次の日、俺は珍しく寝坊をした。
 現在9時18分。一時間目の最中だ。
 もう間に合わないかもなぁ。
 制服に袖を通し、朝ご飯は机の上においてあるおにぎりをいくつか食べるぐらいで済ませる。
 倉庫から自転車を取り出し全力で漕ぐ。
 今まで遅刻なんてしたことのない俺にとってこれは非常に緊急事態である。
 なんでこんな時間になっていたのか。
 原因は100%夜遅くまで彼のことを考えていたことだと思っている。

 結局俺はあのあと先生から掃除ロッカーの話と進路についての相談を少しした後直行で家に帰ったらしい。
 家族に「あんた大丈夫?」と言われるほどの放心状態でもあった。


「あ、涼が来た」
「おはよう。珍しいね涼が寝坊なんて」
「あーうん。ちょっと寝不足」


 ほぼ二時間目終わりに来た俺に少し心配した宙たちがくる。
 俺の隈を見たのか紗綾がすこし怪訝な表情をする。


「うわ、隈すごっ。まじで昨日やばかったの?」
「ははっ、ある意味やばかった」
「よく今日来れたな」
「まぁね」


 机に体を預けながら廃人のような声を出す。
 昨日の彼がずっと頭の中にいる。


「あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"」
「うわっ!?お前まじで大丈夫か!?」


 旧に変な声を出した俺を本気で心配する紗綾にこちらが驚く。


「なんかあったのか?僕で良ければ聞くけ」
「聞いてくれ」
「僕、まだ最後まで行ってないんだけど……」


 今はそんな言葉も耳に入らないぐらいこの気持ちを軽くするのに必死だった。