ある日、みこちゃんが学校からプリントをもらってきた。それを見た私は驚愕した。
「授業参観!」
授業参観が年に数回あるのは知っていたけど、ついにこの日がやってきたんだ。貴重な行事、しっかり説明を読み込まなくちゃ。
『普段なかなか見られないお子様の授業風景を是非ご覧ください。各家庭二名までご出席頂けます』
なるほどなるほど。
『おじいちゃんおばあちゃんの参加も歓迎しております』
なるほど!
保護者だから父母だけじゃなくてOKってことね。了解です。
一緒に住んでいるから私が保護者ってことになっているけど、実際の家族がいるんだからまずはそちらに聞いた方がいいよね。離れて暮らしているからこういう機会があったら喜びそう。私はさっそくみこママにプリントの画像とともにメッセージを送った。
五分で返信が着た。ありがとうのスタンプと予定を確認するとのメッセージ。あちらから誰が来るだろう。
今はみこちゃんは勉強中。いつもは私が帰宅する頃には終わってるんだけど、今日は国語の文章問題が難しいらしく、夕食終わりに続きをしている。分からなくてもまずは自分だけで解こうとしている姿勢、すごく尊敬する。私は小さい頃すぐ親に聞いていた。
「お……おおっ」
「どうしたの?」
やば、みこちゃんの邪魔しちゃった。
「あ、ごめん。宿題中だったのに変な声出して」
「今終わったよ」
「そっか、お疲れ様。授業参観のお知らせをみこママに伝えたんだけど、来る人決まったよ」
「だれ?」
みこちゃんの頭にぴょこんとうさぎの耳が生える。おっ久々にうさ耳見た可愛い!
「じゃじゃん! この人です!」
「こんにちは」
授業参観当日、私は緊張していた。三週間振りに会うその人が、それはもう立派な車に運転手付きで私のマンションまでやってきたからだ。後部座席の窓を開けて挨拶してくれたおじいさまが上品で私とは違う世界の人過ぎて眩しい。
「こんにちは、今日はお忙しいところお越し頂き有難う御座います!」
「こちらこそ、誘ってくださってありがとう」
九十度に腰を曲げて挨拶をすると、おじいさまがにこやかにお礼を言ってくれた。
そう、今日授業参観に出席するのはみこちゃんのおじいさま。みこパパとみこママは出張があるらしくて、泣いているスタンプとともに次回は絶対に出席すると言っていた。
「さあ、横にどうぞ」
「はい、失礼します」
運転手さんがわざわざドアを開けてくれた。恐る恐る高級車に乗り込む。わあ、ふっかふか。
二名まで出席出来るため私も有給を取ってみたけれども、こんな車に乗るなんて思ってもみなくてもう降りたくなっちゃった。でも今日はみこちゃんの授業参観、私頑張るね!
「楽しみですね」
「そうだね。子どもたちが主役の日だからいちおう目立たない服装にしたんだが、変ではないかな」
「お似合いです!」
今日はおじいさま和服じゃなくてスーツなの。お世辞じゃなくて本当にお似合い。おじいさまも楽しみにしていたのが分かって、緊張も段々解けてきた。
小学校は近所なのでものの数分で着いた。歩いたって五分ちょいだもんね。校庭にずらりと並んだ車が圧巻。他の車も、詳しくない私でも分かる車種の多いことで。でも、運転手付きは当たり前だけどほぼゼロ。やっぱりおじいさま、只者ではない。
おじいさまと私が車を降りると、近くにいた保護者が振り向いた。もしかしてみこちゃんのお友だちの保護者かもしれないので、とりあえず会釈しておく。
「いってらっしゃいませ」
運転手さんに見送られ、私たちは昇降口へ歩いていった。私立の小学校だから特別な造りしていたらどうしようかと思ったけど、私の子どもの頃と同じような造りで安心した。
みこちゃんたち一年生のクラスは三階にあるらしい。昇降口でスリッパに履き替えていると、受付に立っていた先生が話しかけてくれた。
「これはこれは五十嵐様、お忙しいところ恐れ入ります」
「いえ、今日はお世話になります」
「こちらこそ、宜しくお願い致します」
もしかして、この先生と知り合いかと思ったけど、おじいさまがここに来るのは初めてなはずで、顔を知っているのが不思議だった。私も一度しか来たことがないから、多分誰にも覚えられていないだろうし。
廊下ですれ違う保護者たちもおじいさまに一度は目を向けて会釈をする。保護者同士だから会釈するのは当然としても、なんだか注目されている気がする。
──まさか、おじいさまって有名人……?
「授業参観!」
授業参観が年に数回あるのは知っていたけど、ついにこの日がやってきたんだ。貴重な行事、しっかり説明を読み込まなくちゃ。
『普段なかなか見られないお子様の授業風景を是非ご覧ください。各家庭二名までご出席頂けます』
なるほどなるほど。
『おじいちゃんおばあちゃんの参加も歓迎しております』
なるほど!
保護者だから父母だけじゃなくてOKってことね。了解です。
一緒に住んでいるから私が保護者ってことになっているけど、実際の家族がいるんだからまずはそちらに聞いた方がいいよね。離れて暮らしているからこういう機会があったら喜びそう。私はさっそくみこママにプリントの画像とともにメッセージを送った。
五分で返信が着た。ありがとうのスタンプと予定を確認するとのメッセージ。あちらから誰が来るだろう。
今はみこちゃんは勉強中。いつもは私が帰宅する頃には終わってるんだけど、今日は国語の文章問題が難しいらしく、夕食終わりに続きをしている。分からなくてもまずは自分だけで解こうとしている姿勢、すごく尊敬する。私は小さい頃すぐ親に聞いていた。
「お……おおっ」
「どうしたの?」
やば、みこちゃんの邪魔しちゃった。
「あ、ごめん。宿題中だったのに変な声出して」
「今終わったよ」
「そっか、お疲れ様。授業参観のお知らせをみこママに伝えたんだけど、来る人決まったよ」
「だれ?」
みこちゃんの頭にぴょこんとうさぎの耳が生える。おっ久々にうさ耳見た可愛い!
「じゃじゃん! この人です!」
「こんにちは」
授業参観当日、私は緊張していた。三週間振りに会うその人が、それはもう立派な車に運転手付きで私のマンションまでやってきたからだ。後部座席の窓を開けて挨拶してくれたおじいさまが上品で私とは違う世界の人過ぎて眩しい。
「こんにちは、今日はお忙しいところお越し頂き有難う御座います!」
「こちらこそ、誘ってくださってありがとう」
九十度に腰を曲げて挨拶をすると、おじいさまがにこやかにお礼を言ってくれた。
そう、今日授業参観に出席するのはみこちゃんのおじいさま。みこパパとみこママは出張があるらしくて、泣いているスタンプとともに次回は絶対に出席すると言っていた。
「さあ、横にどうぞ」
「はい、失礼します」
運転手さんがわざわざドアを開けてくれた。恐る恐る高級車に乗り込む。わあ、ふっかふか。
二名まで出席出来るため私も有給を取ってみたけれども、こんな車に乗るなんて思ってもみなくてもう降りたくなっちゃった。でも今日はみこちゃんの授業参観、私頑張るね!
「楽しみですね」
「そうだね。子どもたちが主役の日だからいちおう目立たない服装にしたんだが、変ではないかな」
「お似合いです!」
今日はおじいさま和服じゃなくてスーツなの。お世辞じゃなくて本当にお似合い。おじいさまも楽しみにしていたのが分かって、緊張も段々解けてきた。
小学校は近所なのでものの数分で着いた。歩いたって五分ちょいだもんね。校庭にずらりと並んだ車が圧巻。他の車も、詳しくない私でも分かる車種の多いことで。でも、運転手付きは当たり前だけどほぼゼロ。やっぱりおじいさま、只者ではない。
おじいさまと私が車を降りると、近くにいた保護者が振り向いた。もしかしてみこちゃんのお友だちの保護者かもしれないので、とりあえず会釈しておく。
「いってらっしゃいませ」
運転手さんに見送られ、私たちは昇降口へ歩いていった。私立の小学校だから特別な造りしていたらどうしようかと思ったけど、私の子どもの頃と同じような造りで安心した。
みこちゃんたち一年生のクラスは三階にあるらしい。昇降口でスリッパに履き替えていると、受付に立っていた先生が話しかけてくれた。
「これはこれは五十嵐様、お忙しいところ恐れ入ります」
「いえ、今日はお世話になります」
「こちらこそ、宜しくお願い致します」
もしかして、この先生と知り合いかと思ったけど、おじいさまがここに来るのは初めてなはずで、顔を知っているのが不思議だった。私も一度しか来たことがないから、多分誰にも覚えられていないだろうし。
廊下ですれ違う保護者たちもおじいさまに一度は目を向けて会釈をする。保護者同士だから会釈するのは当然としても、なんだか注目されている気がする。
──まさか、おじいさまって有名人……?