東京地方裁判所。今、この裁判所では痴漢事件の審議が行われていた。
 被告人は無罪を主張しているが、日本の警察や裁判制度の性質上刑事告訴された場合、有罪判決が言い渡される確率は99.8パーセントと言われている。
 つまり、残りの0.2パーセントで勝負しなければならないのである。
 そして、判決は──

「主文、被告人加藤憲弘を無罪とする──」
「おっしゃァァァァァァァァ!」
 被告人は、その場で立ち上がって喜んだ。
「これも全て愛坂先生のおかげです。ありがとうございました」
 そう言い加藤は、弁護人に深々とお辞儀をする。
「いや、私も冤罪だと立証できて良かったです」
 そう言い、握手をする。艶のある黒い髪のロングに、濃い紫の瞳、180センチ弱はある背、そして誰もが魅了されるグラマラス体型。彼女の名前は愛坂恵。16歳で司法試験に合格した天才的頭脳を持っている。

「いや〜、なんと勝てた──」
 恵は、やりきった顔で箒に跨って飛んでいた。この世は、魔法が大々的に認知されており、空を見れば飛行機と魔法技術を使用した航空列車が箒が縦横無尽に飛び回り、下を見れば杖で攻撃魔法を繰り出す者が警察官と揉めてたりする。
 そして、恵は公園の上空を飛んでいた。
「ん?」
 ふと下を見ると、中央の大きな噴水のすぐそばに地面に敷いた段ボールの上に座る白い髪をした子供を見つけた。
「何かしら?」
 気になったので降下し、箒を降りて少女に近づく。
 すると、そこに居たのは腰の中程まである輝きのある白い髪で、透き通った青い瞳の小学校低学年ぐらいの小さな少女がいた。着ている服は汚れだらけで、体型も少し痩せていた。
「あなた大丈夫?」
 恵が声をかけ、手を差し伸べようとすると少女はその手を強く振り払った。
 少女は、とても小さな声で嫌がるような表情をした。どこか警戒しているようにも見える。
 恵は、今度は優しく頭を撫でようとした。
「ほら、怖がらなくてもいいのよ──」
 少女は、恵に向かってベロを出して挑発する。これには、恵も怒りが爆発した。
「あなたね! 人が助けようとしている時になんて事するのよ!」
 恵は、そう少女に怒鳴る。
 しかし──
「すいません、ちょっと良いですか?」
「はい? あ──」
 恵が振り返ると、そこには二人の警察官が居た。
「すいません、すぐそこの公園前派出所の者ですけど── あなた、子供を怒鳴りつけていたそうですが──」
「いや、私は──」
 恵が振り向くと、少女は透き通った瞳に涙を浮かべ悲しげな表情で走り去った。
「え、ちょっと──」
「詳しくお話を──」
「ですから私は!」