「ねえ、柚。心中しようよ」

 夕暮れの図書室に落とされた、空虚なささやき。
 その返事の前には、すこしの沈黙が生まれた。

 だけど。

「嫌だよ。わたしは生きる」

 東坂(とうさか)(ゆず)は、自分の意見を言うのが苦手な女子高生。
 自分でもそう認めているくせに、きっぱりと返していた。

「そういうこと言わないで、凪都(なぎと)
「……ごめん。冗談」

 ふっと、かすかな笑いをきっかけに、話題は煙に巻かれた。
 でも、つい思ってしまう。

 ――うそつき。

 心が苦しくなった。