私たち一年生と三年生は完全に放置状態だ。
「あいつらは来年の進路を模索中だから、やれることはなんでもやったほうがいい。コンテストで何らかの賞を受賞すれば、将来の選択肢も増えるしアドバンテージにもなる。今回のコンテストは団体枠でのエントリーだから、学校も有名になる。どこの高校も少子化で定員割れしてるけど、学校が有名になれば、部活動目的で入学志願者が増えるからな」
いつの間にか部室には、他の部員が勢揃いしていた。
それに気付いた部長は、一年生に向かって続けざまに口を開く。
「お、全員揃ったな。じゃあこれから俺たちが引退するまでの間、一年生と三年がペアを組んでカメラの使い方を教えるから。そして二年後、君らが三年になった時、こうやって同じように下級生とペアを組んで使い方を教えること。だから、それまでに退部するなよ?」
先輩の言葉に、一年生から笑いが湧く。それに対して真莉愛は微妙な表情を浮かべている。これは本当に三年間……と言っても、三年になれば数ヶ月の間だけだけれど、写真部に在籍しなければならなくなった。
「じゃあ、くじを作るから、それを引いてペアを決めようか」
部長の言葉に、一同が頷いた。
近くにいた三年生の先輩が、いらないプリント用紙の裏に五本の線を引き、そこへランダムで先輩たちが名前を書き込み、その名前が見えないよう折りたたむ。
そして反対側の線の先に、一年生が記名するよう促された。
そこに書き込む順番で、我々一年がジャンケンをし、私が一番最初に名前を書き込むこととなった、
その時、西村先輩が私にだけ聞こえる声で、「一番右」と囁いた。
私は言われるがまま、一番右に自分の名前を書き込むと、真莉愛や他の一年生も順番に名前を記入する。
全員の記名が終わると、部長が声を上げる。
「じゃあ、ペアの発表するぞー。まず、阿部さん。阿部さんは俺、吉本とのペアね」
その声に、真莉愛が素っ頓狂な声をあげた。
「へ? 私?」
「おー、入部届出してもらった時から思っていたけど、阿部真莉愛っていい名前だな」
部長の言葉に、真莉愛は毒牙を抜かれたように、放心している。
「真莉愛? どうしたの?」
私の声に、真莉愛が我に返る。
「ううん、何でもない」
「そう? ならいいけど……」
部長は私たちのやり取りを見て一段落ついたタイミングで再びペアの発表に戻った。
どうやら左側の線の上に記名した真莉愛から読み上げられているので、私は一番最後の発表だろう。次々と名前が読み上げられ、三年生とのペアが決まっていく。
そして、最後のペアの発表が行われる。
「最後は中嶋さん。中嶋さんは西村とのペアで。……ペアに不都合があればこの場でしか受け付けないからな」
部長が冗談めかしてそう言うけれど、お互い知らない人間同士で不都合も何もあったものではない。異議を唱える人は誰もいなかったため、これでペアが決定となった。
「よろしくね、香織ちゃん」
西村先輩がそう耳元で囁いた。
距離の近さといい、さっきの耳打ちといい、これは確信犯だ。私の顔は、瞬間湯沸かし器のように一瞬で熱くなる。それを他の人に気取られないよう、みんなに背を向けるけれど、部長がそれを見逃すはずがない。
「おいそこ、仲良くなるのはいいけど、下級生をいじりすぎるなよ」
部長の声に、私の背後へ視線が一斉に集まったのがわかったけれど、振り向く勇気はない。
そんな中、西村先輩が口を開く。
「そんなことしないよ。僕はお前と違って、女の子を大事にするから」
その言葉に、一同がどよめいた。西村先輩は、そんなみんなのことなど気にすることなく、一眼レフが収納されているロッカーへと向かうと、一台のカメラを手に取った。
「じゃあ、早速使い方を説明するよ」
西村先輩はそう言うと、私を連れて写真部の部室を後にした。
「あいつらは来年の進路を模索中だから、やれることはなんでもやったほうがいい。コンテストで何らかの賞を受賞すれば、将来の選択肢も増えるしアドバンテージにもなる。今回のコンテストは団体枠でのエントリーだから、学校も有名になる。どこの高校も少子化で定員割れしてるけど、学校が有名になれば、部活動目的で入学志願者が増えるからな」
いつの間にか部室には、他の部員が勢揃いしていた。
それに気付いた部長は、一年生に向かって続けざまに口を開く。
「お、全員揃ったな。じゃあこれから俺たちが引退するまでの間、一年生と三年がペアを組んでカメラの使い方を教えるから。そして二年後、君らが三年になった時、こうやって同じように下級生とペアを組んで使い方を教えること。だから、それまでに退部するなよ?」
先輩の言葉に、一年生から笑いが湧く。それに対して真莉愛は微妙な表情を浮かべている。これは本当に三年間……と言っても、三年になれば数ヶ月の間だけだけれど、写真部に在籍しなければならなくなった。
「じゃあ、くじを作るから、それを引いてペアを決めようか」
部長の言葉に、一同が頷いた。
近くにいた三年生の先輩が、いらないプリント用紙の裏に五本の線を引き、そこへランダムで先輩たちが名前を書き込み、その名前が見えないよう折りたたむ。
そして反対側の線の先に、一年生が記名するよう促された。
そこに書き込む順番で、我々一年がジャンケンをし、私が一番最初に名前を書き込むこととなった、
その時、西村先輩が私にだけ聞こえる声で、「一番右」と囁いた。
私は言われるがまま、一番右に自分の名前を書き込むと、真莉愛や他の一年生も順番に名前を記入する。
全員の記名が終わると、部長が声を上げる。
「じゃあ、ペアの発表するぞー。まず、阿部さん。阿部さんは俺、吉本とのペアね」
その声に、真莉愛が素っ頓狂な声をあげた。
「へ? 私?」
「おー、入部届出してもらった時から思っていたけど、阿部真莉愛っていい名前だな」
部長の言葉に、真莉愛は毒牙を抜かれたように、放心している。
「真莉愛? どうしたの?」
私の声に、真莉愛が我に返る。
「ううん、何でもない」
「そう? ならいいけど……」
部長は私たちのやり取りを見て一段落ついたタイミングで再びペアの発表に戻った。
どうやら左側の線の上に記名した真莉愛から読み上げられているので、私は一番最後の発表だろう。次々と名前が読み上げられ、三年生とのペアが決まっていく。
そして、最後のペアの発表が行われる。
「最後は中嶋さん。中嶋さんは西村とのペアで。……ペアに不都合があればこの場でしか受け付けないからな」
部長が冗談めかしてそう言うけれど、お互い知らない人間同士で不都合も何もあったものではない。異議を唱える人は誰もいなかったため、これでペアが決定となった。
「よろしくね、香織ちゃん」
西村先輩がそう耳元で囁いた。
距離の近さといい、さっきの耳打ちといい、これは確信犯だ。私の顔は、瞬間湯沸かし器のように一瞬で熱くなる。それを他の人に気取られないよう、みんなに背を向けるけれど、部長がそれを見逃すはずがない。
「おいそこ、仲良くなるのはいいけど、下級生をいじりすぎるなよ」
部長の声に、私の背後へ視線が一斉に集まったのがわかったけれど、振り向く勇気はない。
そんな中、西村先輩が口を開く。
「そんなことしないよ。僕はお前と違って、女の子を大事にするから」
その言葉に、一同がどよめいた。西村先輩は、そんなみんなのことなど気にすることなく、一眼レフが収納されているロッカーへと向かうと、一台のカメラを手に取った。
「じゃあ、早速使い方を説明するよ」
西村先輩はそう言うと、私を連れて写真部の部室を後にした。