校門には散った桜の花びらが満遍なく広がっていた。白かったであろう花びらたちは踏みつけられた影響でひどく汚らしく見える。
咲いている時は綺麗だと人々を魅了するというのに、ひとたび役目を終えればぞんざいに扱われてしまうそれは、消耗していく人気者を彷彿とさせた。
「純人、あそこ貼り出される!」
バスで一緒に登校してきた安達が、ひと足先に昇降口に貼り出されたクラス表に走って行った。
八代はその背中を見送りながら、どうせ走ったって結果は変わらないのになと思う。
高校二年の春。高校生活で最も自由を得ることができる新たな生活の始まりに、誰もが浮き足立っているのが目に見てわかった。
後輩ができることで心に余裕ができるし、先輩は進学のことで粋がる余裕もない。なんのプレッシャーも無いこの学年が一番青春を謳歌できるのだろうと八代は思っている。
「純人一緒だ! 二組!」
安達ははしゃぎながら八代を振り返った。
八代はクラス表を見上げ、“二十四番:八代純人”という自身の出席番号と名前を自らの目で確認する。
ざっとクラス表を見る限り、昨年つるんでいたメンバーが集まっている気する。クラスは成績に偏りが出ないようにとか、担任の負担を減らすべく平等に生徒を分けると噂で来たことがあるが、これは果たして本当にその結果なのだろうか。
「四クラスもあるのにあんまりメンツ変わんないね」
「でもそっちの方が良くない? みんなの絆深まるじゃん」
キラキラとした目で見られて安達の感覚はきっと普通なのだろうなと思った。
安達の言葉に「まぁな」と軽く頷き、八代は下駄箱へと向かう。
そういえば姉も言っていた。高校時代の半分以上を一緒に過ごした友人というのが、これから先将来も大切になって来るのだと。思い返してみると、姉は八代より七歳年上の現役保育士だが、休日に遊びに出掛けているのは決まって高校時代の友人達だった。大学も出ているのに。何故なのだろうと不思議に思う。
別に同じメンバーが嫌なわけではない。もちろん嫌いな人もいないし、誰とだって仲良くやれる。けれどどうせなら、とも思うのだ。
男女五、六人でつるんでいる、クラスの中でも上でも下でもないグループに所属して普通の青春を謳歌する。それも平和でいいけれど、どうせならこの高校生活で同級生全員と絡んでみたいとも思う。そうすればもっと自分のことが分かるかもしれないのに。
咲いている時は綺麗だと人々を魅了するというのに、ひとたび役目を終えればぞんざいに扱われてしまうそれは、消耗していく人気者を彷彿とさせた。
「純人、あそこ貼り出される!」
バスで一緒に登校してきた安達が、ひと足先に昇降口に貼り出されたクラス表に走って行った。
八代はその背中を見送りながら、どうせ走ったって結果は変わらないのになと思う。
高校二年の春。高校生活で最も自由を得ることができる新たな生活の始まりに、誰もが浮き足立っているのが目に見てわかった。
後輩ができることで心に余裕ができるし、先輩は進学のことで粋がる余裕もない。なんのプレッシャーも無いこの学年が一番青春を謳歌できるのだろうと八代は思っている。
「純人一緒だ! 二組!」
安達ははしゃぎながら八代を振り返った。
八代はクラス表を見上げ、“二十四番:八代純人”という自身の出席番号と名前を自らの目で確認する。
ざっとクラス表を見る限り、昨年つるんでいたメンバーが集まっている気する。クラスは成績に偏りが出ないようにとか、担任の負担を減らすべく平等に生徒を分けると噂で来たことがあるが、これは果たして本当にその結果なのだろうか。
「四クラスもあるのにあんまりメンツ変わんないね」
「でもそっちの方が良くない? みんなの絆深まるじゃん」
キラキラとした目で見られて安達の感覚はきっと普通なのだろうなと思った。
安達の言葉に「まぁな」と軽く頷き、八代は下駄箱へと向かう。
そういえば姉も言っていた。高校時代の半分以上を一緒に過ごした友人というのが、これから先将来も大切になって来るのだと。思い返してみると、姉は八代より七歳年上の現役保育士だが、休日に遊びに出掛けているのは決まって高校時代の友人達だった。大学も出ているのに。何故なのだろうと不思議に思う。
別に同じメンバーが嫌なわけではない。もちろん嫌いな人もいないし、誰とだって仲良くやれる。けれどどうせなら、とも思うのだ。
男女五、六人でつるんでいる、クラスの中でも上でも下でもないグループに所属して普通の青春を謳歌する。それも平和でいいけれど、どうせならこの高校生活で同級生全員と絡んでみたいとも思う。そうすればもっと自分のことが分かるかもしれないのに。