「おやおやぁ?」
鍵アカウントを作成して三日、フォローゼロ、フォロワーゼロで一人呟いてきた私のアカウントに、何故かフォロー申請が一件届いた。
名前はうさぎん、自己紹介欄も「成人済OL、ウサギが好きです」しか書いてないんだけど、どこにフォローする要素があったんだろう。
うさみこちゃんしか上げてないし、外で撮った写真は上げないようにして身バレしない対策はしているから別にフォロー承認しても平気は平気。でも、変な人だったら嫌だな。
とりあえず申請してきた人のアカウントチェックをしてみよう。そう思って名前を確認したら、藤って書いてあった。
ふ、藤……!
いやまさか、アイコンのちっちゃい写真だけでバレたとかそういう……? 怖い怖い。引っ越しの時も話していないのにいきなり現れただけでちょっと怖かったのに。
でもさすがに別人でしょう。震える手で名前をタップする。
あ、藤さんだこれ。
アイコンが風景だったから分からなかったけど、メディア欄を見たら藤さんが笑顔で移っていた。いちおう目の部分にスタンプが置かれて顔は半分しか見えないけど、知り合いが見たらすぐに分かる。
じゃあ、藤さんは私の小さいアイコン画像だけで私のアカウントだと判断したんだ。何億もあるアカウントから。何かその筋のプロかな。
これは承認しないとダメなやつだ。もししたら今日ここに来て理由を聞かれそう。まあ、とりあえず家族なら承認して大丈夫だね。承認した瞬間、藤さんから反応があった。
上げた十枚程の画像全てにハートマークが飛ぶ。おおお、まるで人間ではない速さ。その筋のロボットかな。
フォローバックはしてみたものの挨拶した方がいいのか悩んでいたら、向こうからDMが飛んできた。
『いつもみこがお世話になっています。何かありましたらご連絡ください』
おおおおこのアカウントが私だって確実に分かっているやつだ。あやかしだから特殊な力をお持ちなんだろう。そう思っておこう。
『こちらこそお世話になっております。よろしくお願いします』
返信したら、ようやく藤さんからのアクションが無くなった。
びっっくりしたなぁ。
まあ、でも藤さんなら口外しないだろうし、私のコレクションをみこちゃんの家族に見せたいと思っていたからいいかな。
とてて。
「わ、みこちゃんおはよう」
お昼寝していたうさみこちゃんが走ってきて私の膝に乗ってくれた。
冷静な振りで挨拶したけど脳内はふわもこ大フィーバー中。今日ももふもふを有難う御座います。究極の癒しをもらえて寿命が毎日延びっぱなし。このままだと私五百歳生きるわ。
「みこちゃんお日様の匂いがする」
窓の近くで寝ていたからかな。それともいつも良い匂いがするのかな。こんな穏やかな休日、みこちゃんがいなかったら送れない。一人暮らしの頃どうやって過ごしていたのかすでに記憶があやふや。
午前中のどこかで適当に起きて洗濯物を干して、余っている食材で適当にお昼食べて、午後は買い物が無ければだらだら部屋で転がっていた気がする。
うう……健康に悪い休日過ごしていたなぁ。ふわもこって偉大。少なくとも、存在しているだけで人一人の命を救っている。
今は朝しっかり起きてみこちゃんと朝の子ども番組観ながら朝食、午前中は洗濯掃除でみこちゃんは宿題、昼食は自炊か外食、午後はみこちゃんがお昼寝しなかったらお散歩したり買い物行ったり。楽しいし健康的で言うことなしだ。
「見て見て」
先日うさみこちゃん用アカウント作ることは知らせてある。鍵の概念がちょっと難しかったみたいだけど、理解してくれたみたい。誰に見られても平気って言っていたので、個人情報の重要さはまた今度伝えた方がよさそう。
だって、みこちゃんは人間でもウサギでもどちらも奇跡の可愛さだから、情報が洩れていつ誰に狙われるか分からない。万が一ストーカーにつけられでもしたら、私は地の果てまで追いかけて罪を償わせる。
うさみこちゃんがスマートフォンの画面を真剣に見つめる。愛らし過ぎるんですが!!
こ、この写真撮りたい……ッけど、カメラはスマートフォンしかないから撮れない……。ボーナス出たら一眼レフ買おうかな。
「前にうさみこちゃんのアカウント作ったでしょ。それを見たいって藤さんから連絡があったの」
うさみこちゃんが私を見上げる。そのまま人になった。わぁお、みこちゃんが膝に乗ってくれている。可愛い。七歳軽い。
「そうなの? ふじ君が?」
「そうなの。離れて暮らしているから、みこちゃんのこと気になるんだね」
ぴょこんと出たうさ耳が嬉しさを表している。みこちゃんは家族と仲良しなんだね。良いことだ。
「このアイコンの人が藤さんだよ」
「これ?」
アイコンをタップすると、藤さんのアカウントに飛んだ。みこちゃんがびくっと体を揺らす。タブレットを使った授業があるのでインターネット自体は知っているけど、授業で使う部分以外はまだまだ未知の世界らしい。
「ほら、顔を隠してはいるけど藤さんでしょ?」
「うん」
メディア欄を順に見ていくのを後ろで見守る。フォローし合ったからこうして見てもいいってことだけど、あまり会話をしたことがない相手なので、写真を勝手に覗き見している気分になっちゃう。
「これ、色葉」
「えっ」
言われて写真を拡大したら、確かにこんな感じだった気がする。うわ~色葉さんも可愛い。またうさ色葉さんリアルで見たいなぁ。そんなこと言ったら怒られそうだけど。
メディア欄でひとしきり満足してスマートフォンを置く。お、十五時。おやつの時間だ。
「おやつにしようか」
尋ねると、みこちゃんがすくっと立ち上がった。
「みこが準備する。奈々ちゃんは座ってて」
そう言うと、うさ耳をひょこひょこさせながらキッチンへ消えていった。
鍵アカウントを作成して三日、フォローゼロ、フォロワーゼロで一人呟いてきた私のアカウントに、何故かフォロー申請が一件届いた。
名前はうさぎん、自己紹介欄も「成人済OL、ウサギが好きです」しか書いてないんだけど、どこにフォローする要素があったんだろう。
うさみこちゃんしか上げてないし、外で撮った写真は上げないようにして身バレしない対策はしているから別にフォロー承認しても平気は平気。でも、変な人だったら嫌だな。
とりあえず申請してきた人のアカウントチェックをしてみよう。そう思って名前を確認したら、藤って書いてあった。
ふ、藤……!
いやまさか、アイコンのちっちゃい写真だけでバレたとかそういう……? 怖い怖い。引っ越しの時も話していないのにいきなり現れただけでちょっと怖かったのに。
でもさすがに別人でしょう。震える手で名前をタップする。
あ、藤さんだこれ。
アイコンが風景だったから分からなかったけど、メディア欄を見たら藤さんが笑顔で移っていた。いちおう目の部分にスタンプが置かれて顔は半分しか見えないけど、知り合いが見たらすぐに分かる。
じゃあ、藤さんは私の小さいアイコン画像だけで私のアカウントだと判断したんだ。何億もあるアカウントから。何かその筋のプロかな。
これは承認しないとダメなやつだ。もししたら今日ここに来て理由を聞かれそう。まあ、とりあえず家族なら承認して大丈夫だね。承認した瞬間、藤さんから反応があった。
上げた十枚程の画像全てにハートマークが飛ぶ。おおお、まるで人間ではない速さ。その筋のロボットかな。
フォローバックはしてみたものの挨拶した方がいいのか悩んでいたら、向こうからDMが飛んできた。
『いつもみこがお世話になっています。何かありましたらご連絡ください』
おおおおこのアカウントが私だって確実に分かっているやつだ。あやかしだから特殊な力をお持ちなんだろう。そう思っておこう。
『こちらこそお世話になっております。よろしくお願いします』
返信したら、ようやく藤さんからのアクションが無くなった。
びっっくりしたなぁ。
まあ、でも藤さんなら口外しないだろうし、私のコレクションをみこちゃんの家族に見せたいと思っていたからいいかな。
とてて。
「わ、みこちゃんおはよう」
お昼寝していたうさみこちゃんが走ってきて私の膝に乗ってくれた。
冷静な振りで挨拶したけど脳内はふわもこ大フィーバー中。今日ももふもふを有難う御座います。究極の癒しをもらえて寿命が毎日延びっぱなし。このままだと私五百歳生きるわ。
「みこちゃんお日様の匂いがする」
窓の近くで寝ていたからかな。それともいつも良い匂いがするのかな。こんな穏やかな休日、みこちゃんがいなかったら送れない。一人暮らしの頃どうやって過ごしていたのかすでに記憶があやふや。
午前中のどこかで適当に起きて洗濯物を干して、余っている食材で適当にお昼食べて、午後は買い物が無ければだらだら部屋で転がっていた気がする。
うう……健康に悪い休日過ごしていたなぁ。ふわもこって偉大。少なくとも、存在しているだけで人一人の命を救っている。
今は朝しっかり起きてみこちゃんと朝の子ども番組観ながら朝食、午前中は洗濯掃除でみこちゃんは宿題、昼食は自炊か外食、午後はみこちゃんがお昼寝しなかったらお散歩したり買い物行ったり。楽しいし健康的で言うことなしだ。
「見て見て」
先日うさみこちゃん用アカウント作ることは知らせてある。鍵の概念がちょっと難しかったみたいだけど、理解してくれたみたい。誰に見られても平気って言っていたので、個人情報の重要さはまた今度伝えた方がよさそう。
だって、みこちゃんは人間でもウサギでもどちらも奇跡の可愛さだから、情報が洩れていつ誰に狙われるか分からない。万が一ストーカーにつけられでもしたら、私は地の果てまで追いかけて罪を償わせる。
うさみこちゃんがスマートフォンの画面を真剣に見つめる。愛らし過ぎるんですが!!
こ、この写真撮りたい……ッけど、カメラはスマートフォンしかないから撮れない……。ボーナス出たら一眼レフ買おうかな。
「前にうさみこちゃんのアカウント作ったでしょ。それを見たいって藤さんから連絡があったの」
うさみこちゃんが私を見上げる。そのまま人になった。わぁお、みこちゃんが膝に乗ってくれている。可愛い。七歳軽い。
「そうなの? ふじ君が?」
「そうなの。離れて暮らしているから、みこちゃんのこと気になるんだね」
ぴょこんと出たうさ耳が嬉しさを表している。みこちゃんは家族と仲良しなんだね。良いことだ。
「このアイコンの人が藤さんだよ」
「これ?」
アイコンをタップすると、藤さんのアカウントに飛んだ。みこちゃんがびくっと体を揺らす。タブレットを使った授業があるのでインターネット自体は知っているけど、授業で使う部分以外はまだまだ未知の世界らしい。
「ほら、顔を隠してはいるけど藤さんでしょ?」
「うん」
メディア欄を順に見ていくのを後ろで見守る。フォローし合ったからこうして見てもいいってことだけど、あまり会話をしたことがない相手なので、写真を勝手に覗き見している気分になっちゃう。
「これ、色葉」
「えっ」
言われて写真を拡大したら、確かにこんな感じだった気がする。うわ~色葉さんも可愛い。またうさ色葉さんリアルで見たいなぁ。そんなこと言ったら怒られそうだけど。
メディア欄でひとしきり満足してスマートフォンを置く。お、十五時。おやつの時間だ。
「おやつにしようか」
尋ねると、みこちゃんがすくっと立ち上がった。
「みこが準備する。奈々ちゃんは座ってて」
そう言うと、うさ耳をひょこひょこさせながらキッチンへ消えていった。