容姿は、心音の方が可愛くてモテてる。

運動神経は、私も心音もいい方。

だけど、やっぱり少し違う。

私は、水泳。

心音は、陸上。

正反対なのだ。

頭に関しては、私の方がずっと上だった。

だけど、あんまり褒められた記憶が無い。

「お姉ちゃん、手伝おうか?」

「うん。よろしく」

私は、箸並べを心音に頼んでお味噌汁やご飯を茶碗などによそう。

「心音~、これ運んで」

「はーい」

普通に楽しい家庭だと思う人もいるのだろう。

私だって、普通の家だって思っていたかった。

でも、願っても願ってもそうなることはないんだ。

「たーだいまー」

玄関が勢いよく開き、お父さんが帰ってきた。

「おかえりー」

お父さんもお母さんも働いている。

共働きだ。

だけど、お母さんは今日休みだった。

お父さんは、早めに帰ってこれる日だった。

それが私からしたらどんなに苦痛なのだろう。

「もう夕飯はできたのか」

「うん。席に座って」

「いただきます」

四人の声がリビングに響く。

「今日、部活はどうだった?」

「うーん、タイムは伸び悩んでるかな」

お父さんと心音だけの声がリビングに響く中、私は黙々とご飯を口に入れる。

お母さんは、二人が会話しているところを微笑ましく見ている。

「海音は、どうだった?」

急にお父さんが話を振ってくる。

ため息を出すのを我慢して、お父さんの目を見る。

「別に。席替えがあっただけ」

嘘は言っていない。

別に嘘を言うことでもないし、話すことでもないとは思ったが言わないで置いた。