「ごめん、虎太郎」
「謝んな……! 好きって言えよ! もう離れないって言え!」

 不良とか、もうそんなん関係ない。
 感情を込めて、俺は瑛二を揺さぶった。

「ごめん、ごめんね」
「俺のこと、こんなふうにしたくせに……!」

 ぎゅっと苦しい自分の心臓みたいに、瑛二の胸元をぎゅっと握る。
 しんみりした顔で謝ってんじゃねぇよ。

「……」
「好きって、言えよ……っ」

 俺だって、こんなこと言いたくねぇんだよ。
 こんなかっこわるいところ、お前にだって見せたくない。

「好きだ……、好きって言ってくれ……」

 もう顔さえ、見れなくて、俺は瑛二の肩に顔を埋めた。

「虎太郎」

 いままで無気力だった瑛二の手が俺の頭を撫でる。
 その変化に俺が顔を上げると、その手は俺の耳に触れ、頬に触れ、そして、唇に触れた。

「瑛二?」

 間近に迫った透明感のある瞳にどきりとする。

「好き、大好きだよ」
「……ん」

 触れた手を頼りに、瑛二は俺にキスをした。
 短い触れるだけのキス。
 でも、いまはそれで十分だった。
 自然と満ち足りていく心の隙間。

 この先はもう決まってる。

「……行くだろ?」
「うん」

 視線の合わない瞳を見つめて俺が言うと、瑛二は静かに頷いた。