「お取り込み中、失礼致します。お食事をお持ちしました」

紅葉の父が声をかけ、紅葉と榛名には食事、風雅と十六夜には酒が振る舞われた。

「改めまして、白虎様、龍神様。わたくしは白神紋十郎《しらがみもんじゅうろう》と申します。紅葉の父です。白虎様、うちの娘を宜しくお願い致します」

『紋十郎ね。紅葉をやらしい意味でよろしくしちゃうよ〜』

「チッ」
紅葉は舌打ちした。



4人だけにしてくれと人払いをした。

「十六夜様、お酌いたしますね」
『ああ。何度でも言うが榛名から注いでもらう酒は最高に美味いな』
「ありがとうございます」


風雅はチラっと紅葉をみると目が合ってしまう

『家に帰れたのは誰のおかげかな〜?』
ニヤニヤしながらお猪口をフリフリしている風雅

「くぅ〜…今日だけだからね!」

仕方なくお酌をして"あげる”


『ね?うちの紅葉可愛いでしょ?』

『俺様の榛名が一番可愛いんだ!』

『数百年前から俺様風に装ってるの、まだやってんの?あははっ』

『………』
十六夜がイラついている。


「お二人は仲がよろしいのですか?」
榛名が問う。まだ天界に来たばかりで他の神獣事情は知らないようだ


『俺様と風雅は東と西を担当しているのもあって、昔からの腐れ縁だ』

『大親友ってことね〜』

「榛名様は東丿島出身なんですね。東丿島ってどんなところですか?」

「…………」
榛名は困ったような顔をした。
紅葉は好奇心もだが、一応神子の自分と同じ先輩神子と話すキッカケが欲しかったのだが不味かったらしい。


代わりに十六夜が答える
『俺様が島を捨てたのもあって荒れ放題だった。気づいてると思うが榛名には霊力がない。8歳の時に霊力ないと知った東丿島の連中は榛名を忌み子として牢屋に閉じ込め、奴隷以下の扱いをしてきた。暴力や罵声など毎日のように受けるほどだな』

「ひどい……」

「島では不要な私を生贄として捧げられましたが、十六夜様と出会えて私を変えてくださったんです」

『変えられたのは俺の方だ。俺の永久の番になり、天界に帰れるようにしてくれたんだからな』

お互いに熱く見つめ合った


紅葉は信頼し合っている2人をなんとなく羨ましそうにみていた。
風雅も同じように。


『ごほん。…俺様はどうでもいいが、榛名が気にしているのでな。もし霊力のない人間が生まれても同等に扱うように伝えておいてくれ』



『了解〜』