「え? なんの?」
「こっち来い」

 慌てたまま、出口にあるグッズ売り場の横、人気が少ない場所に瑛二を連れて行く。
 それから、ばっ、ばっ、ばっ、ギューっという感じで俺は瑛二を抱きしめた。
 身体を離して何度もやったけど、気付いてしまった。

 ――え、嘘、めちゃくちゃ安心する……。

「虎太郎、なにしてるの? 俺は嬉しいけど」

 俺の頭の上から瑛二がふっと笑う声がする。

 たしかに、スキンシップがどうとか言ってた俺、どこいった?

 そうハッとなって、身体を離そうと思ったら

「可愛い」

 ぎゅっと覆われるように抱きしめ返された。
 ただ、それも一瞬で

「あ、ごめん、可愛いって言われるの嫌なんだよね?」

 反射的に身体を起こした瑛二が申し訳なさそうに言う。
 でも、不思議と嫌な感じはしなくて、俺は瑛二から腕を放さなかった。

「……別に言っても、いいけど?」

 そのまま、ぼそりと呟く。

「え?」
「……瑛二だけなら慣れる、触るのも慣れる」

 聞き返されて、まるでふてくされたみたいに言ってしまった。

 でも、まあ、俺もこの前、瑛二のこと可愛いって言い掛けたし、そう言いたくなる気持ちもなんとなく分かったし……。

「俺だけ?」

 まるで感情がないみたいな声がした。
 嫌だったのか、と思った。

「え、まあ、ないと思うけど千早くらいなら――」
「俺だけにして」

 千早くらいになら同属性で言われても、触られても、って考えてたら瑛二にまたぎゅっと抱きしめられた。「お願い」って小さな声が聞こえて、心がきゅっとなる。

「ん」

 気付いたら、そんな相づちを打っていた。

「可愛いね、虎太郎」

 耳元で囁かれて、なんかムズムズ、ウズウズする。
 嫌じゃない、不思議だ。
 この感覚は一体、なんなのか……。

 そう思っているときだった。