歩と別れ、家に帰ってひと段落すると、仲森からメッセージが届いた。
『俺らのグループ作っといたから!』
彼によく似たキラキラとした目を持つキャラクターが大笑いしているスタンプが添えられている。
メッセージアプリを確認すると、『SN―SKY』と題されたグループに追加されていた。適当なあいさつ文を送信し、ベッドに寝転がる。
視界に大量のぬいぐるみが入る。かわいい見た目が好みなのはもちろんだが、朝起きてすぐ自分のキャラを思い出せるように置いたものだ。普段からキャラを意識していないと、ふとした時にボロが出てしまうから。
改めて『SN―SKY』を思う。
——仲森、侑真、西園寺、歩、そして俺
最初グループ結成を聞かされた時、嬉しさよりも「俺と歩はバックダンサー要員か」と心の中で落胆し、反発した。
でも、歩の持つ才の片鱗を直に見た今では、自分だけが丁度いい補充要員だったのではないかと思えてしまう。売れっ子3人と期待の新星である歩。その組み合わせはなんとも魅力的だろう。
郁斗は彼らと年齢が近く、他の研修生グループにも所属していない。そこそこファンもいるから「丁度よかった」のではないか、と。
心に燻るモヤを、スマートフォンの通知音がかき消した。確認すると歩からのメッセージだった。
『今、電話できませんか』
——なんだ?
学校や事務所ではそれなりに話すがメッセージのやりとりや電話など、殆どしたことがない。2人は先輩後輩で同級生。それ以上でもそれ以下でもなかった。何か不安なことでもあるのだろうか。
あまり深く考えずに通話ボタンを押す。ツーコールで歩は出た。
『わっ、え、あ、はいっ』
——?
「どうかしたの?大丈夫?」
『あ、いや掛けてくると思ってなくて』
「いや、掛けるよ。で、どうしたの?」
『その……これだけは伝えておきたいって思って』
モジモジとした様子が電話越しに伝わってくる。急かすのも違うかと思い黙っていると、歩は意を決した様子で話し始めた。
『俺、郁斗くんと同じグループで良かったなって』
「えっ?」
『郁斗くん、いつも俺のこと助けてくれて頼りになるし、あ、いや、そういう意味だけじゃなくて。郁斗くんは歌もダンスも上手なのにレッスン欠かさず行くし、スタッフさんもすごいって言ってて。そんな郁斗くんと同じグループっていうのが、すごく嬉しくて……』
一生懸命に歩が紡いだ言葉に、冷えて痛んだ心が解されていくのを感じる。
「そ、そうなんだ。ありがと……」
『じゃ、じゃあっそれだけ、言いたかっただけだから……!』
歩はそう言うと通話を切ってしまった。郁斗は持っていたスマートフォンと共に腕をベッドに投げ出す。枕元に置いていた小さなぬいぐるみがバウンドした。
「なんだよ、もう……」
自然と口元に笑みが浮かび、傍にあったぬいぐるみを抱きしめる。瞳の上に微かに浮かんだ涙を誤魔化し、郁斗は眠りについた。
『俺らのグループ作っといたから!』
彼によく似たキラキラとした目を持つキャラクターが大笑いしているスタンプが添えられている。
メッセージアプリを確認すると、『SN―SKY』と題されたグループに追加されていた。適当なあいさつ文を送信し、ベッドに寝転がる。
視界に大量のぬいぐるみが入る。かわいい見た目が好みなのはもちろんだが、朝起きてすぐ自分のキャラを思い出せるように置いたものだ。普段からキャラを意識していないと、ふとした時にボロが出てしまうから。
改めて『SN―SKY』を思う。
——仲森、侑真、西園寺、歩、そして俺
最初グループ結成を聞かされた時、嬉しさよりも「俺と歩はバックダンサー要員か」と心の中で落胆し、反発した。
でも、歩の持つ才の片鱗を直に見た今では、自分だけが丁度いい補充要員だったのではないかと思えてしまう。売れっ子3人と期待の新星である歩。その組み合わせはなんとも魅力的だろう。
郁斗は彼らと年齢が近く、他の研修生グループにも所属していない。そこそこファンもいるから「丁度よかった」のではないか、と。
心に燻るモヤを、スマートフォンの通知音がかき消した。確認すると歩からのメッセージだった。
『今、電話できませんか』
——なんだ?
学校や事務所ではそれなりに話すがメッセージのやりとりや電話など、殆どしたことがない。2人は先輩後輩で同級生。それ以上でもそれ以下でもなかった。何か不安なことでもあるのだろうか。
あまり深く考えずに通話ボタンを押す。ツーコールで歩は出た。
『わっ、え、あ、はいっ』
——?
「どうかしたの?大丈夫?」
『あ、いや掛けてくると思ってなくて』
「いや、掛けるよ。で、どうしたの?」
『その……これだけは伝えておきたいって思って』
モジモジとした様子が電話越しに伝わってくる。急かすのも違うかと思い黙っていると、歩は意を決した様子で話し始めた。
『俺、郁斗くんと同じグループで良かったなって』
「えっ?」
『郁斗くん、いつも俺のこと助けてくれて頼りになるし、あ、いや、そういう意味だけじゃなくて。郁斗くんは歌もダンスも上手なのにレッスン欠かさず行くし、スタッフさんもすごいって言ってて。そんな郁斗くんと同じグループっていうのが、すごく嬉しくて……』
一生懸命に歩が紡いだ言葉に、冷えて痛んだ心が解されていくのを感じる。
「そ、そうなんだ。ありがと……」
『じゃ、じゃあっそれだけ、言いたかっただけだから……!』
歩はそう言うと通話を切ってしまった。郁斗は持っていたスマートフォンと共に腕をベッドに投げ出す。枕元に置いていた小さなぬいぐるみがバウンドした。
「なんだよ、もう……」
自然と口元に笑みが浮かび、傍にあったぬいぐるみを抱きしめる。瞳の上に微かに浮かんだ涙を誤魔化し、郁斗は眠りについた。