翌朝、紅葉の唇は腫れ顔は少し浮腫んでいた。
風雅をギロッと睨めつけるも悪気は全くなさそうにヘラヘラしていた。




今日は氷空が静香のお父さんの様子を見に行ったところ、静香からの許可と病院側に面識のある氷空はカルテなどを見せてもらい、まだ島には伝えていない医療技術や道具を使い、後日、手術をすることになった。

小太郎は家族たちに静香のお父さん次第だが近いうちにプロポーズをすることを伝えた。




「氷空、コーヒー持ってきたの。少しいいかしら?」
楓が夜、氷空のテントを尋ねると楓に気づかず真剣な顔で一生懸命、何かを調べたり書いたり悩んだりしていた。

楓はそっとコーヒーを置き、テントから出た。
そんな姿に胸がキュンとなってしまった。

そして数日後、手術の日。

「楓さん、お願いがあります。突然で申し訳ないのですが手術のお手伝いをしてくださいませんか?」
「え?私は医学の知識ないので無理よ」

「僕の隣で汗を拭いていただきたいのです。…楓さんが隣にいてくれたら頑張れるかなって…」
「わかりました」
楓もお手伝いすることになった。
医療関係の仕事に就きたい楓にとってはありがたい申し出だった。
島の医者たちは氷空を手伝いつつ、医療技術を学ぶべく参加する。


手術は数時間ほどかかったが成功。
術後はまだ油断は出来ないがひとまず様子見だそうな。

「氷空、お疲れ様でした」
「ありがとうございます。楓さんがいてくれたから成功できました」
楓は氷空にお茶を手渡し2人で一息ついた。
疲れもあり無言の時間、楓は手術中の氷空の隣で様子をずっと見ていた。

そんな氷空に心のドキドキが止まらなかった。

「氷空、私…氷空の番になりたい。氷空の隣にずっといたいな」
「え…」
氷空は楓の告白に動きと思考が止まったが、ハッとし歓喜の涙を流した。

その日の夜、静香のお父さんの手術の経過や氷空の番になることを家族に報告。
楓と氷空は目を合わせただけで頬を染め合う仲だった。

楓と紅葉は縁側で話しをすることになった。

「紅葉は反対だった?」
「番になること?…正直、反対ね。でも楓が幸せなら嬉しいよ」
「ありがとう。双子だから紅葉に間違われてアヤカシに襲われて嫌な思いも体も弱くなっちゃったけど…」

楓がそういいかけると「う…ごめん」と視線を逸らしながら謝る紅葉にクスッと笑う楓。

「紅葉は全く悪くないでしょ。風雅様が人間を襲う時点で掟破りなんだって仰ってたわ。紅葉といると楽しいの。紅葉がまさか白虎様の神子になって、番になって…身内に神様がいるなんて不思議よね。…それに紅葉が神子になってくれたから街にも行けた、氷空っていう運命の人に出会えた。紅葉…私の双子になってくれて嬉しい」

楓の幸せそうな笑顔に紅葉は照れて何も言えなかった。
楓を不幸にしたら神通力の怪力で氷空をぶっ飛ばしてやろうと本気で思った。