私は先輩の補習が終わるのを図書室で待っていた。
スマホでわからないところを検索しながらふと思い出した。そういえば、来週夏祭りがあったよな……
近くを流れる河原の河川敷で、毎年花火大会が行われる。台風などの悪天候ではない限り、少々の雨でも決行されるので、みんなが楽しみにしているイベントだ。
私は日程を調べようと、スマホで検索をかける。
来週の水曜日の夜、花火大会が開催されるようだ。
花火大会、先輩と一緒に行きたいな……
花火大会の実行委員会が主催するホームページを眺めながら、そんなことをぼんやりと考えていた時だった。
「香織ちゃん、お待たせ」
背後から先輩の声が聞こえた。
私は手に持っていたスマホをうっかり落としてしまい、先輩がそれに手を伸ばし、拾ってくれた。
「はいこれ。画面、割れてなくてよかったね……。って、花火大会……?」
スマホの画面を開いていたので、その画面が先輩の目に留まったようだ。
「あ、はい。今年もそんな時期だなと思って……」
先輩は、スマホの画面を見ながら何やらぶつぶつ呟いている。
「水曜日か……、多分この日は塾も休みだったかな」
先輩はそう言うと、ポケットの中から自身のスマホを取り出して、スケジュールを確認している。
「僕、この日の夜空いてるんだけど、よかったら一緒に花火を見に行かない?」
思ってもみなかった先輩からのお誘いに、私は快諾した。
「私も先輩と行けたらいいなって思っていたから、嬉しいです」
私の返事に、先輩の頬がほんのりと赤く染まった。
小声でのやり取りだったはずが、嬉しさのあまり声のトーンが上がっていた。
隣の机に座っていた男子生徒の咳払いで、私たちは我に返り、即座にすみませんと謝ると、私は机の上の荷物を片付けた。
「香織ちゃん、場所を変えよう」
先輩もそう言って、私の荷物を持ってくれる。
逃げるように図書室を後にすると、私たちが向かったのは写真部の部室だった。
部室は鍵が閉まっているので、職員室に鍵を取りに行かなければならない。私は職員室へ行こうとすると、先輩はそれを制し、ポケットの中から何かを取り出した。
「先輩、それ……?」
そう、それは写真部の部室の鍵だった。
驚いてそれ以上の言葉が出てこない私とは逆に、先輩はイタズラが成功した子供のような無邪気な笑顔を浮かべて「入ろう」と、部室の中に誘導する。
先輩に促され部室の中に入ると、先ほどまでだれかいたのか、部屋はひんやりとしていた。
「さっき、二年のやつらから預かったんだ。ここで課題を片付けていたんだろう。あいつら全員、家で勉強するのが面倒だって言ってるし」
言われてみれば、部活で部室に訪れるたび、いつも二年の先輩たちはみんなで課題に取り組んでいる。
聞けば、二年生は部活がない日も毎日放課後部室に集まって、課題を済ませているのだという。たしかに自宅でやるより、みんなで取り組むほうが捗るし、わからないところも教えあえる。
「二年はみんなが仲良いし、団結力もある。でもって、いい写真も撮る。すごいよな」
先輩はそう言うと、空いた席に腰を下ろす。私はどこに座ろうか迷っていると、隣の席に座るよう促されたので、素直に従った。
スマホでわからないところを検索しながらふと思い出した。そういえば、来週夏祭りがあったよな……
近くを流れる河原の河川敷で、毎年花火大会が行われる。台風などの悪天候ではない限り、少々の雨でも決行されるので、みんなが楽しみにしているイベントだ。
私は日程を調べようと、スマホで検索をかける。
来週の水曜日の夜、花火大会が開催されるようだ。
花火大会、先輩と一緒に行きたいな……
花火大会の実行委員会が主催するホームページを眺めながら、そんなことをぼんやりと考えていた時だった。
「香織ちゃん、お待たせ」
背後から先輩の声が聞こえた。
私は手に持っていたスマホをうっかり落としてしまい、先輩がそれに手を伸ばし、拾ってくれた。
「はいこれ。画面、割れてなくてよかったね……。って、花火大会……?」
スマホの画面を開いていたので、その画面が先輩の目に留まったようだ。
「あ、はい。今年もそんな時期だなと思って……」
先輩は、スマホの画面を見ながら何やらぶつぶつ呟いている。
「水曜日か……、多分この日は塾も休みだったかな」
先輩はそう言うと、ポケットの中から自身のスマホを取り出して、スケジュールを確認している。
「僕、この日の夜空いてるんだけど、よかったら一緒に花火を見に行かない?」
思ってもみなかった先輩からのお誘いに、私は快諾した。
「私も先輩と行けたらいいなって思っていたから、嬉しいです」
私の返事に、先輩の頬がほんのりと赤く染まった。
小声でのやり取りだったはずが、嬉しさのあまり声のトーンが上がっていた。
隣の机に座っていた男子生徒の咳払いで、私たちは我に返り、即座にすみませんと謝ると、私は机の上の荷物を片付けた。
「香織ちゃん、場所を変えよう」
先輩もそう言って、私の荷物を持ってくれる。
逃げるように図書室を後にすると、私たちが向かったのは写真部の部室だった。
部室は鍵が閉まっているので、職員室に鍵を取りに行かなければならない。私は職員室へ行こうとすると、先輩はそれを制し、ポケットの中から何かを取り出した。
「先輩、それ……?」
そう、それは写真部の部室の鍵だった。
驚いてそれ以上の言葉が出てこない私とは逆に、先輩はイタズラが成功した子供のような無邪気な笑顔を浮かべて「入ろう」と、部室の中に誘導する。
先輩に促され部室の中に入ると、先ほどまでだれかいたのか、部屋はひんやりとしていた。
「さっき、二年のやつらから預かったんだ。ここで課題を片付けていたんだろう。あいつら全員、家で勉強するのが面倒だって言ってるし」
言われてみれば、部活で部室に訪れるたび、いつも二年の先輩たちはみんなで課題に取り組んでいる。
聞けば、二年生は部活がない日も毎日放課後部室に集まって、課題を済ませているのだという。たしかに自宅でやるより、みんなで取り組むほうが捗るし、わからないところも教えあえる。
「二年はみんなが仲良いし、団結力もある。でもって、いい写真も撮る。すごいよな」
先輩はそう言うと、空いた席に腰を下ろす。私はどこに座ろうか迷っていると、隣の席に座るよう促されたので、素直に従った。