◆ ◆ ◆
「別に送ってくれなくても良いんだぞ?」
「まだ明るいから大丈夫」
夕方にはまだ早い時間、俺と瑛二は駅に向かって、手を繋いで歩いていた。
俺も母さんと餃子を作る約束をしてなければ、まだ瑛二の家で遊んでたかもしれない。
テレビゲームはできねぇけど、瑛二の部屋には目が見えなくてもできる面白いボードゲームがたくさんある。
最近ではUNOも点字がついてたりする。
「虎太郎、普通に手繋いでくれるようになったね」
「まあ、別にじろじろ見られねぇし、見られても気にしねぇし」
瑛二が白杖を持っているからか、そういうものだと思って俺も認識されてるみてぇで、手を繋いで隣を歩いていてもへんな目で見られることはほぼない。
暑い時期も過ぎたし、正直、これが一番自然でいい。
「虎太郎」
「なに?」
突然、瑛二の足が止まって、尋ねる。
一通りが少ない場所だから別に立ち止まってもいいが、一体なんだ?
「ねえ、虎太郎」
「んだよ?」
答えても、その先に続く言葉はない。
俺のほうを向いて
「虎太郎」
ただ俺の名前を呼んで……。
ああ、またか、と思う。
どうせ、また言わねぇんだろう。
「だから、なん――」
「好きだよ」
急な直球にどきりとする。
まさかだった。
またふざけると思ってたのに。
「今日は言うのかよ」
「好きだから」
儚い笑みがそう続けて、なぜか自分の身体に白杖を立て掛けたと思ったら
「好き」
自由になった手で俺の唇に触れた。
「……っ」
一発で唇の位置を当てられたことにビックリしたのもあったが、俺は瑛二のこの行動で気付いてしまったことがあり、心臓が爆発した。
――こいつ……、さっきキスしようとして……。
「勝手に言ってろ……!」
瑛二の手に白杖を持たせながら、そんな風にぶっきらぼうに言ってしまったが、ちゃんと考えてみれば、別に嫌じゃなかった。
身体が瑛二の気持ちを受け入れようとしている。
――俺もそろそろちょっとは受け入れてやってもいいのかも……。
「別に送ってくれなくても良いんだぞ?」
「まだ明るいから大丈夫」
夕方にはまだ早い時間、俺と瑛二は駅に向かって、手を繋いで歩いていた。
俺も母さんと餃子を作る約束をしてなければ、まだ瑛二の家で遊んでたかもしれない。
テレビゲームはできねぇけど、瑛二の部屋には目が見えなくてもできる面白いボードゲームがたくさんある。
最近ではUNOも点字がついてたりする。
「虎太郎、普通に手繋いでくれるようになったね」
「まあ、別にじろじろ見られねぇし、見られても気にしねぇし」
瑛二が白杖を持っているからか、そういうものだと思って俺も認識されてるみてぇで、手を繋いで隣を歩いていてもへんな目で見られることはほぼない。
暑い時期も過ぎたし、正直、これが一番自然でいい。
「虎太郎」
「なに?」
突然、瑛二の足が止まって、尋ねる。
一通りが少ない場所だから別に立ち止まってもいいが、一体なんだ?
「ねえ、虎太郎」
「んだよ?」
答えても、その先に続く言葉はない。
俺のほうを向いて
「虎太郎」
ただ俺の名前を呼んで……。
ああ、またか、と思う。
どうせ、また言わねぇんだろう。
「だから、なん――」
「好きだよ」
急な直球にどきりとする。
まさかだった。
またふざけると思ってたのに。
「今日は言うのかよ」
「好きだから」
儚い笑みがそう続けて、なぜか自分の身体に白杖を立て掛けたと思ったら
「好き」
自由になった手で俺の唇に触れた。
「……っ」
一発で唇の位置を当てられたことにビックリしたのもあったが、俺は瑛二のこの行動で気付いてしまったことがあり、心臓が爆発した。
――こいつ……、さっきキスしようとして……。
「勝手に言ってろ……!」
瑛二の手に白杖を持たせながら、そんな風にぶっきらぼうに言ってしまったが、ちゃんと考えてみれば、別に嫌じゃなかった。
身体が瑛二の気持ちを受け入れようとしている。
――俺もそろそろちょっとは受け入れてやってもいいのかも……。