今日も定時、とはいかなかったけど、残業十分で会社を出られた。夕食用のお肉は昨日買って冷蔵庫に入っているから、あとは私が家に帰るだけ。

「ただいま!」

 マンションの階段を駆け上がり、ドアを開けながら帰宅アピールをする。まるでこっちが小学生みたい。

 我に返って鍵を掛けていると、とてとてみこちゃんが歩いてきた。

「おかえり」
「おまたせ。初登校どうだった?」

 聞かれたみこちゃんが首を九十度に傾ける。可愛い~首痛めちゃうから戻そうね。

「お友だちが出来たとか、授業難しかったとか」
「いっぱい話しかけられたよ。授業は分かった」
「そっか。それは百点花丸だね」

 洗面所で手洗いうがいをしてから手を繋いでリビングに行く。手洗い中横で待っててくれるの嬉しすぎた。家に家族がいるってこんな感じかなぁ。

「わぁ」

 リビングのテーブルには宿題が広げられていた。しかもちゃんとやってある。え、天才? 天使で天才ちゃんなの?

 だって、小学一年生って言ったら、遊び盛りで宿題なんて親に言われるまで後回しが当たり前だと思っていた。

「すごい! お留守番出来て宿題も出来るなんてすごすぎる!」
「えへへ」

 私が可愛い可愛い言ってもあまり照れないみこちゃんが、はにかみながらちょっとほっぺを赤くさせた。うおおお最強の癒しウサギ様ァ!

「夜ご飯急いで作っちゃうね」

 こっちまで照れてきちゃって、顔をぱたぱた仰ぎながらキッチンに逃げ込んだ。

「三十分以内には出来るから、ゆっくりして待ってて」
「うん」

 ぽんっ。

 すると、みこちゃんはウサギになってクッションで丸くなっていた。

 あああああ、癒され……日々の疲れが浄化される……。

 もふもふも子どものほっぺのぷにぷにも両方堪能させてもらえるなんて、宝くじで一等当たるより幸運だと思う。

 転校初日ということで奮発してステーキを焼いてみた。テーブルにそっと置くと、耳がぴくぴく動いてみこちゃんが目を開けた。

「良い匂い」
「だね~。食べよう」

「いただきます」
「いただきます」

 みこちゃんがまた人間に戻り、正座して両手を合わせる。私は何も言っていないので、きっと保護者さんが教えたのだろう。とても上品。私なんか一人暮らしでだらけてたから、両手は合わせてもいただきますは言っていなかったし、疲れた日は胡坐なこともあった。反省。

 食べ終わったところでそろそろ限界が来そうな雰囲気が漂ってきた。急いでお風呂を溜めて一緒に入る。お風呂でも学校の様子を聞かせてくれた。こんな素敵な話が毎日聞けるのか~。

 二十時でみこちゃんは寝室へ。寝る前にもふもふな頭をたっぷり撫でさせていただいた。それだけで成仏しそうだった。明日からも生きます。

 二人暮らしをするようになって、一人だったら面倒だと思って後回しにしていた家事類もあっという間に終わって、二十時半にはもうやることが無くなった。あとは寝るまでずっと自由時間。どうしよう、何しよう。とりあえずSNSしよう。

「そうだ」

 人の姿をネット上に載せるのは危険だから絶対しないけど、他の人には見られない鍵アカウントならウサギみこちゃんを載せてもいいかもしれない。デフォルトで鍵にして、誰もフォローしなければフォロー申請も来ないはず。

 完全に自己満でしかないけど、日々の可愛い仕草や成長を記録していきたいな。今も写真自体は撮ってるけど、膨大過ぎて全部見るの大変だから厳選して記録は結構大事かも。

 とりあえず新しいアカウントを作って載せる写真を厳選していたら、いつの間にか二時間経っていた。

「寝る時間なんですけど!」

 やばッ声出ちゃった。みこちゃん起こして、なかった。よかった。寝室のドアをこっそり開けると、すやすや眠る天使がいた。幸せ。起こさないようそっと横に入らせて頂く。今日もみこちゃんのおかげで楽しかったです。おやすみなさい。