「お疲れ様でした。お茶とお菓子をどうぞ」
「あああありがとうございます!!」
楓が淹れてくれたお茶に歓喜し立ち上がり頭を下げる氷空。

まだ熱いのに一気飲みをし楓はおかわりのお茶を注ぐ。

『紅葉〜オレにもお茶淹れてよ』
「仕方ないわね〜」
紅葉は神子として風雅の世話をする

紋十郎たち島の幹部たちも話し合いが終わったのか合流してきた。

小太郎はお茶を運びながら父の紋十郎に尋ねる。
「今日の話し合いは長いですね」
「今年は白虎の風雅様がいるし、風雅様に西ノ島のハロウィンを見ていただくのだから気合いを入れていたんだ」
「コイツのことなんて気にしなくてよくない?」

紋十郎と神を紅葉が雑に扱っているのを知らない幹部たちは慌てている。
風雅は全く気にしておらずむしろニコニコしていた。
紅葉相手ならなんでも面白くて嬉しいのかもしれない。

「風雅様、パーティーの始まりにご挨拶をお願いできないでしょうか?島の未来を担う子供たちに一言だけでもありがたいお言葉をいただけませんか?」 

『ん?いいよ〜』
「ありがたき幸せ」
紋十郎と幹部たちは頭を下げたが風雅は軽いままだった。

白神家の使用人がお重箱を沢山持って来たので、今日はここで夕食を食べる。

「氷空も食べていってね」
「はい、ありがとうございます!」


「風雅様、お酒はいかがですか?」
『うん』
紋十郎に酒を注いでもらい、色気より食い気な姿の紅葉を肴に風雅は楽しんだ。

「今年の仮装はどうするんだ?」
「あたしは街で買ったペンギンだよ。そういう自分は?」
「俺は子供が作ってくれたんだよ。成長を感じるよな……」
司はお酒をゴクゴク呑んでいたので酔ったからか涙もろく子供の成長を感じ目頭が熱くなっていた。

「ふがーはぁーほごぐごがぁ?はふぉふほ?(風雅はどうするの?仮装するの?)」
『食べながら話さないの。オレはナイショ。ね〜楓〜美晴〜』

ウンウンと頷く楓と美晴。

「氷空も明後日参加できそう?」
「もちろんです!!」
「そう。ところで家に帰ってないの?」
黒糖に探ってもらったことは言わず知らないフリをして聞く楓。

「僕は今、西ノ島の海付近でテント暮らしで仕事の時だけアヤカシ界に帰っています。先日お伝えしましたが番を見つけるまで実家に帰れません」

「楓の優しさに漬け込んで番にしょうって魂胆ね!」「紅葉ったら!」
楓の恋路は様子見中の紅葉は嫉妬もあるがアヤカシにキツい。

「医者なら実家はお金持ちなんじゃないの?うちの屋敷より大きい?」
「白神家ほどではありませんが、そこそこ大きい洋館ですよ。写真あります…ついでに家族写真も…親から見せれば番になってくれるって渡されたんですよね…アハハ…」
乾いた笑いをしながら写真は実家の洋館の屋敷と両親と氷空を含む3兄弟の家族写真を見せてくれた。

「ワァー凄い美形家族!玉の輿だね楓姉!!」
「そうね。もしかして長男なの?」
「はい。下の弟は理久(りく)(かい)と言います。魁はまだですが、理久は番を探しています」

「理久って人、あたしを番にしてくんないかな〜弱いと番になれないのかな…やっぱり…」
徐々にテンションを下げた美晴に
「そんな事ありません。うちは霊力は重視ではないので理久に会ったら一度会うよう言っておきます」
氷空は元気付けた。

「ほら、父さん。氷空の実家と家族だってよ」
司は紋十郎に写真を手渡すと悶々としていた。
楓の花嫁姿を浮かべてしまったのだろうか。

「お父さん、氷空をうちに住ませては駄目かしら?」「番じゃないしな……」
一緒に住むイコール同棲になるので父親としては許したくない。

『中庭にテント暮らしさせれば?楓も安心、紋十郎も屋敷内に入れなくて済むし氷空も楓に無理なく会えるんじゃない?ま、オレの風でテント吹き飛ばしちゃうかもしれないけど〜?あははっ』

紅葉はアヤカシを嫌っているので紅葉にも配慮しつつ『何かしたら許さないよ?(威圧)』と一応、圧をかけ釘を刺しておく

「風雅様がそう仰るなら。氷空さん、うちのやり方に従ってもらいますよ」
「はいっ!!ありがとうございます、お義父様」
「誰がお義父様だね…」
怒り気味の紋十郎に慌てて謝罪と感謝を伝えた氷空。

「よかったね」
楓は喜んだ。
今日から氷空も白神家に加わった。