「ねぇ、岡崎くんとどうやって仲良くなったの?」

最悪の数学がやっと終わったと安堵を浮かべていたのも束の間。

学校の中で美人ということで有名な尼崎(あまざき)さんが声をかけてきた。

「えっと・・・」

そもそも、仲良くなんてなっていないんですよね。

だって、岡崎くんって何を考えているかわかりにくいし、会話も続かせたくないから

仲良くなることは絶対にないことだといいきれるほどの関係だ。

「誤解してません?」

「いえ、誤解などしてないよ?」

問うとすぐ返答が返ってきた。

でも、誤解じゃなかったらなんていうのだろう。

「どこを見て仲がいいと思ったのですか?」

そう、私たちの行動で仲がいいと思える事はしてないはず。

「さっきの授業で教科書を貸したり、授業中口パクで話したり」

ああ。

それ見られてたんだ。

そりゃあ、まあ、誤解する・・・?

するもんなの?

隣の席だから、たまたまなんだけど。

それとも、席を変わってもらう?

それが一番いい方法だと思うけど。

だって、私は普通に過ごせればいいんだ。

「あの、席を変わりましょうか?」

「えっ、いいの?」

「えっと、実はあんまり字が見えてなかったので」

これは嘘ではない。

本当に見えずらいなと思っていた。

しかも、尼崎さんの席は窓側で前の方。

私の願いにピッタリな席だった。

前の方が授業も聞きやすいし、字も見やすいから別に良かった。

「ありがと!」

お礼を言われ、すぐに自分の席を尼崎さんの席があったところへ移動する。

これでよかったんだよね?

せめて、教室だけでも平穏に過ごしたい。

それが願い。

だから、これが最善の方法。

そう何度も何度も自分に言い聞かせていたら、チャイムがなってしまった。