偵察をしてきた黒糖にご褒美に子猫用のおやつを。
他の子猫たちも欲しがって甘えてきたので夕食に支障がない範囲でおやつをあげている風雅。
シロコは子猫たちを見ながら申し訳なさそうにしつつ風雅からおやつを差し出されると欲に勝てず飛びついた。

パーティー会場予定の大部屋の隣にある小部屋に移動する。
「これ街に行った時の写真よね?いんたーねっとってやつからの資料もあるのね」
飾りつけ中に箱の中身を確認した楓が懐かしそうにしていた。
街に行って間もないが、島から出られない楓たちには一生の思い出として残っている。

「風雅様に許可をいただいて展示することにしたよ。この島の未来の発展のためにね。同じくらいになる時には街の方は更に先を行きそうだけどね…展示はハロウィンが終わった後も暫くするつもり」
荷物の入った箱を運びながら小太郎が現れた。
小太郎はいずれ島を纏めていく者として考えているようだった。

「写真見ただけで楽しくなっちゃうね!アヤカシは街に行けるなら番は行けないの?アヤカシの世界ってこの島と街のどっちに似てるのかな?」
美晴は氷空と仲良く話したからかアヤカシに興味を持っていた。
白神家にもアヤカシが来るが大人の話しだろうと避け、紅葉の事や自身が不登校などでアヤカシに接触する機会がなかった。

美晴の疑問に風雅が答える。

『場所によるけど江戸時代や明治大正、現代、中には海外のような洋風な時代が入り乱れている浮世離れした世界かな。オレは行ったことないけど〜』

紅葉たちには想像がつかない。

『婚姻って意味で正式に番になると街にも行けるし島にも遊びに行けるね』

「えー!!いいな、いいな〜あたしも番になりた〜い!」
「そうなんですね…」
街に行けると知った美晴はテンションを上げ、楓は静かに驚いていた。

「私が知らないだけかもしれないけど嫁いでから島に戻って来た人いた?」
「僕も全ては把握してないけどいないと思う」

『アヤカシの世界では女のアヤカシはほぼ稀だからね。人間の女性が逃げないように島や街にすら行くのを許さないアヤカシが多いんだ』

「逃げないようにって…」
紅葉がその言葉に反応をした。

『アヤカシの世界はこの島より広いし、この島より劣ることはないと思うよ。番が逃げないように娯楽施設もあるみたい。まぁ…事前の話し合いしておくのがベストだね〜』

「氷空は…」
楓は氷空のことを思い浮かべながら「自由を許してくれる人かな」と小さく呟いた。
まだどんな人かわからないので自信がない。

『アヤカシの世界と日本じゃ掟やしきたりとか違うだろうから苦労はするよ〜アヤカシの番が羨ましいかは人それぞれだね〜』

「私にとっては地獄よ!」
『紅葉ならそう言うと思ったよ。オレと結婚しちゃう〜?』
「うるさいわ」
紅葉と風雅のいつものやり取りにいつものように笑いながらではなく真剣な表情の楓。

「アヤカシの番も大変なんだ。楓姉、話し合いだね」「そうね…いずれは聞かないと」