「お待たせしました!次はサッカー部です!」
五時間目に、生徒会主催の新入生歓迎会があった。引き続き、部活動のデモンストレーションになり、サッカー部の番になった。
 ユニフォーム姿の部員たちが十人くらい出てきた。リフティングや、お互いにボールを投げ合ってのヘディングやトラップなどの演出もあった。このデモンストレーションは、部員を勧誘するための物のはずだが、これでは単に海斗のファンを増やしているだけではないのか、と岳斗は思った。まさか、女子マネージャーの勧誘が目的なのか、と。だが、マネージャーが何十人も応募して来たらどうするのだろうか、と真面目に心配になる岳斗である。何しろ、これらの演技を見るにつけ、海斗がかっこよすぎるのだ。周りの女子たちを見れば、目がハートに……というのは言い過ぎだが、顔を輝かせて見ているのだ。いや、男子もだ。まさか海斗に憧れたというだけの理由でサッカー部に入ったりしないよな、と岳斗はハラハラしながら見ていた。
 すると、海斗が岳斗を見つけ、岳斗の方に向かってニヤッと笑い、人差し指と中指で、岳斗の事を指さし、ウインクをした。
「キッ、ヤー!!!」
岳斗の周りの女子たちが、奇声を発した。
「バッカやろう。」
岳斗はその奇声に隠れるように、小さい声でそう言った。
「まったく、何考えてんだか、海斗は、もう。」
 そして、やはり学年全体に知られるところとなった。岳斗があの、城崎海斗の弟だと。そして、またあの悲劇が始まるのだ。どれだけ女子たちからナンパされる事か。だが、岳斗はもう、連絡先も交換しない事にした。プレゼントやラブレターの中継もしない。絶対にしないぞ、と岳斗は決めた。なぜなら、中学の時よりも断然今の方が“ヤバイ”気がしたからだ。海斗の輝き方がかなり増しているし、“皆々様”の恋愛に対する本気モードが、中学生の頃とは比べ物にならないほど全開のようだからだ。