マンションを出る。あっつい。今日も三十度超えるって言ってたなぁ。十月になったらもう少しマシになるといいけど。
「暑い? お水飲む?」
「平気」
手を繋ぐみこちゃんの手もしっとりしている。私もしっとりしている。きっと身長の低いみこちゃんの方が暑いから、早くお店に着かないと。
家からすぐ近くのバス停でバスを待つ。あと五分で来るはず。
あ、道路を走る車を目で追ってる。
「もしかしてバスに乗るのも初めて?」
「うん」
「じゃあ、楽しみだね」
朝から初めて尽くしだ。せっかくだから今日一日楽しめるようにこちらも頑張ろう。
一分遅れでバスが着て二人で乗り込む。
「大人と子ども一人ずつお願いします」
そう言って料金を支払ったけど、合ってる……よね? 見た目は七、八歳で小学生にはなってそうだし、もし幼児でもタダのところを多めに払っちゃっただけだし。とりあえず人間年齢ってことで。
「みこちゃんって何歳?」
座席でこっそり聞いてみる。
「ななさい」
「そっか。ありがと」
合ってた!
「降りる時にこのボタンを押すの」
「ボタン?」
「うん」
みこちゃんは降車ボタンをじっと見つめていた。大丈夫、そんなに見張らなくても逃げ出さないから。
十五分程走ってついに降りるバス停が次となった。降りることを教えると、みこちゃんは早押しボタンのように押していた。可愛い。ガチャガチャでこういうグッズあったら買おう。
また手を繋いで歩くこと二分、ようやく目的地に着いた。わりと大きな百貨店。ここならペットショップも洋服や日用品も売っている。みこちゃんは自動ドアにびくっとしていた。
「迷子になったら大変だから、私から離れないようにね」
「うん」
すでに手を繋いでいるのにもっとぎゅっとくっついてきたので、私の心臓がきゅんきゅんで止まらなくなった。こんな女児、全世界が放っておかない。
「まずは子ども用の帽子だね」
さっきからずれて目が隠れたりして不便そうなので。二階にあるキッズコーナーに立ち寄る。今まで機会が無いからスルーしてたけど、子ども服めっっちゃ可愛い! なんてこと!
発作を起こしそうな体をどうにか落ち着かせて帽子がある棚に向かう。キャスケットも良い、野球帽みたいなのも良い。でも、みこちゃんが被るんだから、本人が気に入ったものが一番良い。
「試着して、良さそうなのにしよ」
みこちゃんがまずキャップ付きの帽子を手に取ろうとして、その横のキャスケットに左手がずれた。それを鏡の前で被る。似合う~。
「これにする」
「うんうん、似合ってるよ。他にも試さなくていい?」
「うん。耳出た時当たって帽子が飛んじゃうから」
キャップ帽を指差して言う。た、確かにそうかも。そこまで考えが至らなかった。反省。
次は横にある洋服の棚に移る。みこちゃんが不思議そうに私を見上げた。
「服、みこあるよ」
自分の服をつまんで言う。あやかしだから和風かと思いきや、シンプルな緑のワンピース。
「それも可愛いけど、洗い替えが必要でしょ?」
「いいの?」
「うん、いいよ。何着でも選んで」
私としては、今まで独り身で社会人をして数年、お金の使い道もなく貯めていた状態だったから、せっかくだし沢山使ってほしい。きっとこういう時のために貯金していたんだと思う。
みこちゃんが腕を組んで棚を見つめる。ちっちゃい子が腕組むの手がまだ小さいから慣れてなくて微笑ましい。家族の人の癖かな。
「全部買う?」
「ううん」
ふるふる首を振る。堅実だね。私より大人だわ。私、物欲無いって思ってたけど、単純に好きなものが無かったんだ。大切な子が出来ただけでこんなに変わるなんて。
「これか、これ」
みこちゃんは今着ているワンピースと似ている紺色ワンピースと、Tシャツとスカートを着用したマネキンを指した。
「オッケー、試着しよう。すみませーん」
店員さんを呼んで試着室に向かう。どっちも似合いそう。やっぱお店ごと買い取りたい。
「どう?」
「おおッいいね。動きやすそう」
「こっちは?」
「同じワンピースでも雰囲気が変わって良い」
一着ずつ試着姿を見せてもらう。もう全布みこちゃんに似合うと思うよ。
元の服に戻ったみこちゃんが悩むので、私は迷わず二着とも手に取った。
「両方買おう。洗い替えで三着はあった方がいいから」
「ありがとう!」
瞳を輝かせてお礼を言われる。一日のお給料分くらいで喜んでもらえるなら安いものよ。
会計を済ませ、最後にペットショップへ。
みこちゃん曰く、人間の姿は力を使うので基本はウサギの方が楽らしい。なので、ウサギ時用に水入れと餌入れを購入した。ケージはいらないから買わなかった。元気に部屋をぴょんぴょん跳ね回ってもらおう。
ほくほく顔の私たちはまたバスに乗り、マンションに帰った。お昼用のおかずも買ったからあとはのんびり出来る。
「暑い? お水飲む?」
「平気」
手を繋ぐみこちゃんの手もしっとりしている。私もしっとりしている。きっと身長の低いみこちゃんの方が暑いから、早くお店に着かないと。
家からすぐ近くのバス停でバスを待つ。あと五分で来るはず。
あ、道路を走る車を目で追ってる。
「もしかしてバスに乗るのも初めて?」
「うん」
「じゃあ、楽しみだね」
朝から初めて尽くしだ。せっかくだから今日一日楽しめるようにこちらも頑張ろう。
一分遅れでバスが着て二人で乗り込む。
「大人と子ども一人ずつお願いします」
そう言って料金を支払ったけど、合ってる……よね? 見た目は七、八歳で小学生にはなってそうだし、もし幼児でもタダのところを多めに払っちゃっただけだし。とりあえず人間年齢ってことで。
「みこちゃんって何歳?」
座席でこっそり聞いてみる。
「ななさい」
「そっか。ありがと」
合ってた!
「降りる時にこのボタンを押すの」
「ボタン?」
「うん」
みこちゃんは降車ボタンをじっと見つめていた。大丈夫、そんなに見張らなくても逃げ出さないから。
十五分程走ってついに降りるバス停が次となった。降りることを教えると、みこちゃんは早押しボタンのように押していた。可愛い。ガチャガチャでこういうグッズあったら買おう。
また手を繋いで歩くこと二分、ようやく目的地に着いた。わりと大きな百貨店。ここならペットショップも洋服や日用品も売っている。みこちゃんは自動ドアにびくっとしていた。
「迷子になったら大変だから、私から離れないようにね」
「うん」
すでに手を繋いでいるのにもっとぎゅっとくっついてきたので、私の心臓がきゅんきゅんで止まらなくなった。こんな女児、全世界が放っておかない。
「まずは子ども用の帽子だね」
さっきからずれて目が隠れたりして不便そうなので。二階にあるキッズコーナーに立ち寄る。今まで機会が無いからスルーしてたけど、子ども服めっっちゃ可愛い! なんてこと!
発作を起こしそうな体をどうにか落ち着かせて帽子がある棚に向かう。キャスケットも良い、野球帽みたいなのも良い。でも、みこちゃんが被るんだから、本人が気に入ったものが一番良い。
「試着して、良さそうなのにしよ」
みこちゃんがまずキャップ付きの帽子を手に取ろうとして、その横のキャスケットに左手がずれた。それを鏡の前で被る。似合う~。
「これにする」
「うんうん、似合ってるよ。他にも試さなくていい?」
「うん。耳出た時当たって帽子が飛んじゃうから」
キャップ帽を指差して言う。た、確かにそうかも。そこまで考えが至らなかった。反省。
次は横にある洋服の棚に移る。みこちゃんが不思議そうに私を見上げた。
「服、みこあるよ」
自分の服をつまんで言う。あやかしだから和風かと思いきや、シンプルな緑のワンピース。
「それも可愛いけど、洗い替えが必要でしょ?」
「いいの?」
「うん、いいよ。何着でも選んで」
私としては、今まで独り身で社会人をして数年、お金の使い道もなく貯めていた状態だったから、せっかくだし沢山使ってほしい。きっとこういう時のために貯金していたんだと思う。
みこちゃんが腕を組んで棚を見つめる。ちっちゃい子が腕組むの手がまだ小さいから慣れてなくて微笑ましい。家族の人の癖かな。
「全部買う?」
「ううん」
ふるふる首を振る。堅実だね。私より大人だわ。私、物欲無いって思ってたけど、単純に好きなものが無かったんだ。大切な子が出来ただけでこんなに変わるなんて。
「これか、これ」
みこちゃんは今着ているワンピースと似ている紺色ワンピースと、Tシャツとスカートを着用したマネキンを指した。
「オッケー、試着しよう。すみませーん」
店員さんを呼んで試着室に向かう。どっちも似合いそう。やっぱお店ごと買い取りたい。
「どう?」
「おおッいいね。動きやすそう」
「こっちは?」
「同じワンピースでも雰囲気が変わって良い」
一着ずつ試着姿を見せてもらう。もう全布みこちゃんに似合うと思うよ。
元の服に戻ったみこちゃんが悩むので、私は迷わず二着とも手に取った。
「両方買おう。洗い替えで三着はあった方がいいから」
「ありがとう!」
瞳を輝かせてお礼を言われる。一日のお給料分くらいで喜んでもらえるなら安いものよ。
会計を済ませ、最後にペットショップへ。
みこちゃん曰く、人間の姿は力を使うので基本はウサギの方が楽らしい。なので、ウサギ時用に水入れと餌入れを購入した。ケージはいらないから買わなかった。元気に部屋をぴょんぴょん跳ね回ってもらおう。
ほくほく顔の私たちはまたバスに乗り、マンションに帰った。お昼用のおかずも買ったからあとはのんびり出来る。