「エミリアン王妃殿下と話せないかなあ?」
「無理だよ⋯⋯母上は伏せっていて来客応対できる状態ではないんだ」

 エミリアン王妃は国の友好のために嫁いだ先にで不遇な対応を受けていた。
 その上に見知らぬ人間に体を乗っ取られる時を過ごした。

 きっと、気が狂ったように扱われたりして特異な言動をした1年間は王室の中で閉じ込められていたのだろう。

「酷いね⋯⋯浮気も、不倫もする人の気持ちは分からないよ、誰かを傷つけてする恋なんて汚い。ルシアは汚いよ。早くこの体から抜け出したい!」

「1人ボッチにならないで。僕がいるよ。君がこの世界に永遠にいることになっても、絶対に味方でいる僕がいるから」

「私の体を好きにしようとしたり、出生を偽ろうとした癖に⋯⋯」

 急に主人公のような清廉潔癖さを見せたミカエルに毒つく。

「本当だね。僕って最低だ⋯⋯でもね、マリカ⋯⋯君が全部悪いんだよ。いつだって自分が自分でいられなくなるような感情を君に引き出させられるんだ」

 ミカエルは私にそういうと軽く口づけしてきた。
あまりに軽いもので、避けることもできなかった。

「こ、今後どういった事が問題になって来そう?」
姉と弟と過ごすと決めたミカエルからのキスに動揺して声が震えてしまった。

「まずは、スグラ王国とローラン王国の文化ば全く違うことに注意しなければならない。ローラン王国は一夫多妻制で、男尊女卑の国だ。それゆえに、王太子の不倫がバレたところで何の痛手もない。一方で結婚するまでは当然純潔である事が求められるスグラ王国で次期女王になるルシアが他の男と通じていたら、国は揺らぐ」

 私は自分が女王として国のために最善の努力をしようと思っていた。
 しかし、私の存在そのものがスグラ王国の混乱を招くと言うことだ。

「あ、あのミカエルが⋯⋯」
「僕の存在そのものが、爆弾なんだよ。サンタナ・ローランが不貞をしていたことなんて、ローラン王国では問題にもならない。でも、スグラ王国では貞節が誰より求められる王妃の不貞⋯⋯僕の出生の秘密が明らかになったら、スグラ王家は求心力を失うよ」

 私が詰んだ状態なら、代わりにミカエルが次期国王になれば良いと思っていた。
(ミカエルの存在も詰んでるのね⋯⋯)

 スグラ王国は一夫一妻制で、女性の権利が認められている国として優秀な女性の移民も多い。その上、国民の満足度も主に女性を中心に高い。

「私⋯⋯男関係が奔放だって明かされても揺らぎない仕事をするように頑張るよ。ミカエルも力を貸してくれる? 貴方の助けが必要なの」

 これから、いくら勉強しても長期に渡り国王になる為に努力してきたミカエルには敵わないだろう。

 彼には味方でいて貰って、私のことを助けて欲しい。

「もちろん、その代わり僕が君のことを好きでい続けることも許してね」
 ミカエルはそう言うと、唇を重ねてきた。

 口を無理やりこじ開けて舌をいれてたネイエスのいやらしいキスとは違う。
 本当に私の事を想ってくれているのが伝わってきて、私はその長めのキスにそっと目を閉じた。