「疑似双子とは考えたなぁ!」
 仲森が感心したように頷く。研修生グループ発表から1週間。郁斗たち『SN—SKY』のグループ写真の撮影日。撮影が終わって、その後はみんながオフで今後の方針を決めようということになった。
 ちなみにこのグループの基本の立ち位置は西園寺をセンターに、仲森と神田、郁斗と歩がシンメということになった。
「そう。それで、早速アピールを開始しようと思ってて。動画をあげたいんだ」
 研修生でもグループを組むとファンクラブが作られる。そこでは文字や画像、動画など様々な媒体でファンにメッセージを伝えることが出来る。
「いいじゃないか。俺は王道アイドルらしくいきたいなぁ」
「仲森は色々こだわるから、更新頻度低そう」
「うるせー」
 あれこれと意気込む仲森を、神田が茶化す。
「そういう侑はどんなことすんの?」
「俺はもっとバラエティー出たいから面白い事とか。みんなでゲームをやるのも良いな。歩は?」
「うーん俺は何が良いかなぁ」
 歩は天然かわいい系と言われているけれど、これといった特技がある訳ではない。そして事務所に入ったばかりだからファンが求めるものも未開拓状態だ。それでも、デビューという目標を達成するには、個性のあるコンテンツを提供しなければならない。
「とりあえず、俺が出したいメンズメイクやヘアアレンジの動画にモデルとして出てみる?双子アピールにもなるし」
 郁斗がそう提案すると、歩はパッと顔を明るくした。
「いいの?」
「うん。そこでファンたちの反応見てヒント探そう!」
 「うんうん」と仲森はまるで保護者かのように微笑ましい視線を向けてきた。
「そうだ、メンバーカラーはどうする?」
 西園寺がパチンと手を叩いて、思い出したかのように言う。ボーイズグループ激戦区の現代、アイドルだけでなく殆どのグループアーティストはメンバーカラーを持っている。
「俺らがペアの時は俺が紫で仲森は赤ったよな?」
「ああ」
「そっかぁ、実は俺もいつも赤なんだよね」
 西園寺はおずおずとそう言った。ビジュアルを武器にしている西園寺は、目立つ赤がよく似合う。そして仲森も、情熱的な部分やエネルギッシュな面が赤らしい。「仲森が」「いや西園寺が」と互いが譲る中、神田が口を開いた。
「仲森、青とかどう?」
「青?」
 神田の提案に仲森は首をかしげる。
「炎って、青色が一番熱いんだよな。だから青も良いんじゃねえかと思ってさ」
 神田はこんな感じだが実は頭がいい。難関の東雲大学の観光学部に在籍していて、大学に通いながら仕事やレッスンに行っている。
「良いな、それ!じゃあ俺が青、西園寺が赤、神田は紫。で、2人はどうする?よく使う色とかあるか?」
「うーん……。俺はあんまり決まっていないけど、ピンクがいいなぁ。桜木だし」
——かわいい色ならピンクが王道だし
「歩は?」
「あんまり仕事出たことないから……。でも、癒し系とは言われるからそんなイメージの色……」
 うーん……と唸りながら考え込む歩。郁斗の目には今日も歩の周りにはタンポポの綿毛が飛んでいた。
「白、は?」
 そんな歩を見ていて思いついた色を口に出すと、歩はそれだ!と言う顔で郁斗を指さした。
 白。純粋で、無垢な。何にも染まっていない色。それなのに、200色あると言われる不思議な色。全て、歩にぴったりだと思った。