静かに本を読んでいる間は、自分だけの世界で一人でいられる時間。

そんな時間を壊すのが、チャイムだった。

「みんな席につけ~」

友達と話していたクラスの人たちが次々と自分の席へ散らばっていく。

「今日は、席替えをしようと思う」

その先生の言葉が、教室にいた生徒を豹変させる。

『やったー』と喜ぶものもいれば、『えー』と落胆の声を落とすものまで。

その中で、私はいい席が当たりますようにと、窓の外を見ていた。

「じゃあ、口引きだからな~」

先生は運というものが大好きらしい。

今年に入って三か月、席替えは一か月に一回。

席替えは三回行われたが、全部口引きだった。

運が悪い私は、三回ともあまり席が変わらなかった。

だから、今度こそは、と考えていた。

心の中で決意を固め、席を立つ。

そして、教壇の前に続く列に並ぶ。

そして、ついに自分の番が来た。

これからは、できるだけ目立ちたくないんです。

そう言った個人的な願いを心の中で呟き、口引きを取る。

ゆっくりと紙を開き、番号を確認する。

それから、黒板に書いてある席の場所。

番号が振り割っていて、口引きの数と同じところに座る。

黒板に書いてある教室の全体図に目を向ける。

『神様、どうか、どうか、窓側の席で静かに授業が受けれますように』

ただ、こんなちっぽけな願い。

これぐらいなら神様も聞いてくれるだろうと思った。

なのに、実際、神様は私の願いなど聞き入れてくれなかった。

でも、願いは叶っている。

確かに、窓側の席ではある。

あるけれども。

横の席が、学年で有名な岡崎魁浬(おかざき かいり)なのだ。

窓側の席は叶っていても、静かに授業が受けれるわけがない。

だって、岡崎君は顔がよくて、授業中でも岡崎くんを盗み見ることがよくある。

そのため、他からの視線がすごい。

例えば、『あの子、いいな~』とかそんな目で見られる。

全然よくない!

変わってほしかったら、変わってあげる。

でも、こんな私に話しかけようとはしないだろう。

また、一か月後の席替えが待ち遠しい。

そんなことを頭の隅で考えながら、念願の窓際から見える空をボーと見ていた。

それを岡崎くんに見られていたなんて、全く気付かなかった。