ある日。目覚めると、中学生になっていた。
姉と妹と川の字で眠っていたのは、その頃だ。
何かお腹が苦しいと思って目覚めたら、姉と妹の脚が私のお腹に乗っていた。
「もう。勘弁してよ。」と、私が起きて、トイレに行って帰って来ると、妹が「ブー。」と言った。
ブー?豚の鳴き真似か?
「ブー!とまた妹が鳴いた。何故か、耳に入って来る声とは別に、妹の声が頭の中で聞こえる。(豚だ。豚がいるわ!)
今度は、姉の声だ。「ブー!」(ホントだ。2本脚で立ってる。あゆむのパジャマに似たパジャマを着ている。
私は、頭がこんがらがって来た。豚人間は、メガソーラーを一斉に攻撃して、爆死したんじゃなかったか?なんで、中学の時の姉妹がここにいる?あ、ここは、その頃の実家だ。
私は、階下に降り、さっき見なかった洗面所の鏡を見た。
確かに豚だ。私は、豚人間になったんだ。でも、姉妹は声が豚だ。
「あー、あー。」発声練習をしたら、普通の自分の声だ。
私は、着替えることも忘れて、表に飛び出した。
近所のおにいちゃんだ。あの頃の年齢だ。
「あゆむ?ひょっとしたら、あゆむか?もつれそうな歩き方からすると。」
「ケンちゃん。大変だ。僕たち、豚人間になった。あ。メガソーラーの事件、覚えてる?」
「そう言えば、豚人間がメガソーラーに飛びついて・・・なんで、覚えてる?それに、俺の体は若い。」
初めて、自分と同じ境遇の人間に出逢えた。男兄弟のいない僕たちだった。
ケンちゃんは、僕を弟のように可愛がってくれた。
僕らは、誘い合うでもなく、小学校に向かった。
僕らと同じ『豚人間』は、50人はいた。
あ。校長先生だ。あの特徴あるネクタイは、きっと。
「校長先生。教えて下さい。どうなっているんですか?」
「みんな、よく聞くんだ。これから、国会議事堂に向かう。」
皆は驚くどころか、当然のような態度だった。
僕らは、校長先生に導かれるまま、歩き出した。
お腹は減らない。でも、時間は経っていく。
僕は、おにいちゃんが、おにいちゃんのお父さんが形見に遺してくれた時計をいつも見ていた。
何日かけたのか、国会議事堂についた。
先に到着していたグループのリーダーが、国会議事堂の壁を登り始めた。
まるで、壁をよじ登るアスリート、いや、それ以上だ。僕らには、既に吸盤に似たものが生えていた。
やがて、校長先生の合図で、僕らも何故か続いて登り始めた。
機動隊とか自衛隊とか来ていたが、ただじっと見ていた。
いや、見たままだった。時間が止まっているのだ。おにいちゃんの時計は止まっていた。
彼らが何も出来ないように、誰かが仕組んだのか?
あっと言う間に国会議事堂は、真っ黒になった。黒いペイントをかけたように。
僕は、自分の体が宙に浮くのを感じ、自分の体の破片が飛び散るのを見た。
気がつくと、布団に寝ていた。変な夢だな。
トイレに行って、恐る恐る洗面所の鏡に自分を写した。
いつもの、『高齢者』の顔だ。白髪で総髪の。
「あーあー。」発声してみたら、自分の声だった。
ただ、一つ妙な事があった。
私の着ているパジャマは、中学の頃のパジャマだった。
翌朝。テレビを点けた。
番組のMCが言った。
「昨日、『鳥獣守る令』は廃止になりました。この法律による裁判の判決は棄却になりました。もう、どんな動物や鳥も無闇に増やせません。」
私は、声に出して言った。
「おにいちゃんの墓参りに行こう。そして、報告しよう。」
―完―
姉と妹と川の字で眠っていたのは、その頃だ。
何かお腹が苦しいと思って目覚めたら、姉と妹の脚が私のお腹に乗っていた。
「もう。勘弁してよ。」と、私が起きて、トイレに行って帰って来ると、妹が「ブー。」と言った。
ブー?豚の鳴き真似か?
「ブー!とまた妹が鳴いた。何故か、耳に入って来る声とは別に、妹の声が頭の中で聞こえる。(豚だ。豚がいるわ!)
今度は、姉の声だ。「ブー!」(ホントだ。2本脚で立ってる。あゆむのパジャマに似たパジャマを着ている。
私は、頭がこんがらがって来た。豚人間は、メガソーラーを一斉に攻撃して、爆死したんじゃなかったか?なんで、中学の時の姉妹がここにいる?あ、ここは、その頃の実家だ。
私は、階下に降り、さっき見なかった洗面所の鏡を見た。
確かに豚だ。私は、豚人間になったんだ。でも、姉妹は声が豚だ。
「あー、あー。」発声練習をしたら、普通の自分の声だ。
私は、着替えることも忘れて、表に飛び出した。
近所のおにいちゃんだ。あの頃の年齢だ。
「あゆむ?ひょっとしたら、あゆむか?もつれそうな歩き方からすると。」
「ケンちゃん。大変だ。僕たち、豚人間になった。あ。メガソーラーの事件、覚えてる?」
「そう言えば、豚人間がメガソーラーに飛びついて・・・なんで、覚えてる?それに、俺の体は若い。」
初めて、自分と同じ境遇の人間に出逢えた。男兄弟のいない僕たちだった。
ケンちゃんは、僕を弟のように可愛がってくれた。
僕らは、誘い合うでもなく、小学校に向かった。
僕らと同じ『豚人間』は、50人はいた。
あ。校長先生だ。あの特徴あるネクタイは、きっと。
「校長先生。教えて下さい。どうなっているんですか?」
「みんな、よく聞くんだ。これから、国会議事堂に向かう。」
皆は驚くどころか、当然のような態度だった。
僕らは、校長先生に導かれるまま、歩き出した。
お腹は減らない。でも、時間は経っていく。
僕は、おにいちゃんが、おにいちゃんのお父さんが形見に遺してくれた時計をいつも見ていた。
何日かけたのか、国会議事堂についた。
先に到着していたグループのリーダーが、国会議事堂の壁を登り始めた。
まるで、壁をよじ登るアスリート、いや、それ以上だ。僕らには、既に吸盤に似たものが生えていた。
やがて、校長先生の合図で、僕らも何故か続いて登り始めた。
機動隊とか自衛隊とか来ていたが、ただじっと見ていた。
いや、見たままだった。時間が止まっているのだ。おにいちゃんの時計は止まっていた。
彼らが何も出来ないように、誰かが仕組んだのか?
あっと言う間に国会議事堂は、真っ黒になった。黒いペイントをかけたように。
僕は、自分の体が宙に浮くのを感じ、自分の体の破片が飛び散るのを見た。
気がつくと、布団に寝ていた。変な夢だな。
トイレに行って、恐る恐る洗面所の鏡に自分を写した。
いつもの、『高齢者』の顔だ。白髪で総髪の。
「あーあー。」発声してみたら、自分の声だった。
ただ、一つ妙な事があった。
私の着ているパジャマは、中学の頃のパジャマだった。
翌朝。テレビを点けた。
番組のMCが言った。
「昨日、『鳥獣守る令』は廃止になりました。この法律による裁判の判決は棄却になりました。もう、どんな動物や鳥も無闇に増やせません。」
私は、声に出して言った。
「おにいちゃんの墓参りに行こう。そして、報告しよう。」
―完―