静かになった部屋で寝返りを打つと、再び部屋のドアが開いて西園寺が戻ってきた。西園寺は郁斗に背を向けてベッドに腰掛けた。
「みんなにも言った方が良いんじゃない?強制はしないけど、メンバー同士で知っておいた方がさ?」
「そういうもん、なの?」
「俺もずっと1人でやってきて、仲間っていうもんをどうしていいかって気持ちは分かる。でも、郁斗はもっとメンバーを信用して頼ってほしいよ」
「信用……?」
——人を信じるって、何だ?今までも信じていなかったか?
 郁斗は分からなくなった。
「郁斗は抱え込み過ぎる所あるからなあ。話すことで何かあった時に対応できるかもしれないだろ?」
「うん……」
 分かったような、分かっていないようなまま頷くと西園寺は郁斗の肩を軽く叩いて部屋を出て行った。
——減るものじゃないし、話したって良いか。
 郁斗はそう決めた。
 夜10時を過ぎて、仲森と神田がホテルに到着した。大まかな経緯は伝えていたので、2人は郁斗と歩の部屋に駆け付けてくれた。
「郁斗の過去話が聞けるって聞いたんだけど」
 薄ら笑いながら軽口を叩く神田も、心配そうな目で見ている。
「俺らも助け合いたいって思ってるからさ。何でもいいから話してほしいんだ」
 そう言うと仲森は郁斗の隣に座った。
 誰よりも暗い表情を見せる歩を引き寄せ、仲森とは反対側の隣に座らせる。
「そんな深刻な話じゃないんだけどさ。俺には両親がいないって話で——」