「おい、待てよ神田!」
「……」
 神田は仲森の言葉を無視して楽屋へと一直線に歩いていった。それを仲森は必死に追いかける。
——今更、何がしたい
 神田は痛んだココロを抱えたまま、仲森を意識の外から追い出した。なんであんなことを言ってしまったのだろう。「気持ちがなくたって恋愛ごっこはできる」なんて。しかも。
——否定する気なのか。どういうつもりで……!
 楽屋に辿り着き、ドアを閉めようとしたところで仲森が追いついた。強引に閉めようとする神田だが、力では仲森に勝てない。
 観念すると仲森は楽屋に入り込み、後ろ手で鍵を閉めた。