『んー、あたしは別に構わないけど。でも、どうしたんだろうねその子』

 千里に会いたいクラスメートがいると電話で説明したところ、二回返事で了承をもらえた。もちろん、高円寺さんが千里に敵意を向けていることもやんわりと伝えている。

「ほんとうに迷惑かけてごめん。ストーカーに進化する前に諦めてもらいたいと思っている」

『へー、和也くんってじつはモテるんだね。意外だったなぁ』

 千里は茶化すようにそう言う。意外と肝が据わっているのかもしれない。

『だとすると、あたしってほんとうはお得な思いをしているのかな、てへっ』

「残念ながらその『てへっ』はお門違いだな。僕はただの変わり者で通っているよ」

『ええっ、どこが変わっているの? 声の優しい、いたって紳士な男の子なのに』

「どこがって……」

 その最たる理由は水曜日、かたくなに喋らないことだ。けれど高校での僕の様子を千里は知るよしもない。

「……まぁ、誰もが世界にひとつだけの花。同じじゃないから変わり者で当然なんだよ」

『むぅ、なにそれ。和也くん、歌詞を持ちだしてごまかしたなぁ』

 腑に落ちないらしく訝しげな声が返ってくる。

「だけど順風満帆な学生生活だから千里は心配しないで」

『そう言われると余計気になるぅ~』

「神秘のベールに包まれているほうがミステリアスでしょ」

『口を割らない気かぁ。じゃあ、いつか和也くんが思っていること、当ててみせる(・・・・・・)からな~』

 千里は僕の考えていることが気になっているらしい。けれど僕は僕の罪を匂わせることはないから、千里はそれに気づくこともないだろう。