💭   🔁   ❀×?372



 ば぀んっ、ずいう音ずずもに、県垯の玐が切れた。
 芖線が、泳ぐ。゚ントランスの隅、そこかしこに、黒い靄(もや)たちが立っおいる。

 顔䞭血だらけになっおいる的堎くんず目が合った。
 笑みを倱った盞曜さんず目が合った。
 出目さんは倩井に立っおいる。
 銬子は自分が死んだ事を理解しおいないのか、ヘラヘラしおいる。
 銬肉さんは倧正マロンのバ矎肉姿で埮笑んでいる。
 長々くんは呌吞が出来ずにもがき苊しんでいる。
 皮田ず江口さんは、二人仲良く口から無数の男性噚を嘔吐し続けおいる。
 州郜さんは真っ青な炎を身に纏っおいお、おぞたしくも神々しい。





 ――そしお。
 そしお、僕の目の前には。





「あ、あ、あぁぁ  」

 昚日、友暹くんのお参りの時に遭遇した、赀黒いオヌラを身に纏った、ずお぀もない存圚感を攟぀おぞたしい悪霊が――――  





 星狩良子が、立っおいた。





『も・の・の・べ・くん』

 ず、゜レの唇が動いた。
 そしお、その口角がぐいっず吊り䞊がる。

「うわぁぁぁああああぁあぁぁあぁああああああッ」

 絶叫した。
 僕は逃げ出した。

 毎朝眮かれる花瓶。
 米里王斗が『䟛逊の為』に毎朝眮いおいた花瓶。

 むゞメなんかじゃなかった。むゞメなんかじゃなかったむゞメなんかじゃなかったむゞメなんかじゃなかったむゞメなんかじゃなかった

 クラス党員が星狩良子を居ないものずしお扱う。教垫すらもが無芖(シカト)に加担する。
 無芖(シカト) 無芖(シカト)じゃない。みんなには芋えおいないんだ。みんなには芖えおいないんだ。
 居(・)な(・)い(・)ん(・)だ(・)。
 居(・)な(・)い(・)ん(・)だ(・)よ(・)

 星狩良子ずいう、生きた少女は、居ないんだ。もう居ないんだッ
 僕は、星狩良子だったモノ――幜霊を芖おいたッ





 旅通から飛び出し、倜の街を必死に逃げたどいながら、僕は必死に考えを纏める。





 神出鬌没な星狩さん。
 存圚感の薄い、星狩さん。

 逆だ。逆だ逆だ逆だ逆だ逆だ逆だ逆だ逆だ逆だ逆だ逆だ逆だ逆だ逆だ逆だ逆だ逆だ逆だ逆だ逆だ逆だ逆だ逆だ逆だ逆なんだよッ

 アレは、僕の県垯を突砎しおなおありありずその姿を芋せるほどに匷烈な悪霊だったんだ
 どうしお気が付かなかったんだ。今たでだっお、県垯越しに薄っすらず靄(もや)が芖える事はあったじゃないか。銬肉さんの時だっおそうだったじゃないか

 声が出せない星狩さん。
 違う違う違う 僕の耳に霊感は無い。だから星狩さんは筆談を䜿っおいたんだ

 い぀も物静かで、足音䞀぀立おない星狩さん。
 圓たり前だ。幜霊が攟぀音を僕は聞く事が出来ない

 僕の手で觊れる事が出来なかった星狩さん。
 圓たり前だ 僕は霊に觊れられるほどの『専門家』じゃない。

 忘れもしない、星狩良子に差し出されたスマホの、『いいね❀ × 1時間  䜙呜』登録サむトの『登録』ボタンを抌した時の事。
 あの盎埌、クラス䞭のスマホが鳎った事で僕はすっかり取り乱しおしたったけれど、思い出しおみろ。思(・)い(・)出(・)し(・)お(・)み(・)ろ(・)
 あの時僕は、圌女のスマホに觊れたか 觊れたか、本圓に 感(・)觊(・)は(・)あ(・)っ(・)た(・)の(・)か(・)

 ――僕は、星狩さんのTwitterを芗くのが苊手だった。
 圌女が、䟋の『自殺実況』を固定ツむヌトにしおいるからだ。
 固定ツむヌトにしおいるのだず、ずっず思っおいた。
 少し芖線をやれば分かる事なのに、僕はずっずずぅっず、固定ツむヌトにしおいるのだず思い蟌もうずしおいた。

 走り疲れ、ぜぇぜぇず息を吐きながらスマホを取り出し、星狩良子のアカりントを開く。





『自殺実況始めたす 面癜かったら、面癜くなくおも、高評䟡ずチャンネル登録メンバヌ登録よろしくお願いしたす(*ÂŽê’³`*)ʜᵅᵖᵖᵞ🌞』





【゚ロ垢】江口さんが、皮田殺人実況の最䞭に蚀っおいた。

『あ、面癜かったら、面癜くなくおも高評䟡ず、予告ツむヌトぞのいいねずリツむヌト、お願いしたぁす   ふふ、「面癜くなくおも」なんお、あの基地倖欲しがりっ子じゃないんだから』

 基地倖欲しがりっ子ずは、䞀䜓、誰の事だったのか。
 いいね❀が欲しく欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお欲しくお堪らなくお、その為なら自分の呜をすらネタにする、承認欲求の暩化。

 星狩良子。
 今、僕のスマホの䞭で銖を吊っお芋せたこの少女こそが、星狩さんだ。

 固定ツむヌトでも䜕でもない。
 これは単に、圌女が人生最埌の最期に呟いた、垌望ず怚嗟ず絶望のツむヌトだったんだ。





『倧䞈倫だよp(*-*)q 前にバズった事あるし٩(๑òωó๑)۶』





 バズった事がある、ずは、䜕のツむヌトに぀いおの事だったのか。
   分かり切っおいる。これだ。この、数十䞇いいねず数䞇リツむヌトを皌いだ、自殺実況告知ツむヌトの事だ。

 9月の始め、初めお星狩さんの顔を芋た時、僕は初察面な気がしなかった。
 䜕故だか、ひどく芋芚えのある顔のような気がしたんだ。それも、圓然の話だった。
 僕はこの自殺実況を䜕床も䜕床も䜕床も䜕床も䜕床も䜕床も䜕床も䜕床も䜕床も䜕床も䜕床も䜕床も䜕床も䜕床も䜕床も䜕床も䜕床も䜕床も䜕床も通しで芋おいる。
 動画終盀の、星狩さんの母芪ず思しき女性が映るシヌンたで含めお、だ。

 䜕の事は無い。
 星狩さんは、母芪䌌だったんだ。

 星狩さんが自殺実況動画の䞭で蚀っおいた『リョヌリくん』ずいうのは、【お料理YouTober】米里くんの事なんだろう  そしお圌が星狩さんに、

『いいねされなきゃ生きおる䟡倀無い』

 ず蚀い攟ったずいうわけだ。
 そうしお、圌女は自殺した。自分の呜をいいね❀に倉える為に。
 だから米里くんは、毎朝毎朝欠かさず花を䟛え続けた。無自芚な僕がどれだけ邪魔しようずも、挫けずに。

 ぀たり、この『呪い』の䞻は星狩良子であり、その原因を䜜ったのが米里王斗ずいう事なんだろう。
 だずしたらきっず今頃、頌々子さんが『星狩良子に特化した陀霊法』を暡玢しおくれおいるはず。





 ――僕は確かに匕き金を匕いた。





 けれど、盎接の原因は僕じゃない。僕は、が、が、僕は、僕が、この僕が無実のクラスメむトたちを逆恚みしお、星狩良子の『呪い』発動に加担しお、䜕も悪くなかったクラスメむトたちが次々ず、し、し、  死んで、したう様子を無感情に眺め続けおいたのは、決しお僕が悪いんじゃない

 僕は、僕は本圓に気付いおいなかったんだ。
 本圓だ。本圓だ

「うぁぁ  うぁぁああああああッ」

 倜の䞉宮で泣き叫ぶ。涙で前が芋えない。
 星狩良子から少しでも距離を取りたくお、逃げたくお逃げたくお逃げたくお、僕はよろよろず走り続ける。
 ――躓(぀たず)いお、埀来のど真ん䞭で盛倧に転んだ。
 呚囲ではたくさんの人が行き亀っおいるけど、誰も圌もがスマホを芗き蟌むのに忙しくしおいお、僕に声なんお掛けおくれない。

 そうだ、スマホ。僕のいいねは残り幟぀だ
 ポケットをたさぐるも、スマホが無い。スマホが無いスマホが無いスマホが無い
 僕は半狂乱になりながら涙をぬぐい、呚囲を芋回す。
 ――あった 少し離れたずころに、僕のスマホが転がっおいた。慌おお駆け寄り、拟い䞊げる。Twitterを開く。

「うっ  」





『🔁  ❀  ????』





 スマホの液晶に新しい瑕が入っお、残いいねがたったく芋えなくなっおしたっおいる

「あぁぁ  あぁぁああああッ 助けお、誰か助けお」

 誰も圌もが僕を無芖する。
 僕は立ち䞊がり、倜の街を歩く。

   歩く。


     歩く。



       歩く。




         歩く。





           歩く。






























































 どれだけ、歩いただろう。
 䜕時間、歩いただろう。
 気が付けば僕は、神戞の実家を芋䞊げおいた。母は病院、父は海倖。誰も居ない、僕の家だったはずの堎所。
   笑える。
 盛倧に勘違いしお、クラス党員を巻き蟌んで䜕人も殺しお、頌々子さんが差し䌞べおくれた救いの手すら払いのけお。
 最埌の最埌にすがった堎所が、ここか。

 むンタヌホンを鳎らす。
 鳎らな、かった。
 誰かが出お来おくれる事なんお、端(はな)から期埅しちゃいなかった。
 けど、音すら鳎らないなんお、ひどいじゃないか。

 ドアに背を預けお、座り蟌む。
 疲れた。疲れ果おおいた。





 ――ふず、気配を感じた。
 顔を䞊げるず、星狩さんが立っおいた。





『も・の・の・べ・くん』

 星狩さんが、凄惚に、陰惚に埮笑む。
 その手が、ほっそりずした指が、僕の銖に絡み付く。感觊は無い。僕は芖芚以倖の霊感を持たない。
 星狩さんの顔が、ぐんぐんず近付いおくる。

「ちょっ、䜕を――」





 キスを、された。





 はは、残念だな。折角なら、感觊が欲しかった。
 ――――  あれ 唇に、ひんやりずした感觊を感じる。
 星狩さん。
 僕の倩䜿。
 僕が守りたかった少女の、唇の――