レオ・ステラン⋯⋯帝国で一番の富豪の家に育った僕は欲しいものは全て手に入れてきた。
そして、一番欲しかった帝国一番の美しい恋人ルシアを手に入れたのは2年前の話だ。
僕と彼女はミカエルを引き摺り下ろした後は、ルシアを女王にして結婚する予定だった。
結婚さえして仕舞えば、ルシアを丸め込んで僕の実家が実権を握れると思っていた。
彼女は美人で良い体をしてるから5年くらいは楽しめるだろう。スグラ王国は女性の貞操観念には煩いが男性に対してはそれ程でもない。
彼女とスグラ王国を手中におさめながら、これからも悠々自適に酒に女に好きなように遊んで暮らそうと思っていた。
「僕のこと好きじゃなくなったってこと?」
「そうよ。私、誠実な人が好きなの。昼から酒を飲んでいるより、自分を高める為に努力する人が好きなの。高価な宝石をくれるよりも、素敵な言葉をくれる教養のある人が好きなの」
なぜだか、成績の悪いルシアから教養を語られている。
(でも、こないだの成績はトップだったっけ⋯⋯)
「待ってくれよ。僕たちの2年間はなんだったの?」
「2年間? じゃあ、この2日間で起きたことの話をするわよ。盗聴魔法のかかった指輪をくれて、私の父親と婚約者を陥れる企みをしていたわよね。これだけで、別れる理由は十分でしょ。2日でこれだけのことをする男と付き合いたい女なんていないわよ」
ルシアはカイロス国王やミカエルに特別な感情はないのだと思っていた。
盗聴されそうになった事についても、やはり怒っているようだ。
(というか僕のことを全否定してくる⋯⋯)
今まで、僕は何をやっても周りから肯定されてきた。
大金持ちの公爵家の1人息子として大切に扱われてきたし、両親も僕のことを否定した事はない。
(なんだろう、初めての感覚にゾクゾクしてきた⋯⋯)
「さようなら。レオ! お元気で」
僕になんの未練もないように去っていくルシアの後ろ姿を見つめるしかなかった。
ルシアは他の女とは比べ物にならないくらい良い女だ。
そして、他の人間と同様に僕を気持ち良くしてくれる相手だった。
ふと隣を見るとライアンが笑っている。
彼は不思議な人だ。
僕は彼に忠誠を示すように靴を舐めろと言った。
今まで、祖父のような年頃の人まで僕の靴を舐めてきた。
しかし、彼は靴を舐めずに僕を嗜めてきた。
「もし、今靴を舐めたら俺はそこまでの事をさせたあなたを恨むと思います。いつか、この屈辱を晴らそうと考えるでしょう」
あの時、跪いた後、僕を見上げながら心底不思議そうに尋ねてきたライアンの表情は忘れられない。
彼のいう通りだ。
僕は表向きは誰からも煽られていたが、本当は誰からも恨まれていた。
ライアンから指摘されたことが苦すぎて、僕は思わず彼の顔を切った。
「痛えな⋯⋯」と彼は呟いて俺に反抗的な目を向けてきた。
その表情があまりに予想外で、それでも彼の本心を示している気がして僕は彼を側に置くことに決めた。
(なんでだろう⋯⋯嘘ばかりの人間の中で信用できると思ったから?)
「何を笑ってるんだ、ライアン⋯⋯僕は振られたんだと思うか?」
「はい⋯⋯俺の知っている彼女でした⋯⋯随分ときつい性格になってましたね」
ライアンは手を口に当てて面白そうに笑っている。
その姿が自然で、僕は彼のことを手放せないと思った。
本当に僕の周りの人間は両親まで僕の機嫌を取ることばかりに気を取られて嘘ばかりだ。
それに慣れて今を楽しんでいるようなフリをしても、いつも虚しかった。
本当は馬鹿にされているのではないかと常に疑っていた。
自分が本当に側にいて欲しい人⋯⋯。
ライアンのように僕をただのレオとして見てくれる人。
そして、ルシアのように僕がいかに無価値な人間だと本当のことを言ってくれる人だ。
僕はルシアをどんなことをしても手放せないと思った。
みんなが僕の顔色を見て嘘しか言わない世界で本当のことを言ってくれる人だ。
誰が「愛している」と僕に囁いても、それが両親でも僕には信じられない。
それでも、ルシアが「愛している」と言ったら僕はそれを信じ、心は満たされるだろう。
そして、一番欲しかった帝国一番の美しい恋人ルシアを手に入れたのは2年前の話だ。
僕と彼女はミカエルを引き摺り下ろした後は、ルシアを女王にして結婚する予定だった。
結婚さえして仕舞えば、ルシアを丸め込んで僕の実家が実権を握れると思っていた。
彼女は美人で良い体をしてるから5年くらいは楽しめるだろう。スグラ王国は女性の貞操観念には煩いが男性に対してはそれ程でもない。
彼女とスグラ王国を手中におさめながら、これからも悠々自適に酒に女に好きなように遊んで暮らそうと思っていた。
「僕のこと好きじゃなくなったってこと?」
「そうよ。私、誠実な人が好きなの。昼から酒を飲んでいるより、自分を高める為に努力する人が好きなの。高価な宝石をくれるよりも、素敵な言葉をくれる教養のある人が好きなの」
なぜだか、成績の悪いルシアから教養を語られている。
(でも、こないだの成績はトップだったっけ⋯⋯)
「待ってくれよ。僕たちの2年間はなんだったの?」
「2年間? じゃあ、この2日間で起きたことの話をするわよ。盗聴魔法のかかった指輪をくれて、私の父親と婚約者を陥れる企みをしていたわよね。これだけで、別れる理由は十分でしょ。2日でこれだけのことをする男と付き合いたい女なんていないわよ」
ルシアはカイロス国王やミカエルに特別な感情はないのだと思っていた。
盗聴されそうになった事についても、やはり怒っているようだ。
(というか僕のことを全否定してくる⋯⋯)
今まで、僕は何をやっても周りから肯定されてきた。
大金持ちの公爵家の1人息子として大切に扱われてきたし、両親も僕のことを否定した事はない。
(なんだろう、初めての感覚にゾクゾクしてきた⋯⋯)
「さようなら。レオ! お元気で」
僕になんの未練もないように去っていくルシアの後ろ姿を見つめるしかなかった。
ルシアは他の女とは比べ物にならないくらい良い女だ。
そして、他の人間と同様に僕を気持ち良くしてくれる相手だった。
ふと隣を見るとライアンが笑っている。
彼は不思議な人だ。
僕は彼に忠誠を示すように靴を舐めろと言った。
今まで、祖父のような年頃の人まで僕の靴を舐めてきた。
しかし、彼は靴を舐めずに僕を嗜めてきた。
「もし、今靴を舐めたら俺はそこまでの事をさせたあなたを恨むと思います。いつか、この屈辱を晴らそうと考えるでしょう」
あの時、跪いた後、僕を見上げながら心底不思議そうに尋ねてきたライアンの表情は忘れられない。
彼のいう通りだ。
僕は表向きは誰からも煽られていたが、本当は誰からも恨まれていた。
ライアンから指摘されたことが苦すぎて、僕は思わず彼の顔を切った。
「痛えな⋯⋯」と彼は呟いて俺に反抗的な目を向けてきた。
その表情があまりに予想外で、それでも彼の本心を示している気がして僕は彼を側に置くことに決めた。
(なんでだろう⋯⋯嘘ばかりの人間の中で信用できると思ったから?)
「何を笑ってるんだ、ライアン⋯⋯僕は振られたんだと思うか?」
「はい⋯⋯俺の知っている彼女でした⋯⋯随分ときつい性格になってましたね」
ライアンは手を口に当てて面白そうに笑っている。
その姿が自然で、僕は彼のことを手放せないと思った。
本当に僕の周りの人間は両親まで僕の機嫌を取ることばかりに気を取られて嘘ばかりだ。
それに慣れて今を楽しんでいるようなフリをしても、いつも虚しかった。
本当は馬鹿にされているのではないかと常に疑っていた。
自分が本当に側にいて欲しい人⋯⋯。
ライアンのように僕をただのレオとして見てくれる人。
そして、ルシアのように僕がいかに無価値な人間だと本当のことを言ってくれる人だ。
僕はルシアをどんなことをしても手放せないと思った。
みんなが僕の顔色を見て嘘しか言わない世界で本当のことを言ってくれる人だ。
誰が「愛している」と僕に囁いても、それが両親でも僕には信じられない。
それでも、ルシアが「愛している」と言ったら僕はそれを信じ、心は満たされるだろう。