結局最後の曲はダンスナンバーになった。仲森くんの希望曲はアンコールに。一度決定すれば、禍根は残さず、スッキリしたものだった。2人の関係性は本当によく分からない。
 決まったセットリストを元に、それぞれの歌割りを考える。そしてダンスの振り付けも。歌割りは仲森が、振り付けは神田が担当した。その間に西園寺は衣装をデザインし、郁斗はステージ構成を決め、歩のボイトレとダンスレッスンに付き添った。
 そうしている内に10月に入り、単独コンサート決定の情報解禁日がやってきた。
 予想通り、出来たばかりのグループが10回も公演をすることに『SN―SKY』ファンを超えて物議が醸された。郁斗は徹底的に歩の視界からSNSを消し去るようにした。
 評価も意見も、全て終わってから見ればいい。意見を見ることも時には大事だが、それでパフォーマンスに支障をきたしたり、心身を壊したりしては意味がない。この結論に至るまで、郁斗は何年もかかってしまった。出来ることなら早く知っておいた方が良い。
 単独コンサートを知らせるアルタイル・エンタープライズ公式動画配信の撮影の時、そんなことを言っていると、西園寺に「過保護だろ」と言われた。けれど、郁斗には、歩を傷つけるくらいなら過保護でもいいじゃないかとすら思えた。
 新星と言われるほどの才能なのだから。