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 もうなにもする気力が起きなくて、俺は文化祭が終わるまで控え教室の隅で体育座りをしていた。青春の1ページが俺を置いて過ぎていく。

「コタ、元気ないね、まさか振られちゃったの?」
「あちゃー、先延ばしにしすぎたかね?」

 千早を送って、控え教室に戻ってきた美香と日和が上から覗き込んでくる。

「俺にも分かんねぇよ……」

 これが振られたことを認める一言だった。

 本当に意味が分からない。
 一つだけ分かるとしたら、瑛二からの好きを否定することで成り立っていた関係、それがいま崩れたということ。
 あのまま、お友達でいれば、俺たちの関係は崩れることはなかったのに、俺のせいなのか?

 あのいつも「好き好き」言ってたのは、俺が好きになってないかを確認してたっていうのかよ?

 自分はあんなに人を好きにさせるようなことをしておいて……?

 自分勝手で卑怯過ぎないか?

「どうするの?」
「一回振られたくらいで諦めちゃうの?」

 心配そうな顔で美香と日和が言ってくるのは自分たちに責任があると思っているからだろう。

「美香と日和のせいじゃねぇかんな? もういいんだよ、俺の好きとあいつの好きは違ったってことだろ」

 ぶっきらぼうに言って、立ち上がろうとしたときだった。

「ダメだよ」

 美香と日和の間から声がした。

「ここで諦めちゃダメ。絶対なにか理由があるんだよ。だって、西さん、虎太郎くんのこと大好きだよ? ちゃんと好きで溢れてたよ?」
「藤白……」

 思わず、名前がこぼれる。
 熱の入った眼差しを持って藤白がそこに立っていた。

「連絡しなくていいの? 虎太郎くん」

 そんなこと言われたって、あんな顔されて、俺がどう連絡しろって言うんだよ?
 あんなに拒否されたら、もう出来ることはねぇだろ。
 もう上がることはない、下がっていくだけ。

「俺にできることは、もうない……」

 水面の見えない海にただ沈んでいくだけだ。