“女はクリスマスケーキなんだよ”

 25を過ぎれば過ぎるほど需要がなくなることを例えた言葉だけれど、時代錯誤もいいところだ。今時そんなことを間に受けるほうがどうかしている─────なんて心の中とSNSでは強気に思うものの、現実世界はそう甘いものでもないらしく。

『今週の土曜、お見合いが決まったから。12時に〇〇ホテルロビー集合ね。遅れてくるなんてこと絶対しないでね、わかった?』

 え、いやいやちょっとまって─────。
 私が返事をする前にプツンと電話が切れたスマホから、ツーツーと悲しい音が響いた。慌てて母からのメッセージを確認すると律儀に〇〇ホテルの位置情報と集合時間が送られてきている。私の返事を聞かずに電話を切るところ、押しに弱い私の性格を知り尽くした母のやりそうなことだとへなへな肩を落とす。
 平日20時15分、残業終わりに突然の母からの電話かと思って出たのが不幸の始まり。こんなことなら電話なんて出るんじゃなかった。

 三上 美々子(ミカミ ミミコ)、28歳。誕生日が来たら、29歳。クリスマスケーキに例えるなら、完全に廃棄寸前の売れ残りアラサー女。
 残業疲れで溜まった疲労に更に伸し掛かってきた災難にガックリと項垂れながら、ひとり暮らししているマンション近くのコンビニへと足を運んだのだった。


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