翌日、岳斗は大学へ行って授業を受け、帰りに海斗と待ち合わせた。岳斗の授業が少し早く終わったので、座って待っていると、海斗が友達と一緒にやって来た。
「岳斗、お待たせ。」
「岳斗くん、こんにちは。」
葵、慎二、圭介、凛太朗もそれぞれ挨拶してくれた。
「海斗さ、明日誕生日なんだろ?それなら今夜はパーティーやろうよ。明日はお前バイトだろ?」
圭介が言った。
「あー、悪い。今夜は先約があるから。」
と、海斗が言った。
「そっか、彼女と過ごすんだよな。」
圭介がそう言うと、
「俺、彼女がいるって言ったか?」
と、海斗。
「いや、でもいるんだろ?」
「そうよ、この間こっちに来たって言ってたじゃない。」
葵も言った。
「こっちに来たのは彼女じゃなくて、彼氏だよ。」
と、海斗がすまして言う。一同、一瞬言葉を失って海斗の顔を凝視した。
「そう、なんだ。それは知らなかった。あはは、ここ女子少ないから、彼女がいたらすぐ分かるはずだと思ったけど、なるほど、分からないわけだ。あはは。」
葵が笑いながらそう言った。
そうして、皆で門を出て歩く。そのうち、駅へ行く道と、岳斗たちの家へ帰る道との分かれ道に出た。
「じゃあな。」
海斗が友達にそう言って去ろうとすると、凛太朗が、
「あれ?お前、彼氏と会うのに、家に帰っちゃうのか?」
と、不思議そうに言った。すると、
「お前、鈍いなあ。」
と、慎二が凛太朗に言った。
「え?」
凛太朗だけでなく、圭介も葵もキョトンとした顔をしている。
「海斗の周辺で、最近こっちに来た男子、一人しかいないだろ?」
慎二がそう言うと、他の三人は一斉に岳斗を見た。
「そういう事。」
海斗はそう言うと、岳斗の肩に腕を回して引き寄せた。
「えー!」
葵、圭介、凛太朗が声を揃えて叫んだ。
「だって、兄弟でしょ?」
葵が岳斗と海斗を交互に指さして言う。
「血がつながってないって、前に言ってたじゃん。さっき、彼氏だって聞いて俺はピント来たぜ。」
と、慎二が言った。海斗はこの一年間、常に岳斗の話を誰かとしていたくて「うちの弟は~」「うちの弟が~」と、細かい事まで色々と周囲に話してしまっていたのである。
「確かに、ソフトクリームを二人で食べてた……。」
葵が言った。岳斗は思わず苦笑いをした。
「そういう事だから、じゃあな。」
海斗はそう言うと、岳斗の体も反転させ、家へと歩き出した。岳斗は顔だけ振り返り、挨拶しようかと思ったのだが、今は恥ずかしいのと、彼らがコソコソ話していたからやめた。
「ってことはさ、同棲してるって事か?」
「うわー、今夜は誕生日だから……。」
「甘ーい!」
最後には、全員で叫んでいた。