「覆面騎士のような方々で王子殿下を囲ってもらいましょう。殿下も平民のような装いをしてください、それでも高貴なオーラは消えないので王子殿下の訪問は話題になると思います」
王子が礼服で登場しては、公式行事と思われる。
かといって黒いローブを着てお忍びのような格好で街を出歩いては、気を遣われてニュースにならないかもしれない。
ルブリス王子殿下が、平民の街を自然に視察し、周囲から親しみを持ってもらうことが重要なのだ。
しかし、暗殺者など危険に遭遇する可能性も考えると護衛は必ず必要だ。
「覆面騎士とは何のことだ?」
「何と表現して良いのかわからなかったのですが、以前エドワード王子と買い物に街に行った時に、騎士服を着ないで護衛している方がいるから安全だと言っていたのを思い出したのです」
「いつ、エドワードと買い物などにいったのだ?婚約者の私とは5年の間、どこも行かず数えられる程の言葉しか交わしていないのに」
「ルブリス王子殿下との婚約の顔合わせの後、落ち込んでいる私を元気づけようとエドワード王子殿下が街に連れて行ってくれたのです」
私はあの時サイラス様と出会ったのだ。
眩しいほどに美しい彼を見て、私とは相容れない光の住人だと思った。
そんな夢の存在のような彼が今、私を好きだと言ってくれているのだ。
「今、サイラス王太子殿下のことを考えているのか?イザベラ、仕事に集中してくれないか?街に出る時は、薬指にある華美な指輪は外した方が良いぞ。贅沢な生活をしているような人間に、心を打ち解けられるとは思わないからな。エドワードは私をその頃には追い落とそうとしていたのだな。もう、人間不信になりそうだ」
私はサイラス様のことを考えていたことがバレてしまい、思わず顔が熱くなった。
「姉上、その指輪はルイ王家の王妃に代々受け継がれてきたものです。姉上がその指輪をつけることで、サイラス王太子殿下との婚約が成立していることを周囲にアピールできます。エドワード王子の強みの一つに友好国であるレイラ王女との婚約があります。しかしルイ国にとって次期王妃になる姉上の存在は、ライ国に嫁いでくるレイラ王女よりもルイ国での発言力があると皆は捉えるでしょう。ルブリス王子殿下が元婚約者としての姉上と権力バランスを整えるために別れたのであり、喧嘩別れしたのではないとのアピールできます。2人が共に自国の環境整備に取り組んでいる姿勢を見せられれば、ルイ国から氷を配布してもらった時のように今後もルイ国の支援が受けられると平民は期待するかもしれません」
「この雪の女王の指輪は、王妃様が嵌めていたものです。サイラス様から頂いたのが嬉しくて、すっかり忘れていました。王妃様は現役でいらっしゃるのに、私が今この指輪を持っていて良いのでしょうか」
「既に姉上の指にピッタリということは、姉上の指のサイズに調整されています。サイラス王太子殿下は姉上を妻にし王妃にするという意思を強く伝えたくて、母君に指輪を譲ってくれるよう頼んだのではないでしょうか?」
夢のように素敵なサイラス様から指輪をもらって、舞い上がってしまっていた。
そこに隠されたメッセージを思うと、私は嬉しくて胸が熱くなる。
「雪の女王の指輪というのか? ダイヤモンドの周りにサファイアが施してあって、いかにもな名前だな」
「違います。私が勝手にこの指輪をそう呼んでいただけです。今見るとまるでサファイアはサイラス様の澄んだ青い瞳で、ダイヤモンドは彼の光輝く銀髪に見えてきました」
「イザベラ、仕事をしている時にサイラス王太子殿下のことを考えるのは禁止だ。王室護衛騎士を私服で警備に当たらせれば良いということだな? 明日にでも街に行こう」
「ルブリス王子殿下、あれほど平民街が嫌だと言っていたのに、急にどうしたのですか?」
「さあ、どうしたんだろうな。でも、今はすぐにでも街に出て仕事に取り組みたい気持ちになっている」
私とカールはルブリス王子殿下の変化に顔を見合わせた。
王子が礼服で登場しては、公式行事と思われる。
かといって黒いローブを着てお忍びのような格好で街を出歩いては、気を遣われてニュースにならないかもしれない。
ルブリス王子殿下が、平民の街を自然に視察し、周囲から親しみを持ってもらうことが重要なのだ。
しかし、暗殺者など危険に遭遇する可能性も考えると護衛は必ず必要だ。
「覆面騎士とは何のことだ?」
「何と表現して良いのかわからなかったのですが、以前エドワード王子と買い物に街に行った時に、騎士服を着ないで護衛している方がいるから安全だと言っていたのを思い出したのです」
「いつ、エドワードと買い物などにいったのだ?婚約者の私とは5年の間、どこも行かず数えられる程の言葉しか交わしていないのに」
「ルブリス王子殿下との婚約の顔合わせの後、落ち込んでいる私を元気づけようとエドワード王子殿下が街に連れて行ってくれたのです」
私はあの時サイラス様と出会ったのだ。
眩しいほどに美しい彼を見て、私とは相容れない光の住人だと思った。
そんな夢の存在のような彼が今、私を好きだと言ってくれているのだ。
「今、サイラス王太子殿下のことを考えているのか?イザベラ、仕事に集中してくれないか?街に出る時は、薬指にある華美な指輪は外した方が良いぞ。贅沢な生活をしているような人間に、心を打ち解けられるとは思わないからな。エドワードは私をその頃には追い落とそうとしていたのだな。もう、人間不信になりそうだ」
私はサイラス様のことを考えていたことがバレてしまい、思わず顔が熱くなった。
「姉上、その指輪はルイ王家の王妃に代々受け継がれてきたものです。姉上がその指輪をつけることで、サイラス王太子殿下との婚約が成立していることを周囲にアピールできます。エドワード王子の強みの一つに友好国であるレイラ王女との婚約があります。しかしルイ国にとって次期王妃になる姉上の存在は、ライ国に嫁いでくるレイラ王女よりもルイ国での発言力があると皆は捉えるでしょう。ルブリス王子殿下が元婚約者としての姉上と権力バランスを整えるために別れたのであり、喧嘩別れしたのではないとのアピールできます。2人が共に自国の環境整備に取り組んでいる姿勢を見せられれば、ルイ国から氷を配布してもらった時のように今後もルイ国の支援が受けられると平民は期待するかもしれません」
「この雪の女王の指輪は、王妃様が嵌めていたものです。サイラス様から頂いたのが嬉しくて、すっかり忘れていました。王妃様は現役でいらっしゃるのに、私が今この指輪を持っていて良いのでしょうか」
「既に姉上の指にピッタリということは、姉上の指のサイズに調整されています。サイラス王太子殿下は姉上を妻にし王妃にするという意思を強く伝えたくて、母君に指輪を譲ってくれるよう頼んだのではないでしょうか?」
夢のように素敵なサイラス様から指輪をもらって、舞い上がってしまっていた。
そこに隠されたメッセージを思うと、私は嬉しくて胸が熱くなる。
「雪の女王の指輪というのか? ダイヤモンドの周りにサファイアが施してあって、いかにもな名前だな」
「違います。私が勝手にこの指輪をそう呼んでいただけです。今見るとまるでサファイアはサイラス様の澄んだ青い瞳で、ダイヤモンドは彼の光輝く銀髪に見えてきました」
「イザベラ、仕事をしている時にサイラス王太子殿下のことを考えるのは禁止だ。王室護衛騎士を私服で警備に当たらせれば良いということだな? 明日にでも街に行こう」
「ルブリス王子殿下、あれほど平民街が嫌だと言っていたのに、急にどうしたのですか?」
「さあ、どうしたんだろうな。でも、今はすぐにでも街に出て仕事に取り組みたい気持ちになっている」
私とカールはルブリス王子殿下の変化に顔を見合わせた。