目的地に着くと、日葉里はそのまま販売の準備を始める。
路上販売といっても、本当に道に店を開くわけじゃない。病院駐車場に隣接している工務店の駐車場を間借りしている。
工務店のオーナーと理恵が古くからの顔なじみとかで、来客が少ない平日の昼の時間帯だけ、販売スペースを貸してくれている。
院内にコンビニと軽食を取れる店はあるが、周辺には飲食店がほとんどないので、付き添いの家族の他、医療関係者も買いに来てくれるので販売を始めると客はひっきりなしに訪れる。
時間を意識しながら日葉里は手際よく車から折りたたみテーブルを出して、それにクロスをかけて販売の準備をしていく。
榎波はといえば、手伝いをすると言っていたはずなのに、離れた場所で電話をしている。
(手伝うって言ったくせに……)
そのことを恨めしく思いつつ開店準備を終えると、待ち構えていた客が早速弁当を買っていく。
待ち構えていた常連客と短い世間話を交えつつ販売を澄ますと、すぐに次の客がやって来る。
そのまま途切れることなく続く客の相手をしていると、医療関係者の昼休みに入り、慌ただしさが一気に増す。
その頃には電話を終えた榎波も、販売のサポートに入ってくれたが、いかんせん愛想が悪い。
普段は見かけない男性スタッフの姿に、若い女性客が色めきだっても榎波はぶすくれた顔で弁当を渡すだけだ。
そのクールさがいいと騒ぐ声も聞こえるけど、不満げに眉根を寄せる客もいる。
さすがにまずいと思い、艶やかな光沢を放つ榎波の革靴を踏み付けて「接客業なんだから、愛想よくしてください」と注意する。
たぶんお気に入りの靴だったのだろう。
榎波は靴の汚れを気にして日葉里を睨んできたが気にしない。
「理恵さんに、愛想悪くて販売の邪魔だったって、チクるわよ」
そう脅すと、喉元まで出ていた言葉を飲み込み、ぎこちない笑顔を作った。
努力はしているようだが、恐ろしくぎこちないその笑顔はあまり営業向けではない。
相変わらず榎波の職業は謎のままだが、とりあえず、営業用スマイルを必要としない仕事であることは確かだ。
そう納得して、日葉里は榎波と一緒に販売を続けた。
路上販売といっても、本当に道に店を開くわけじゃない。病院駐車場に隣接している工務店の駐車場を間借りしている。
工務店のオーナーと理恵が古くからの顔なじみとかで、来客が少ない平日の昼の時間帯だけ、販売スペースを貸してくれている。
院内にコンビニと軽食を取れる店はあるが、周辺には飲食店がほとんどないので、付き添いの家族の他、医療関係者も買いに来てくれるので販売を始めると客はひっきりなしに訪れる。
時間を意識しながら日葉里は手際よく車から折りたたみテーブルを出して、それにクロスをかけて販売の準備をしていく。
榎波はといえば、手伝いをすると言っていたはずなのに、離れた場所で電話をしている。
(手伝うって言ったくせに……)
そのことを恨めしく思いつつ開店準備を終えると、待ち構えていた客が早速弁当を買っていく。
待ち構えていた常連客と短い世間話を交えつつ販売を澄ますと、すぐに次の客がやって来る。
そのまま途切れることなく続く客の相手をしていると、医療関係者の昼休みに入り、慌ただしさが一気に増す。
その頃には電話を終えた榎波も、販売のサポートに入ってくれたが、いかんせん愛想が悪い。
普段は見かけない男性スタッフの姿に、若い女性客が色めきだっても榎波はぶすくれた顔で弁当を渡すだけだ。
そのクールさがいいと騒ぐ声も聞こえるけど、不満げに眉根を寄せる客もいる。
さすがにまずいと思い、艶やかな光沢を放つ榎波の革靴を踏み付けて「接客業なんだから、愛想よくしてください」と注意する。
たぶんお気に入りの靴だったのだろう。
榎波は靴の汚れを気にして日葉里を睨んできたが気にしない。
「理恵さんに、愛想悪くて販売の邪魔だったって、チクるわよ」
そう脅すと、喉元まで出ていた言葉を飲み込み、ぎこちない笑顔を作った。
努力はしているようだが、恐ろしくぎこちないその笑顔はあまり営業向けではない。
相変わらず榎波の職業は謎のままだが、とりあえず、営業用スマイルを必要としない仕事であることは確かだ。
そう納得して、日葉里は榎波と一緒に販売を続けた。