一度お菓子を口に運ぶと、手が止まらなくなる。スナック菓子は、あっという間に器の中から姿を消した。

「最近のお菓子って、以前と比べて量が少なくなったよね?」

 私たちは食欲を正当化するために、なんだかんだと理由を見つけては、次のお菓子の封を切る。

 今度はポタージュ味のスナック菓子だ。味がしっかりついているので、ジュースの減りも早い。

 ある程度小腹を満たしたところで、お互いが近況について口を開く。

 里緒奈ちゃんが進学した高校は、部活動、特に運動部の活動が盛んなところで、県大会でも実績を残す部が多い。中にはインターハイに出場する部もあり、県内からスポーツ進学で受験する人も少なくない。

 里緒奈ちゃんは一年生ながら補欠に入ったそうで、秋の新人戦では、もしかしたらレギュラーに選ばれるかもしれないとのことだった。

「で? 香織ちゃんはどうなの? 写真部に入ったんだよね。この前の花火大会で一緒だった人、もしかして彼氏?」

 里緒奈ちゃんからの質問攻めに、私は一つずつ答えた。

「うん、写真部は活動が緩いって聞いて。家から学校の距離は近いけど、進学校だから授業について行くのに必死で部活動どころではないからね」

 そこまで答えると、私は大きく息を吐いた。

 彼氏だと言ったら、根掘り葉掘り聞かれるんだろうなと覚悟して、再び口を開いた。

「……あの人は、彼氏で間違いないです」

 ボソボソと呟く私に、里緒奈ちゃんはキャーと奇声を上げる。

「だと思った! 同級生、じゃないよね。先輩?」

 里緒奈ちゃんの問いに、私は頷く。

 なんかこれ、恥ずかしいな。
 私は全身の体温が一気に上がっていくような感覚に襲われる。顔はきっと赤らんでいるだろうし、手汗もやばい。

 私は部屋に置いていたタオルで手汗を拭う。

 里緒奈ちゃんは面白がって、先輩とどこで会ったのか、付き合うきっかけは何だったかなどと質問攻めだ。私はその問いに、一つずつ答えるけれど、その都度里緒奈ちゃんがオーバーアクションを取るので調子が狂う。

「でもあの人、私、どこかで見たことがあるような気がするんだよね……」

 スナック菓子を頬張りながら、里緒奈ちゃんは自分のスマホに手を伸ばす。指に付着したスナック菓子の油分を拭き取るよう、私はボックスティッシュを差し出した。

 里緒奈ちゃんはそれを受け取ると、一枚引き抜き指先を拭き取ると、スマホのロックを解除し画面を開く。

「最近じゃなくて、ずっと昔……。あれ、いつだったかな……」

 里緒奈ちゃんはそう言うと、スマホの写真フォルダを開き、画面をスクロールさせていく。

「え、先輩の写真があるの?」

 里緒奈ちゃんの行動に、私は驚いた。

 写真フォルダの中にある写真は、私と同様に膨大な量だ。その中から先輩を探し出すのは容易ではない。

「なんか引っかかるんだよね。写真は最近じゃなくて、随分前のものなんだけど……。あ、香織ちゃん、彼氏さんの写真持ってない? 画像検索してみる」

 私は言われるがまま、写真フォルダの中から先輩と一緒に撮影した写真の一枚を、里緒奈ちゃんに送信した。