「お~」
電車を途中で乗り換えて四十分、五十嵐山の最寄り駅に着いた。四十分乗るだけでこんな自然豊かな場所になるなんて。県内で旅行をしたことがなかったから、今までもったいなかったかもしれない。
駅からでも大きな山がよく見える。本当大きい。立派だ。あやかしが住んでいることを知っているから余計霊験あらたかな場所に感じる。
「さて、行こうか」
「道案内する」
「ありがとう」
手を繋いで元気に歩き出す。良いお天気にハイキングしている気分。でも、実際は違う。きちんと同居していることをアピールしておじいさまに安心してもらう儀式だ。
五分歩いたところで山の入り口が見えた。五十嵐山と書かれている看板も立っている。
「おじいさまがずっと住んでいる山なの?」
「うん。おじいさまより昔からだって。千年とか言ってた」
「千年! すごいね」
千年前っていうと平安時代くらい? おじいさまは何歳なんだろう。あやかしだし、百年どころじゃないのかも。
山に入ったところで誰かが上から降ってきた。うさちゃんだぁぁッ!
「みこ! と、奈々」
ウサギが色葉さんに変身した。さすがみこちゃんガチ勢、私のことを視界に入れてくれただけで有難い限りです。
「迎えに来た。行こう」
「はい、宜しくお願いします」
さり気なくみこちゃんのリュックを持ってあげる優しい色葉さん。素敵。
「ん」
すると、右手を私に差し出してきた。
「なんでしょう?」
「あんたのも持つ」
「えっあ、有難う御座います」
どもりながらお礼を言っている間に二人分の荷物を持った色葉さんがすたすた歩き出した。えっと、なんか機嫌良い。みこちゃんと会えたからか。だよね、こんな天使に会えたらテンション上がってモブの荷物も持っちゃうよね。
「あそこだ」
開けた場所に、和風の平屋が建っていた。山の中に一軒家だ~山小屋じゃなくて、ちゃんと生活が出来そうな広さ。
「普段は皆さんここで暮らしているんですか?」
「いや、お祖父様とその周りの数人くらいだな。みこも元々出ていく予定だったんだ。あいつの所為で時期が早まったけど」
「なるほど」
あいつとはみこちゃんを婚約者にって言っているあやかしのことだろう。静かになったからということは、まだ諦めていないってことだよね。七歳の悩みじゃないよ……。
「お祖父様、みこが帰ってきました」
色葉さんの後ろで姿勢を正して待っていると、奥から貫禄のあるおじいさまが歩いてきた。白髪をオールバックにして、右手には杖。眉間に寄った皺が深く、眼力はとても強い。二人きりで睨まれたらすぐに謝っちゃいそう。
「おじいさま、ただいま」
「みこ……おかえり」
みこちゃんがおじいさまに抱き着くと、おじいさまが眉を下げて優しい笑顔になった。
わぁお、笑うとこんなに優しそうなんだ。ギャップがすごい。そしてこれだけでみこちゃんを可愛がっているっていうのが分かる。みこちゃんは皆に可愛がられて育ったから、こんなにイイコなんだね。
「貴方が奈々さんですか。はじまして、みこの祖父の五十嵐正三と申します。いつもみこがお世話になっています」
「いえ、こちらこそみこちゃんには毎日癒されて楽しい日々を送っております」
なんか慌てて変な感じで返しちゃった気がする。ぺこぺこお辞儀をしていたら、もう二人奥から現れた。
「ぱぱ、まま」
「えっ」
「みこ~おかえり」
あれ。話題に出ないから、てっきりご両親はいらっしゃらないのかと聞いてこなかったけど、御健在だったんだ……! 変なこと聞かなくてよかった!
よかった。ご両親がいるなら寂しくないね。思わずうるっときちゃった。私も久々に実感に帰ってみようかな。
電車を途中で乗り換えて四十分、五十嵐山の最寄り駅に着いた。四十分乗るだけでこんな自然豊かな場所になるなんて。県内で旅行をしたことがなかったから、今までもったいなかったかもしれない。
駅からでも大きな山がよく見える。本当大きい。立派だ。あやかしが住んでいることを知っているから余計霊験あらたかな場所に感じる。
「さて、行こうか」
「道案内する」
「ありがとう」
手を繋いで元気に歩き出す。良いお天気にハイキングしている気分。でも、実際は違う。きちんと同居していることをアピールしておじいさまに安心してもらう儀式だ。
五分歩いたところで山の入り口が見えた。五十嵐山と書かれている看板も立っている。
「おじいさまがずっと住んでいる山なの?」
「うん。おじいさまより昔からだって。千年とか言ってた」
「千年! すごいね」
千年前っていうと平安時代くらい? おじいさまは何歳なんだろう。あやかしだし、百年どころじゃないのかも。
山に入ったところで誰かが上から降ってきた。うさちゃんだぁぁッ!
「みこ! と、奈々」
ウサギが色葉さんに変身した。さすがみこちゃんガチ勢、私のことを視界に入れてくれただけで有難い限りです。
「迎えに来た。行こう」
「はい、宜しくお願いします」
さり気なくみこちゃんのリュックを持ってあげる優しい色葉さん。素敵。
「ん」
すると、右手を私に差し出してきた。
「なんでしょう?」
「あんたのも持つ」
「えっあ、有難う御座います」
どもりながらお礼を言っている間に二人分の荷物を持った色葉さんがすたすた歩き出した。えっと、なんか機嫌良い。みこちゃんと会えたからか。だよね、こんな天使に会えたらテンション上がってモブの荷物も持っちゃうよね。
「あそこだ」
開けた場所に、和風の平屋が建っていた。山の中に一軒家だ~山小屋じゃなくて、ちゃんと生活が出来そうな広さ。
「普段は皆さんここで暮らしているんですか?」
「いや、お祖父様とその周りの数人くらいだな。みこも元々出ていく予定だったんだ。あいつの所為で時期が早まったけど」
「なるほど」
あいつとはみこちゃんを婚約者にって言っているあやかしのことだろう。静かになったからということは、まだ諦めていないってことだよね。七歳の悩みじゃないよ……。
「お祖父様、みこが帰ってきました」
色葉さんの後ろで姿勢を正して待っていると、奥から貫禄のあるおじいさまが歩いてきた。白髪をオールバックにして、右手には杖。眉間に寄った皺が深く、眼力はとても強い。二人きりで睨まれたらすぐに謝っちゃいそう。
「おじいさま、ただいま」
「みこ……おかえり」
みこちゃんがおじいさまに抱き着くと、おじいさまが眉を下げて優しい笑顔になった。
わぁお、笑うとこんなに優しそうなんだ。ギャップがすごい。そしてこれだけでみこちゃんを可愛がっているっていうのが分かる。みこちゃんは皆に可愛がられて育ったから、こんなにイイコなんだね。
「貴方が奈々さんですか。はじまして、みこの祖父の五十嵐正三と申します。いつもみこがお世話になっています」
「いえ、こちらこそみこちゃんには毎日癒されて楽しい日々を送っております」
なんか慌てて変な感じで返しちゃった気がする。ぺこぺこお辞儀をしていたら、もう二人奥から現れた。
「ぱぱ、まま」
「えっ」
「みこ~おかえり」
あれ。話題に出ないから、てっきりご両親はいらっしゃらないのかと聞いてこなかったけど、御健在だったんだ……! 変なこと聞かなくてよかった!
よかった。ご両親がいるなら寂しくないね。思わずうるっときちゃった。私も久々に実感に帰ってみようかな。