わたしには推しがいる。
 MIKE(ミケ)さんだ。
 ちょうど部長と同じくらいの年齢の女性(見た目が若すぎるので、本当に部長と同じぐらいなのかは分からない)で、知ったのはボイスメディアの音声コンテンツを聞いたのがきっかけだった。
 わたしは音楽を聴くのが好きだけど、作業用音声としてラジオなどを聴くことも好きで、ながら聴きできるようなものを探していてその無料アプリをダウンロードし、色んなパーソナリティの音声を試し聴きしている途中でMIKEさんにたどり着いた。

 MIKEさんは作家やメンタルコーチをしている人で、考え方を変えることで自分の外側の声に翻弄されることなく本当の自分で生きられるように導くガイドのような役割をしているそう人なのだそうだ。
 怪しげなスピリチュアルや壺とか高額商品を買わせようとする宗教のように聞こえるかもしれないけど、MIKEさんは壺は売っていないので安心してほしい(もちろん高額商品も)。
 むしろ音声コンテンツを聴いて、MIKEさんの発信内容は、彼女の経歴にもあるメンタルコーチングに近いと思った。
 メンタルコーチングというのは、心の状態や思考パターンを心理学や言語学の知識を用いて客観的に分析し、目標や課題に向き合うためのスキルや方法を学ぶもので、昔少しだけ学んだことがある(挫折したけど)。
 スポーツ選手や経営者などがメンタルを鍛えるために利用しているイメージだろうか。
 それをさらにMIKEさん流に進化させて、広く一般人向けにしたものだと考えると分かりやすいかもしれない。
 だからわたしも抵抗感なく受け入れることができた。

 MIKEさんの音声コンテンツを聴いて、考え方を変えたり思考パターンの分析をしたりして実践を進めるうちに、生きるのが確実に楽になった瞬間があった。
 そこから彼女に直接会ってもっと深い講義を受けてみたいという気持ちが大きくなり、MIKE塾長期講座というのに申し込んだ。
 奇跡的にMIKEさんを含めた全員が独身女性で、講座はとても楽しかった。
 講座生18期のひとりとして濃密な3か月の講座を終えてしばらくしてから、久しぶりに講座生の同期たちとMIKEさんとで同窓会を開くことになった。
 有志で出雲大社に参拝するという一泊二日の出雲旅行というのがそれだった。

 わたしは意気揚々と日程を合わせ、有給を取った。
「部長、行ってきまーす!」
「行ってらっしゃーい」
 抱いているイッちゃんの手を持ってフリフリお手振りをさせる部長に見送られながら、出発した。
 12月のことだった。