三学期も本格的に始まり、その上ライブツアーの最終地点の東京公演を翌日に控えた1月9日金曜日の朝。
「おはよお、歩……」
郁斗は歩に声を掛けた。数多あるぬいぐるみの真ん中に鎮座する、歩のアクリルスタンドに。
最近、俺は少し変だ。
歩に対するキュートアグレッションを自覚してから、郁斗は彼に近づきたくなる衝動を持て余していた。
アレコレと考えた末に、こうやって彼のアクスタを飾ったりオフショットを集めたり、彼の載った雑誌を切り抜いてみたりしている。端的に言うと、歩のオタクと化していた。
きっかけはSNSを覗いてみた時に、歩ファンの呟きに共感したことだった。「可愛い」とか、「肌がおもちみたい」などと呟いていた人の他の投稿を見ると、推し活として出てきたのがこれだった。
アクリルスタンドや写真相手ならいくら近くに置いていても良い。
「やべ、遅れる……!」
歩のアクリルスタンドを見ていたら、時間を忘れてしまう。
学業優先の事務所だから、例えライブ前日でも学校に行かなければならない。学校は嫌いじゃないけれど、ライブ前日はどうにも落ち着かなかった。
教室に入ると、歩の周りをクラスのみんなが取り囲んでいた。
「あ!郁斗くん!おはよう」
「みんなおはよう~!歩もおはよ」
クラスのみんなにアイドルスマイルを振りまく。
「なんか、2人とも普段からそれなのすごいよね」
「桜木はもっとサバサバしてくれて良いんだぜ?」
「ええ?なんのことかなあ?」
とぼけるまでが郁斗のキャラと化している現状だが、それでもアイドルスマイルはやめない。クラスのみんなを信用していない訳じゃないが、こういう所から自称「知人」だとか自称「関係者」が出てくるのだ。それが今すぐとも何年後とも限らない。
「おはよお、歩……」
郁斗は歩に声を掛けた。数多あるぬいぐるみの真ん中に鎮座する、歩のアクリルスタンドに。
最近、俺は少し変だ。
歩に対するキュートアグレッションを自覚してから、郁斗は彼に近づきたくなる衝動を持て余していた。
アレコレと考えた末に、こうやって彼のアクスタを飾ったりオフショットを集めたり、彼の載った雑誌を切り抜いてみたりしている。端的に言うと、歩のオタクと化していた。
きっかけはSNSを覗いてみた時に、歩ファンの呟きに共感したことだった。「可愛い」とか、「肌がおもちみたい」などと呟いていた人の他の投稿を見ると、推し活として出てきたのがこれだった。
アクリルスタンドや写真相手ならいくら近くに置いていても良い。
「やべ、遅れる……!」
歩のアクリルスタンドを見ていたら、時間を忘れてしまう。
学業優先の事務所だから、例えライブ前日でも学校に行かなければならない。学校は嫌いじゃないけれど、ライブ前日はどうにも落ち着かなかった。
教室に入ると、歩の周りをクラスのみんなが取り囲んでいた。
「あ!郁斗くん!おはよう」
「みんなおはよう~!歩もおはよ」
クラスのみんなにアイドルスマイルを振りまく。
「なんか、2人とも普段からそれなのすごいよね」
「桜木はもっとサバサバしてくれて良いんだぜ?」
「ええ?なんのことかなあ?」
とぼけるまでが郁斗のキャラと化している現状だが、それでもアイドルスマイルはやめない。クラスのみんなを信用していない訳じゃないが、こういう所から自称「知人」だとか自称「関係者」が出てくるのだ。それが今すぐとも何年後とも限らない。