俺・夏樹は、レッサーパンダを見て笑顔でいる芽衣をみた。

そんなにレッサーパンダが大好きなのだろうか。

「何?」

俺の視線に気が付いたのか、レッサーパンダに向いていた視線が俺に向く。

「なんでもない」

芽衣の後ろに展示されているレッサーパンダを見る。

確かに、もふもふしていそうだ。

だから、好きなのだろうか?

よくわからない。

もふもふしていたら、なんでもかわいいのか?

「何、そんな浮かない顔して」

芽衣が、首をかしげて訪ねてくる。

『芽衣のことを考えていた』

喉まで出た言葉を飲み込んだ。

「よし、次、行こうか!」

芽衣は、気分を変えるみたいに明るい声で言う。

「うさぎ」

すぐさま行きたいところを言う。

「えぇ、そんなにウサギが見たいの?」

芽衣は、軽く首をかしげる。

「ウサギ、カワイイよ」

俺は、芽衣の目を見つめて言う。

「確かにウサギは可愛いけど・・・」

「じゃあ、次、行こう」

俺は、芽衣の手首を掴んで、ぐいぐいを引っ張る。

芽衣は、俺に捕まって観念したのかのように、ついてくる。

うさぎが好きな理由。

それは、芽衣に長い耳を足すとウサギに思える。

こんな理由、芽衣には話せない。

俺は、頭の中で芽衣の頭に長い耳をつけ足して、

一人で笑っていた。