターボタンを押した。
再びめまいのような感覚を覚えたけれど、次に気が付くと、目の前には落合先生が立っていた。私たちはエアコンの効いた教室にいる。そして、私たちの私物である通学鞄も目に付いた。
無事に、こちらの世界に戻ってこれたようだ。
「お、思ったよりも早く戻ってきたな、無事で何より。それよりも、人に見られてないだろうな?」
落合先生の言葉に、先輩が返事する。
「ああ、窓を開けて教室の外に出ようとしたら、香織ちゃんに止められた」
そう言って、先輩は私に視線を送る。
「きちんと先生の言いつけを守りましたよ。二十五日、みんなからドッペルゲンガーの記憶がなくなっているといいですね」
私の言葉に、二人とも「全くだ」と答えた。これで、一年前の過去が変わればいい。そう思っている時だった。
「俺、いつもはリープする側だったから気にしたことがなかったんだけど、唐突に姿が消えるんだな。リープするから消えるのはわかっていたことだけど、やっぱりびっくりするな……。リープする時は、絶対人目につかない場所を選ぶこと。いいな?」
タイムリープの先輩からの貴重なアドバイスだ。私たちは無言で頷いた。
「これで過去が変わるなら、九月二十五日も、爽真は過去へ行かないほうがいい。もし行くとしても、その制服はだめだ。七年前にその制服は存在しないんだから、違う服を着ていくこと」
先生の意見に、私はハッとした。
たしかにそうだ。この制服は、三年前から採用されたもので、七年前には存在しない。もし今月、過去へ行ったとしてこの格好だと、里緒菜ちゃんのスマホに先輩の姿が収められてしまう。