「おはよう」

そう言って教室に入ってきた渦島。

どう見てクラスでよく見かける‘‘あの‘‘渦島だった。

土曜日みた、あの肉食系渦島は俺が見間違えただけなのか。

それとも、土曜日見た渦島が‘‘素‘‘なのか。

そんなことを知るのは、秋下か渦島本人しか知らない。

「おはよー」

「おはよう、水都(みと)」

誰かが教室に入ってきて、渦島と話している。

そういや、渦島のことを『水都』と呼ぶのは親友の鷹野だけだ。

あの渦島を名前で呼ぶ親友として、結構の有名人。

だけど、俺のその『鷹野』と会話をしたことがなかった。

「ねぇ、君」

机に影ができる。

「おまっ」

「おお、覚えていたんだね?」

土曜日に話しかけてきた少女が目の前に立っていた。

「改めまして、水都の親友鷹野陽依(たかの ひより)」

そうだ。こいつ見たことあると思ったら、教室で見たことがあるんだ。

俺は、滅多に教室にいない。

いるとしたら、授業中やホームルームの時だけだ。

他の時間は図書室にいたりなど、静かな場所へ避難している。

秋下と俺は、結構に似ていると思う。

性格がとかじゃなくてやってることが、だ。

俺も秋下もよく本を読んでいる。

だけど、あいつはうるさくても教室で読んでいる。

俺はうるさいのが嫌だから図書室で読んでいる。

していることは同じでも、やっている場所は全然違うのだ。