「三上さん、次の企画メイン担当でお願いできる?」
「えっ! は、はい!」


 ミーティングの終盤、グループリーダーに名指しされてびくりと肩を震わせると、まさかの言葉が落ちてきた。
 そこそこ有名な都内のパジャマメーカー。男女問わず使える幅広いラインナップを広げる我が社は、創業時のパジャマ一択に止まらず、今や寝具や睡眠雑貨まで手掛けるアパレル兼雑貨メーカーの一流企業だ。おしゃれな本社ビルは港区の駅前に構えていて、入社して6年も経つけれど、田舎育ちの私は未だにこの空間にそわそわする。
 社会人6年目。やっとメイン企画の仕事が舞い込んできた。
 総合職で入社して、初めは現場の直営店スタッフ、それから売り込み営業、なんとか去年希望していた商品企画部に配属になって、何度か新商品企画のサブ担当をさせてもらって。そして今回、初めてメイン担当を任された。
 6年目といえど、そこそこ歴史があり社員数も多いうちの会社じゃ20代はまだまだ新人扱い。初めてのチャンスに胸を躍らせるのも無理はない。だって私はうちの会社のパジャマが大大大好きなのだ。


「次の企画はバレンタインテーマの新作パジャマね。タイトなスケジュールになるけど、2月発売に間に合うように。再来週までに何個か企画書作ってくれる?」
「はい、勿論です!」
「一応グループのみんなもひと案くらいは考えてきて。採用されたテーマで今回は三上にメイン担当やってもらいます。じゃ、来週よろしく」


 グループリーダーが颯爽と会議室を出ていくのを見て、私は胸が踊る気持ちでパソコンを抱えた。バレンタインテーマ、なんて素敵な企画! 絶対に成功させてやる!