💭   🔁   ❤×?683



 バスで高速道路と山道を揺られる事、小1時間。
 道中の車内では、頼々子さんが手配してくれたムスリムによるイスラム教の礼拝が行われた――が、これはあくまで気休め、念の為の措置だろう。
 僕はこの6年間、イスラム教で解決した怪異を見た事が無い。何しろ日本にはイスラム教徒がほとんどいないから。

 怪異のほとんどは仏教か神道で片が付き、極々たまに、キリスト教で無ければ効果が無い案件が出てくる。
 要は、怪異を起こしている人の霊が、どの宗教文化圏で生きてきたのかという話だ。
 イスラム教は日々の厳しい宗教生活――数多の戒律を守った人生の上に成り立つものらしいし、そもそも礼拝を指導してくれたムスリムのスンナ派なのかシーア派なのかも分からなかった。
 ……案の定、イスラム教では解呪は出来ず、クラスの面々からは落胆の声が漏れた。

「まま、本番はこれからですから!」

 頼々子さんが、ぱんっと手を叩いて場の空気を切り替える。
 ただ単に、手を1回叩いただけ。だというのに、クラスのみんなの表情が一気に和らいだ。
 頼々子さんには、人を安心させる力がある。カリスマというやつなのかもしれない。

「ほら、お寺に着きましたよ! 順に降りてください」

 前座扱いされたムスリムの方が、釈然としなさそうな顔をしていた。



   💭   🔁   ❤×?390



 ……結局、仏教でも効果は無かった。さらに山を下りてカトリック教会へ、さらにプロテスタントもハシゴしたんだけど、僕らのスマホには変わらず『いいね❤ × 1分 = 余命』が憑りついたままだった。

 そうして、今。
 19時も半ばを過ぎ、頼々子さんと2年4組の面々は、旅館のエントランスで呆然としている。

「……ね、かるたくん」

 頼々子さんが僕の肩に腕を回してきた。大人のバストが僕の肩に押し当てられ、化粧と汗の入り混じった頼々子さんの匂いが漂ってきて、僕はクラクラしてくる。
 頼々子さんは、そんな僕をエントランスの隅っこへと(いざな)って、

「疑いたくは無いんだけど、念の為。――私に開示していない情報は、無い?」

「――――……」言葉を失う、とはまさにこの事だ。

「神道も仏教もカトリックもプロテスタントも……どの専門家も、この『呪い』の事を『信じられないほど醜悪で強烈』と評していたわ。凶悪な個人――故人による呪詛によるものだ、って。こうなると、汎用的な対処じゃ間に合わない。それこそ『貞○』や『加○子』じゃないけれど、特定個人の『呪いの主』が居て、その『主』に特化した除霊方法を試さない事には。何か、心当たりは無いかしら?」

 頼々子さんが一度体を離してから、僕の両肩を掴んでくる。
 見詰められる。頼々子さんの、頼りがいのある瞳に。頼りがいがあるが故に、今、この時に限っては、僕の秘密を、後ろめたさを暴露しようと鋭く光る瞳に。

 ――つ、と思わず視線を外してしまった。
 外した視線のその先には、遠巻きにこちらを見守るクラスの連中と、そして。

「……星狩、さん」

 僕の天使と、目が合った。

「目を、逸らさないで」頼々子さんに叱られる。

 視界の先では、星狩さんが、小さく頷いた。

「かるたくん?」

 星狩さんが、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。

「――――……」僕は頼々子さんに視線を戻す。「ごめんなさい。実は一つ、隠してた事があります」

「はぁ~……」頼々子さんが、苛立たし気に溜息を吐く。「虚偽の報告をされたら捜査に支障が出る、って前々から教えていなかった?」

「ほ、本当にごめんなさい……」

 ただでさえ忙しい頼々子さんに無駄足を踏ませ、あまつさえクラスメイトたちを危険に巻き込む行為だ。当然の苛立ちだと思う。
 本当に、申し訳無い。人命が懸かっているというのに、保身の為に虚偽の申告をしてしまった。

「ふぅ……まぁいいわ」ぽん、と頭を撫でてくれた。「それで、教えてくれるのね?」

「はい。この『呪い』が始まったのは、僕が、『いいね❤ × 1分 = 余命』というサイトで『登録』ボタンを押したからなんです」

「何だか含みのある言い方ね」

「はい。まず、『いいね❤ × 1分 = 余命』というサイトがありました。特定の学校のクラスを『登録』することで、そのクラスを呪ってやるぞっていう……初めて見せられた時は、単なるブラックジョークのサイトだと思ったんです」

「見せられた――誰に?」

「はい。僕にそのサイトを見せて来て、サイトの入力欄に2年4組を入力したのが――」

 僕は、すぐ隣へ視線を向ける。
 今や星狩さんは、僕のすぐ隣に立っている。叱られると思っているのか、彼女は俯いてしまっている。

「この子――この女子、星狩さんです」

「……? なるほど」

「星狩さんはその、クラスのみんなから……イジメ、られてて。そんな星狩さんがスマホを差し出してきたから、クラスのイジメに対するちょっとした意趣返しがしたいんだろうと、その片棒を担ぐ相棒が欲しいんだろうと思った僕は、そのサイトの『登録』ボタンを押しました。その途端、クラス全員のスマホが鳴って――――……そこから先は、メールでご報告した通りです」

「……なるほど」頼々子さんが深い溜息を吐いて、








































































































()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」















「…………………………………………え?」

 一瞬、何を言われたのか分からなかった。

「え? いや、ほら、この女子です」僕は、隣に立っている星狩さんを指し示す。

「どの子?」頼々子さんが首を傾げた。

「いや、だから、ここに居るじゃないですか」

()()()()()()()()()()()()?」

 頼々子さんの顔が、険しくなった。星狩さんが立っている場所を指差して、










()()()()()()()()()()()?」