先輩もそう思ったのだろう。先輩の口からも同意見が出た。
「ねえ、さっき泰兄から見せられた写真のことだけど……。どう考えてもあれ、合成なんかではできないよな……」
「私も今、それを思ってました。療養中の叔母を見るのが辛かったって、母がよく話をしていたので、当時の写真って、多分残ってないと思うんです。あったとしても、私たち遺族は持っていないんじゃないかな。それこそお見舞いに来てくれていた当時のお友達なら、写真を撮っていた可能性も捨て切れませんが、叔母が撮影を許可するとは思えなくて……」
叔母の病気は、白血病だ。
闘病中に抗がん剤や放射線治療などを行い、亡くなる前にすでに毛髪は抜け落ちていた。
落合先生が見せてくれた写真も、叔母の頭には抜け落ちた毛髪を見せないよう、医療用の帽子が被られていた。その帽子は、遺品として今も自宅で保管されており、私にも見覚えがあるものだったのだ。
だからこそ、合成写真だとは思えなかったのだ。
こんなものが他の人の目に触れたら、それこそ大変なことになる。
過去へリープできるカメラの存在は、本来ならだれにも知られてはならないものだけど、それを敢えて私たちに教えた落合先生の真意を私たちは知りたいと思った。
「もしあれが、本当に泰兄の言う通りだったとして……、香織ちゃんは、過去に戻りたいって思う?」
先輩の問いに、私は躊躇いながらも頷いた。
「過去の歴史を変えてはいけないって言いますけど……。できることなら、七年前に戻れるなら、私の命を助けてくれた恩人を助けたいです。もし、助けられなかったとしても、その人の身元を調べたいんです。ご遺族の方に、きちんとご報告しなきゃって、ずっと思っていて……」
私はそう言いながら、左腕の傷痕を摩った。
身体の成長とともに大分目立たなくなったけれど、この傷跡は一生消えることはない。この傷を見るたびに、命の恩人のことを思い出す。
あの人のためにも、一日を大切に生きなければと思うようになったのだ。
「その人について、調べたことってある?」
「警察で、見た目の特徴と着用していた服とかは教えてもらいましたけど、身元に繋がる所持品は何も持っていなかったそうで……。それと、私が事故の時に頭をぶつけたせいか、ショックが大きかったせいかわかりませんけど、当時の記憶があやふやで……」
助けてもらった恩人についての記憶が抜け落ちているのだ。警察からの事情聴取で、事故に遭う前その人に会ったことがあるかとか質問されたけど、記憶が曖昧で私は質問に何一つ答えられなかったのだ。
「うーん……、当時、香織ちゃんと仲が良かった友達とかは? 何か覚えていることとかあるかもしれないね」
先輩の言葉に私は頷きながら、当時の友達の連絡先をスマホで検索する。
あの当時はまだ小学生だったので、今みたいに個人でスマホを持っている友達はほとんどいなかった。もし仮にいたとして、親が使っていたスマホの古い機種をもらって、それを自宅やW iーFi環境の整った場所で使っていたのだ。
SIMカードの抜かれた機種は、外ではカメラとして使って遊んでいた。当時、古いスマホのカメラで写真撮影……。
「そういえば……。七年前の記憶なのでちょっと曖昧なんですけど……、当時、友達と親のお下がりのスマホでよく写真撮っていたんです。私だけでなく、友達も、一緒に遊ぶ時は今みたいに必ずスマホを持ち歩いていて。もしかしたらその写真の中に、命の恩人が写っている可能性があるかも……?」
「香織ちゃんの命の恩人が写っているといいね。もし恩人が特定できたら、僕もその人を探すの手伝うよ」
「ありがとうございます。その時は、よろしくお願いします」
番号の入っていないお下がりのスマホは、中学生になる時に一度バッテリー交換をしたけれど、私がヘビーユーザー過ぎるのか、バッテリーの減り方は半端じゃなかった。
高校に進学が決まり、正式にスマホを契約してもらったのでそれまで使っていたスマホは使わなくなり、机の中にしまい込んだままだ。
家に帰ったら、スマホを充電して画像を確認してみよう。
でもたしか、当時写真を大量に撮影していたから、写真フォルダの中は大変なことになっている。あれを一枚ずつチェックするのは、骨が折れる作業だ。
「ねえ、さっき泰兄から見せられた写真のことだけど……。どう考えてもあれ、合成なんかではできないよな……」
「私も今、それを思ってました。療養中の叔母を見るのが辛かったって、母がよく話をしていたので、当時の写真って、多分残ってないと思うんです。あったとしても、私たち遺族は持っていないんじゃないかな。それこそお見舞いに来てくれていた当時のお友達なら、写真を撮っていた可能性も捨て切れませんが、叔母が撮影を許可するとは思えなくて……」
叔母の病気は、白血病だ。
闘病中に抗がん剤や放射線治療などを行い、亡くなる前にすでに毛髪は抜け落ちていた。
落合先生が見せてくれた写真も、叔母の頭には抜け落ちた毛髪を見せないよう、医療用の帽子が被られていた。その帽子は、遺品として今も自宅で保管されており、私にも見覚えがあるものだったのだ。
だからこそ、合成写真だとは思えなかったのだ。
こんなものが他の人の目に触れたら、それこそ大変なことになる。
過去へリープできるカメラの存在は、本来ならだれにも知られてはならないものだけど、それを敢えて私たちに教えた落合先生の真意を私たちは知りたいと思った。
「もしあれが、本当に泰兄の言う通りだったとして……、香織ちゃんは、過去に戻りたいって思う?」
先輩の問いに、私は躊躇いながらも頷いた。
「過去の歴史を変えてはいけないって言いますけど……。できることなら、七年前に戻れるなら、私の命を助けてくれた恩人を助けたいです。もし、助けられなかったとしても、その人の身元を調べたいんです。ご遺族の方に、きちんとご報告しなきゃって、ずっと思っていて……」
私はそう言いながら、左腕の傷痕を摩った。
身体の成長とともに大分目立たなくなったけれど、この傷跡は一生消えることはない。この傷を見るたびに、命の恩人のことを思い出す。
あの人のためにも、一日を大切に生きなければと思うようになったのだ。
「その人について、調べたことってある?」
「警察で、見た目の特徴と着用していた服とかは教えてもらいましたけど、身元に繋がる所持品は何も持っていなかったそうで……。それと、私が事故の時に頭をぶつけたせいか、ショックが大きかったせいかわかりませんけど、当時の記憶があやふやで……」
助けてもらった恩人についての記憶が抜け落ちているのだ。警察からの事情聴取で、事故に遭う前その人に会ったことがあるかとか質問されたけど、記憶が曖昧で私は質問に何一つ答えられなかったのだ。
「うーん……、当時、香織ちゃんと仲が良かった友達とかは? 何か覚えていることとかあるかもしれないね」
先輩の言葉に私は頷きながら、当時の友達の連絡先をスマホで検索する。
あの当時はまだ小学生だったので、今みたいに個人でスマホを持っている友達はほとんどいなかった。もし仮にいたとして、親が使っていたスマホの古い機種をもらって、それを自宅やW iーFi環境の整った場所で使っていたのだ。
SIMカードの抜かれた機種は、外ではカメラとして使って遊んでいた。当時、古いスマホのカメラで写真撮影……。
「そういえば……。七年前の記憶なのでちょっと曖昧なんですけど……、当時、友達と親のお下がりのスマホでよく写真撮っていたんです。私だけでなく、友達も、一緒に遊ぶ時は今みたいに必ずスマホを持ち歩いていて。もしかしたらその写真の中に、命の恩人が写っている可能性があるかも……?」
「香織ちゃんの命の恩人が写っているといいね。もし恩人が特定できたら、僕もその人を探すの手伝うよ」
「ありがとうございます。その時は、よろしくお願いします」
番号の入っていないお下がりのスマホは、中学生になる時に一度バッテリー交換をしたけれど、私がヘビーユーザー過ぎるのか、バッテリーの減り方は半端じゃなかった。
高校に進学が決まり、正式にスマホを契約してもらったのでそれまで使っていたスマホは使わなくなり、机の中にしまい込んだままだ。
家に帰ったら、スマホを充電して画像を確認してみよう。
でもたしか、当時写真を大量に撮影していたから、写真フォルダの中は大変なことになっている。あれを一枚ずつチェックするのは、骨が折れる作業だ。