◆ ◆ ◆

 すっかり陽が沈んだ午後六時半。
 走って、階段を下りると

「お、来たか」
「ほんとに一人で来たのか」
「バカだな」

 高架下には、しっかり七人の不良が揃っていた。
 その後ろに不安そうな顔で千早がへたり込んでいる。
 そこは寒くて、冷たいだろう。

「千早を返せ」

 なにも考えずとも一番にその言葉が出た。

「お前、男が好きなのかよ!」
「悪いかよ!」

 ぎゃははと笑うリーダーの男に怒鳴り返す。

 俺が間違ってた。
 離れれば、安全だと思った俺が馬鹿だった。

「しらけるわ、まじで!」

 先に手を出してきたのは、リーダーの横に立っていた赤い髪の男だった。

「黙ってろ!」

 俺にはもう千早しか見えていなかった。

「うぐっ!」

 赤い髪の男の頭を掴み、そばにあった柵に打ち付ける。
 男は脳しんとうを起こしたのか、ぶっ倒れて動かなくなった。

「うわっ!」

 誰一人逃さない、と思った。
 逃げだそうとしたやつから殴り、蹴り、絞め落とす。
 こっちも顔面に一発喰らったが、俺はやつらから視線を外さなかった。

 絶対に許さない。
 俺の一番大切なものを攫った罰だ。

「や、やめっ!」

 最後のやつはそこに放棄されていた廃車のボンネットに叩きつけた。
 腕くらいは折れたような音がした。

「次、あいつ狙ってみろ? 骨粉砕してやるからな?」

 俺がそう言ったとき、もう辺りには立ち上がれる人間はいなかった。
 この痛みを知れば、当分、ケンカなんてしたくなくなっただろう。

 どのくらい待たせてしまったか分からない。
 ずっとそこから動けないでいた千早にゆっくりと近付いていく。