お菓子ですっかり機嫌が良くなった部長は、部室内を見渡して口を開く。
「あれ? 他の一年生は?」
「さあ、まだ来てないみたいですよ。先輩たち以外の三年生もまだだし。一年生たちは、あの子たちとクラス一緒じゃないの?」
部長の問いに、佐々木先輩が返答する。他の三人は、私たちと違うクラスなので、行動がわからない。加えて私も真莉愛も、他のメンバーと出身中学校が違うから連絡先を交換しているわけでもなく、こうやって話題を振られても困るだけだ。
私たちは顔を見合わせて、首を横に振った。
「そっか……、まあ、今日は公式の活動日ではないから、もしかしたら他の三人がそれを昨日伝えて今日は部活がないから帰ったのかもな」
部長のその言葉に、真莉愛と私は目を丸くする。
え、何それ。私そんなこと昨日西村先輩から聞かせれていないんだけど。真莉愛もどうやら部長からそのことを聞かされていなかったようだ。
「香織ちゃんには、昨日カメラの使い方の説明が不十分だったから、活動日のことは伝えず今日もここに足を運ぶように仕向けたんだ。ごめん」
西村先輩の困ったような表情に、私は胸がキュンとする。部長も西村先輩の言葉に続いて口を開く。
「阿部さんも。昨日は人間ウオッチングで説明どころじゃなかったからな」
部長の言葉に、二年生の先輩たちが私たちのことを生温かく見守るような目線を向ける。言葉はなくとも、視線だけで充分語り尽くしている感があり、私はいたたまれなくなる。
そんな空気をスルーできる西村先輩は、きっと鋼のメンタルを持っているか、それともそんな視線に気付かない天然のどちらかだ。
吉本部長と真莉愛も、何げに私たちの昨日の行動をこのようにみんなの前で口にするくらいなのに、西村先輩は、全然気にしていないようだ。
「で、二年は今日活動日じゃないのにここに集まって何やってるんだ?」
何とも言えない空気を打ち破ったのは、西村先輩で、先輩は二年生の集まっているテーブルの上を覗き込む。
机の上には開かれたままの教科書やノートなどが置かれていた。
「え、そりゃ決まってるでしょう。課題をやってるんですよ。みんな家に帰ったらやる気起こらないんで、ここでみんなが持ち寄って、片付けて帰ろうと思って」
矢野先輩の声に、一同が頷いた。
「ふーん……。中間考査の発表以降は考査終了まで部活動禁止だから、ここへの出入りは気を付けろよ」
吉本部長の声に、二年生一同が「はーい」と返事をする。
この場が落ち着くと、おもむろに西村先輩が口を開く。
「よし、じゃあカメラの使い方を教えるよ。撮影の方法を覚えたら、スマホでも画像加工の練習ができるから、スマホも持って外に出よう」
先輩はそう言うと、カメラが保管されているロッカーの扉を開け、三番のシールが貼られたカメラを手に取った。
「部が所有しているカメラは十台。だれがどのカメラを使うか番号で管理しているんだ。僕が使うカメラを香織ちゃんが共有することになるから、これ以外のカメラは触らないようにね」
先輩の説明に私は頷いた。
「で、続いてこっちがレンズ。レンズにも種類があって、これも高額なものだから、取り扱いには気を付けて」
カメラとは別の段に、レンズが保管されている。レンズは埃が着かないよう、保管も厳重だ。
その時、レンズを保管されている棚の一番奥に、古めかしい箱が置かれていることにふと気が付いた。
「あのっ……、あれは何ですか?」
私の声に、部員全員の視線が集中した。
わたしの指差す先を見て、西村先輩の手が止まる。
部室内も、一瞬ピリッとした空気に変わった気がした。
「あれ? 他の一年生は?」
「さあ、まだ来てないみたいですよ。先輩たち以外の三年生もまだだし。一年生たちは、あの子たちとクラス一緒じゃないの?」
部長の問いに、佐々木先輩が返答する。他の三人は、私たちと違うクラスなので、行動がわからない。加えて私も真莉愛も、他のメンバーと出身中学校が違うから連絡先を交換しているわけでもなく、こうやって話題を振られても困るだけだ。
私たちは顔を見合わせて、首を横に振った。
「そっか……、まあ、今日は公式の活動日ではないから、もしかしたら他の三人がそれを昨日伝えて今日は部活がないから帰ったのかもな」
部長のその言葉に、真莉愛と私は目を丸くする。
え、何それ。私そんなこと昨日西村先輩から聞かせれていないんだけど。真莉愛もどうやら部長からそのことを聞かされていなかったようだ。
「香織ちゃんには、昨日カメラの使い方の説明が不十分だったから、活動日のことは伝えず今日もここに足を運ぶように仕向けたんだ。ごめん」
西村先輩の困ったような表情に、私は胸がキュンとする。部長も西村先輩の言葉に続いて口を開く。
「阿部さんも。昨日は人間ウオッチングで説明どころじゃなかったからな」
部長の言葉に、二年生の先輩たちが私たちのことを生温かく見守るような目線を向ける。言葉はなくとも、視線だけで充分語り尽くしている感があり、私はいたたまれなくなる。
そんな空気をスルーできる西村先輩は、きっと鋼のメンタルを持っているか、それともそんな視線に気付かない天然のどちらかだ。
吉本部長と真莉愛も、何げに私たちの昨日の行動をこのようにみんなの前で口にするくらいなのに、西村先輩は、全然気にしていないようだ。
「で、二年は今日活動日じゃないのにここに集まって何やってるんだ?」
何とも言えない空気を打ち破ったのは、西村先輩で、先輩は二年生の集まっているテーブルの上を覗き込む。
机の上には開かれたままの教科書やノートなどが置かれていた。
「え、そりゃ決まってるでしょう。課題をやってるんですよ。みんな家に帰ったらやる気起こらないんで、ここでみんなが持ち寄って、片付けて帰ろうと思って」
矢野先輩の声に、一同が頷いた。
「ふーん……。中間考査の発表以降は考査終了まで部活動禁止だから、ここへの出入りは気を付けろよ」
吉本部長の声に、二年生一同が「はーい」と返事をする。
この場が落ち着くと、おもむろに西村先輩が口を開く。
「よし、じゃあカメラの使い方を教えるよ。撮影の方法を覚えたら、スマホでも画像加工の練習ができるから、スマホも持って外に出よう」
先輩はそう言うと、カメラが保管されているロッカーの扉を開け、三番のシールが貼られたカメラを手に取った。
「部が所有しているカメラは十台。だれがどのカメラを使うか番号で管理しているんだ。僕が使うカメラを香織ちゃんが共有することになるから、これ以外のカメラは触らないようにね」
先輩の説明に私は頷いた。
「で、続いてこっちがレンズ。レンズにも種類があって、これも高額なものだから、取り扱いには気を付けて」
カメラとは別の段に、レンズが保管されている。レンズは埃が着かないよう、保管も厳重だ。
その時、レンズを保管されている棚の一番奥に、古めかしい箱が置かれていることにふと気が付いた。
「あのっ……、あれは何ですか?」
私の声に、部員全員の視線が集中した。
わたしの指差す先を見て、西村先輩の手が止まる。
部室内も、一瞬ピリッとした空気に変わった気がした。